第8話 別視点

前話中のヌルヴィス家の様子


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「アメシアとルイスは王都に誘われたか?」


「ああ」


「そうだ」


ヌル父から問われた質問にアメシア父とルイス父はそう答えた。


「もちろん、2人の今後についても話したいと思うが、まずはヌルのことについて話させてくれ」


「なんだ?ヌルは勇者にでもなったのか?」


「…ある意味勇者の方が良かったかもね」


ヌル母の意味深な発言にみんなは詳しい説明を求めるようにヌル両親のことを見つめた。


「誰にも言うなよ。ヌルの職業は不遇魔法剣士だ。不遇はとりあえず置いておいて、物理職と魔法職の2つのステータスを持っている。しかも、Lv.4のスキルを3つもな」


「「「「なっ!?」」」」


ヌル父の発言にアメシア両親とルイス両親は揃って驚いた。


「…ならヌルヴィスも王都に誘われたってことか。それでもヌルヴィスは冒険者になりたいからどうしたらいい?って感じだな」


状況を分析してアメシア父が得意気にそう言った。


「いや、ヌルは王都に誘われていないわ。隠蔽Lv.4のおかげでね」


「…なるほどな。ヌルヴィスの今後の事を相談したいってことか」


「情けない話だがな」


ヌル父はトーンを落としてそう言った。自分達の息子のことなのに、仲間の4人に相談しないと決めれないことを恥じているのだろう。


「相談も何もそんなのもう決まってんだろ」

「相変らず、図体に似合わず真面目過ぎな」

「肝心なところで日和る癖は相変わらずね」

「そんなに難しく考えなくてもいいと思いますよ」


「「え?」」


ルイス父、アメシア父、アメシア母、ルイス母の順でそう言うと、ヌル両親は少しきょとん?とした。


「自分の子供が冒険者になりたいって言うならそれを全力でサポートするしかないだろ」

「幸い、うちらの中で剣の達人と魔法の達人の子供なんだ。2人でサポートは可能だろ!」

「むしろ、才能の塊なんだから手放しで喜びなさいよ」

「困った時はいつでも手助けしますよ」


「お前ら…」

「みんな…」


ヌル両親はみんなの言葉に少し涙ぐんだ。今日ほどこいつらの仲間でよかったと思ったことは初めてだろう。


「でも、仮にも剣士なのに、武器術スキルが大鎌術Lv.4と太刀術Lv.3しかないんだが、どうすればいいんだ?」

「でも、仮にも魔法使いなのに、生活魔法どころか、下位属性の魔法もなくて、上位属性の闇魔法Lv.4と中位属性の雷魔法Lv.3と氷魔法Lv.3しかないんだが、どうすればいいと思う?」


「「「「は?」」」」


俺には再び4人は困惑した。4人の困惑が解けたのはヌル両親がヌルヴィスの詳しいステータスを説明した頃だった。

ちなみに、下位属性の魔法とは火、水、風、土の魔法のことで、これらの属性は弱いから下位と呼ばれる訳ではない。位の分け方は使いやすさと魔法使いの中で使える者の数によって決まる。また、上位属性の次の位には特異属性というものも存在する。



「…とりあえず大鎌自体は俺達が王都に行く前に俺が何とかそれなりに使えるものを作ってやろう。ただ、太刀ってのは超長いナイフみたいなもんで、そんなのを実践用に折れずに作る技術は無い。まあ、練習はできるように木でそれっぽいのは作ってやるぜ」


「ありがとうな」


ちなみに、魔法についてはこの6人の中でヌル母が1番詳しいので、それは自分でどうにかしてとの事だった。



「……ん?お前らもルイ達と一緒に王都に行くのか?」


今の話的にルイ達と一緒に親も王都に着いていくような感じだ。


「…ああ。急に10歳の子供が子供達だけで王都で生活するのは不安だろうからと、数年は王都で俺達の借家を用意してくれるそうだ」


「さすがは賢者と剣聖だ」


シア達だけでなく、両親が数年王都で滞在できる費用まで国が用意してくれるそうだ。この国がどれほど賢者と剣聖を重要視しているかがよく分かる。それほどまでに国に有用な強い職業なのだろう。



「それで次は俺のシアの話だが…」


「それと同時にルイの話にもなるんだが…」


3家揃って自分の子供の将来について1時間ほど相談し合った。お互いのことをよく知っている長年の仲間同士だからか、相談なのに会話は途切れることなく続いた。

全ての相談事が終わった時には子供を外に追い出してから2時間以上経っており、3人の母は慌てて食事の準備を始めた。その間、暇になる父達3人は先に酒を飲んで自分の子供自慢大会を始めていた。

料理ができ始めると、酒ばっか飲んでないで子供達を連れて来なさいと命令されて父達3人は子供達を呼びに行った。

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