第10話 初めての感覚

「ヌル!ちょっと来い!」


「うわっ!?何!?」


シアとルイは今日の出発の準備をしているため、今日は家で家族と居た。すると、家にルイ父さんが突撃して俺を掴んで引っ張ってどこかに連れて行く。また、俺を引っ張るルイ父さんに俺の父さんも着いてきている。



「ここって入っちゃいけない…」


「いいから来い」


「わっ!」


俺が連れてこられたのはルイ父さんの作業場だった。いつもは危ないからと入ることを禁止されていた。



「俺はこの5日間ここにずっと籠ってこれを作っていた」


ルイ父さんはそう言うと、大きめのテーブルを覆っていた布を引っ張って落とした。

確かに言われてみればこの5日間ルイ父さんとついでにシア父さんの姿を見なかったな。



「これは…鎌と木鎌と木…剣?」


布をどかしたことでテーブルの上にあるものが顕になった。それは俺の身長以上に柄があり、腕よりも大きい反った刃が付いた黒い鎌とほとんど同じ大きさの木でできた複数の鎌。そして、もう1つはこれまた複数あり、俺の身長と同じくらいの長さがある刀身部分が薄く、木でできた剣のようなだった。


「これはヌルのスキルにあった武器達だ」


「俺の…」


ここにあるのは全部俺のスキルで扱えるものだそうだ。


「試しにこの木刀を持ってみろ」


「うん」


俺はそう言われて木剣…改め、長い木刀を渡された。これは大刀術に該当するそうだ。


「何だこれ…凄い」


恐ろしくこの木刀が手に馴染む。物にぶつからないように軽く振ってみても思うように操れる。まるで元から腕の1部のように感じる。


「これは俺の作った木刀が凄いわけじゃなくて、ヌルのスキルがそう感じさせているのだ。次は木鎌も持ってみろ」


「…分かった」


ルイ父さんに従って今度は木刀を置いて木鎌を受け取った。


「っ!?」


持った瞬間から木刀と様子が違った。俺は受け取った木鎌を遠慮なく振る。


「ヌル!危ないだろ!そんな勢いで振った…」


「いや、どこにもぶつかってないぞ」


父さんが木鎌を勢いよく振ったことに注意しようとしたが、それはルイ父さんに止められた。しかし、俺はそんなことを気にしている余裕は無い。


「な、何だこれ…」


さっきの木刀が腕の1部だとしたら、これは失った半身が戻ってきたような感覚だ。呼吸をするかのように無意識でも当たり前に扱えるだろう。



「高揚しておるところ悪いが、1つ忠告をするぞ。ステータスを得て初めてスキルに合う武器を握ったからその感覚だが、俺達のようないわゆる高ランクの冒険者はそのくらいのスキルレベルはみんなあるだろう」


「っ!!」


確かに父さんの剣術もレベル4だった。また、この感覚は初めてスキルに合う武器を手に取ったからあるものなので、少し経つとその感覚は当たり前のようになるらしい。


「要は何でもできる気になっているかもしれないが、そんなことは無いから油断するなってことだ」


「…分かった」


正直、この木鎌を握った時は何でもできる気さえした。だが、そんなことは無い。父さんからは冒険者は少し調子に乗っただけで命を落とすことがよくあると教えられてきた。だから俺も調子に乗らないようにしよう。


「次にこれが黒鉄という普通の金属よりも丈夫な硬い金属で作った大鎌だ。柄が細いから頑丈な金属を使ったが、その分重いからこれを使えるのはもっと身体が出来上がっ…」


「え?」


「「は?」」


俺はこの本物の大鎌の説明を受けている途中で大鎌を片手で持ち上げた。


「…重くないのか?」


「重いよ。多分片手ではまともに振れないかな」


片手で持つことはできるが、片手では自由自在には扱えない。多分握力が足りずに手から吹っ飛んでいってしまう。


「ちょっと貸してみろ」


「うん」


重さが気になったのか、父さんが俺にそう言って俺から大鎌を受け取った。


「…これは確かに重いな」


父さんはそう言いながら大鎌を片手で上げ下げした。そんな父さんがそう言ってもあまり説得力がない気がする。

父さんは少し試すと、俺に大鎌を返した。



「ちょっと両手で持って振ってみろ」


「いいの?」


「いいぞ」


両親から刃物の扱いには注意しろと言われているからルイ父さんに許可されたが、もう一度確認した。すると、父さんからも許可が出た。だから俺は大鎌を軽く振ることにした。さすがにこれをあまり広くない場所で全力で振るのまだ無理だ。


「はっ!ふっ!」


「本当に振れてるな」


「…元がレベル4だとこんなことが起こるのか」


2人は俺のその姿を目を丸くしてみていた。数回振り終わると、もうやめてもいいと言われたので振るのをやめた。

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