第13話 特訓2日目 1

「まずは昨日と同じように走るぞ」


「うん!」


特訓2日目の朝、昨日と同様に俺は父さんと走り出した。



「よし、ここで終わりだ」


「ふぅ…ふぅ…」


今日のランニングは昨日よりも早い30分過ぎで終了した。


「次は打ち合いだ。木刀を1本持て」


「あ、あれ?休憩は?」


走り終わってすぐ次のことに取り掛かろうとする父さんに俺はそう質問する。


「疲れているからって魔物は待ってくれないぞ」


「わ、わかった…」


父さんの有無を言わさない物言いに俺はそれ以上何も言えずに打ち合いが始まった。


「うぐ…ぎはっ…!」


「どうした!逃げ腰じゃ何もできないぞ!」


少しでも判断を間違えたら遠慮なく鞘や拳や足で攻撃される。だからって攻撃を木刀で受けても手が痺れる。


「攻撃は受け止めるか躱すだけでは無い。受け流すということもできる」


父さんはそう言いながら俺が振り下ろした木刀を斜めにした鞘で受け流しす。結果として地面に木刀が振り下ろされて体勢が崩れたことで、顔面に父さんの拳が入ってきた。


「どうした?もう終わりか」


「……はあ!!」


俺は流れてきた鼻血を手で払い、再び父さんに向かっていった。



「10分の休憩の後、次は木鎌だ」


「はい…」


1時間ほど打ち合うと、やっと休憩が与えられた。体は痛むが、打撲以上の怪我が無いのは父さんがしっかり手加減してくれているからだろう。



「はあ…はあ…な、なんで大刀の練習をするの?スキルレベルが高い大鎌の練習だけをした方がいいんじゃないの?」


俺は大の字で横になりながら父さんにそう質問をした。武器は同時に何種類も使えないのだからスキルレベルが高い1つに絞った方がより早く強くなれる気がする。


「確かに騎士なんかを目指すならそれが正しいだろう。ただ、ヌルが目指しているのは冒険者だ。冒険者は色んな場所に行き、色んな魔物と戦うことになる。その時に、攻撃手段が1つしかないというのはマイナス要素になる。もし、刀のように斬ることに特化した武器が有利になる魔物に遭遇した時にあとから後悔しないように今から多少の特訓は必要だ」


「なるほど…」


つまり、手数を増やすために大刀の特訓もした方がいいということか。



「よし、10分経った。次は木鎌だ」


「はい!」


そして、次の木鎌の打ち合いが始まった。俺は刀よりも鎌の方が扱えているはずなのに、俺が攻撃される回数自体は休憩前よりも今の方が多い。


「ヌルはなまじ鎌を扱えるせいで鎌に集中し過ぎている。体術ももっと使え!」


「かほっ…はい…」


俺の疑問を察してか、父さんが説明してくれた。ただ、説明しながら腹に蹴りを入れる必要があったのか?それからは体術にも意識しながら父さんに向かっていった。




「よし、昼飯を食うぞ。そしたら父さんは狩りに行くから午後は母さんの魔法の特訓だぞ」


「わかった…」


2時間ほど木鎌の特訓をし、昼ご飯を食べて次は魔法の特訓になった。




「生活魔法も魔力操作も無いから厳しくいくわ」


「う、うん…」


午後の特訓が始まって開口一番、母さんは少し不安になることを言い始めた。


「まず、雷魔法と氷魔法と闇魔法で魔法を使うイメージはできる?」


「……うん、大丈夫」


それらのスキルを使おうとすると、頭の中で何ができるかが思い浮かぶ。


「じゃあ、まずは氷魔法でボール系の魔法を使ってみて」


「わかった」


俺は言われた通りに魔法を使う。何気に魔法を使うのは初めてなので緊張する。


「凍てつけ!アイスボール!」


手のひらを前に向けてそう叫ぶと、俺の手のひらの少し前に顔より一回り大きいくらいの氷の球体が現れた。

ちなみに、「凍てつけ」というフレーズは自然に頭の中で出てきた。この魔法の前に出てくるフレーズは魔法ごとに違うものが必ずあるらしい。



「で、出た!」


その出たアイスボールはそのまま前に打ち出されると、前にあった木に当たった。


「すごい…」


アイスボールが当たった場所は木の樹皮が剥がれている。


「魔力はどのくらい残ってる?」


「えっと…42」


今残っているのが魔力が42だから……今の魔法で魔力は8使われたということか。


「なら少し休憩してから連続で6発撃つわよ」


「うん」


それから昼寝をしたりして魔力が回復するのを待った。そして、魔力が48になったので、1回ずつ連続してアイスボールを撃つ。



「凍てつけ!アイスボール!」


そして、6発目のアイスボールを放った時に異変が起こった。


「お、おえ……」


俺は手と膝を地面ついて、胃にあるものを吐き出す。気持ちが悪い…まるで頭の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような気分だ。

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