第9話 お祝いのパーティー
「おおーい!3人ともご飯できたぞ!」
「「はーい!」」
「はーい…」
夕方になる少し前くらいで父達3人が俺達のことを迎えに来た。
「おい、ヌル。何で1人だけそんなに疲れてるんだ?」
「何でなんだろうな…」
父さんからの質問にははっきりと答えはしなかったが、俺だけが酷く疲れている理由は自分で分かっている。それは単純にシアが速くなっていたからだ。これまでの速さでは俺>シア>ルイの順だった。しかし、それがステータスを授かったことでシア>>>俺>ルイとなった。
まあ、それだけなら問題なかった。問題はシアの性格が良くなかったことだ。いつも俺に負けていたのを根に持っていたのか、シアは鬼になったらわざと長い時間泳がせるようにわざと俺を捕まえずに追いかけたりした。そのことにより、俺はかなり全力で走らされた。俺も時々シアに同じことをしていたが、その仕返しをされてしまった。
「ウォッシュ」
俺達が家に戻ると、母さんが魔法で身体を綺麗にしてくれた。
「今日はご馳走よ!」
「「「おぉ〜〜!」」」
テーブルの上には所狭しと料理が並んでいた。特に目を引くのは中央にある巨大な肉の塊だ。
「この肉はオークの肉だ」
「「「オーク!?」」」
俺達の目線の先が肉の塊にあることを悟ってか父さんが自慢するようにそう言う。
「今日のために俺らで少し遠出して狩ってきたんだぜ」
シア父さんはそう言いながら父さんとルイ父さんの肩に腕を回した。
「「「ありがとう!」」」
「じゃあ、食べましょうか」
俺達はそれからはがっつくようにご飯を食べた。ルイが少し小さい口をパンパンにして肉をかき込むのがおかしかった。また、いつもはシアと肉は取り合いになることが多かったが、今回ばかりは肉が多かったので取り合いにはならなかった。
「うおっ…」
食事が終わり、シアとルイと話していたつもりが、気が付いたら少し意識が落ちていた。はっとし、2人を見ると、2人も頭を落として眠っているようだ。
また、いつの間にかテーブルの上も酒と少しのつまみだけに片付いていて、母さん達が魔法で皿を綺麗にしてから棚に閉まっていた。ちなみに、父さん達は相変わらずテーブルで酒を飲んでいる。
「今日は早起きだったし、ステータスも授かったし、動き回りもして大忙しだったんだから眠くもなるだろ。ヌルも今日はもう寝なさい」
俺が起きたことに気が付いた父さんがそう言ってきた。それとほぼ同時にシア父さんとルイ父さんがそれぞれ娘をそっとお姫様抱っこして隣の部屋にいつの間にか敷いてあった布団に寝かせる。
「でも、シアとルイと一緒に入れる時間はあと少ししか…」
2人が王都に行くのは5日後だ。それだけしか無いから眠っている時間がなんかすごく勿体なく感じる。
「わわっ…!」
そう言った俺の頭を父さんは乱雑に撫でる。
「なら2人が王都に行くまでは朝から日が暮れるまで気が済むまで遊んでいればいい。
あと、2人と王都に行くって選択肢もあったのに、離れ離れになっても冒険者になるって決めたのはヌルだぞ」
「っ!」
父さんの言葉で眠気とは違う意味で目が覚めた。そうだ、俺が2人と別れると決めたんだ。2人も一緒に居たいと思ってくれていたのに俺が断ったんだ。だったら俺が1人でうじうじしているのはおかしい。
「早く寝ないと寝不足でもっとシアに負けるぞ」
「別に負けてないから!俺も寝るよ」
「おう、おやすみ」
俺もシアとルイが寝ている隣の部屋に入った。シアとルイの真ん中に俺がいつも寝ている布団が敷いてあった。俺はそこに横になる。
「おやすみ」
俺は眠っている2人にそう言って目を閉じる。今日は色々なことがあり、やっぱり疲れていたのかすぐに眠ることができた。
「シア!ルイ!行くよ!」
「ええ!」
「ん!」
次の日は朝早くから母さん達が準備してくれていた朝ごはんを食べて家を出る。そして、昼まで遊んで、また帰ってきて、家でご飯を食べてまた遊びに行く。そんな生活を毎日繰り返した。
そんな楽しい時間はあっという間で、とうとう2人がここを発つ日になった。
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