第7話 剣聖と賢者のステータス

「それで、いつから王都に行くんだ?」


冒険者になれるのは15歳からだから、俺が王都に行くのは5年後以降だろう。もし、2人が時間が経ってから王都に行くとしたらこの勝負もほとんど意味が無くなる。


「私達が王都に行くのは5日後だよ」


「え!?」


しかし、2人が王都に行くのは俺が思っていたよりもかなり早かった。


「神官さん達が少し遠くの村で職業を授け終わってここに戻ってくるのが5日後で、その時に神官さん達と一緒に王都に行くんだって」


「そうなのか…」


2人が王都に行くのは遅くても1ヶ月、つまり30日後だと思っていた。


「何?寂しいの?」


「はっ!そんなわけないだろ」


ルイに図星をつかれたからか、少し口調が荒くなってしまった。


「2人こそ俺と5日で別れて寂しいんじゃないのか?」


「寂しいわけないじゃない」


「ルイは少し寂しい」


「は!?」

「え!?」


俺とシアはルイの返しの言葉に驚いてルイの顔を凝視してしまった。すると、ルイは少し恥ずかしそうに顔を背ける。


「わ、私だって寂しいわよ!」


「え!?」


シアは俺の方を向き、やけになったようにそう言った。


「ヌルは寂しくない?」


「ヌルはどうなのよ?!」


「そりゃあ…寂しいよ」


生まれてから10年以上経つが、2人に会わない日の方が少ない。そんなほぼ毎日会っている2人が居なくなるのが寂しくないわけが無い。



「「「ふふっ…はははっ!」」」


3人とも恥ずかしがったことによる無言で顔を背け続けるのが何かツボに入り、少しずつこぼれるように笑い声が出て、最終的にみんなで大声を出して笑い合った。



「ヌルが寂しがらないように今のうちに遊んであげる」


ひとしきり笑い合うと、ルイがそう言いながら立ち上がる。


「それはこっちのセリフだ!」


俺もつられてそう言いながら立ち上がる。それを見て、シアも立ち上がった。


「なら、ヌルが鬼ね」


「ん」


「は!?ちょっ!」


立ち上がったシアがそう言うと、2人がバラバラに逃げ出した。理不尽に鬼ごっこの鬼を押し付けられた。しかし、ステータスを授かった今、2人に負けるつもりはない。俺は鬼として2人を追い始めた。




「シア…速過ぎだろ…」


「速かった」


「だからって2対1の挟み撃ちは狡いでしょ!」


鬼ごっこを始めてかなり早い段階でルイを捕まえることはできた。俺達の鬼ごっこは2人を捕まえたら鬼が代わるタイプなので、もう1人であるシアを捕まえようとした。しかし、シアのスピードに全く追い付かなかった。それを見ていたルイの提案でルイと2人がかりでシアを捕まえたのだ。


「ステータスどうなってんだよ…」


「見る?ステータスオープン」


俺の呟きが聞こえたのか、シアがステータスを見せてくれた。



【名前】  アメシア

【種族】  人族

【年齢】  10

【職業】  剣聖

【レベル】 1


【生命力】 70/70

【闘力】  60/60


【物攻】  26

【防御】  25

【敏捷】  23


【スキル】

・長剣術Lv.3・短剣術Lv.3 ・大剣術Lv.3

・細剣術Lv.3・身体強化Lv.3・体術Lv.2

・二刀流Lv.1


「そりゃあ…追い付けないわ」


俺の敏捷の数値は12に対して、シアの敏捷は23もある。これは単純なスピード勝負で勝ち目がないな。


「ヌルとルイのステータスはどうなってるのよ?」


「確かにルイのも気になるな」


「ヌルのも気になる」


お互いにステータスを見せる流れになったので、俺とルイもステータスを見せる。もちろん、俺が見せるステータスは神官さん達に見せた時から隠蔽しているステータスだ。



【名前】  ルイス

【種族】  人族

【年齢】  10

【職業】  賢者

【レベル】 1


【生命力】 60/60

【魔力】  80/80


【魔攻】  24

【防御】  23

【精神】  26


【スキル】

・生活魔法Lv.3・火魔法Lv.3・水魔法Lv.3

・風魔法Lv.3・土魔法Lv.3・魔力操作Lv.2

・雷魔法Lv.1・氷魔法Lv.1




「ふっ!」


「…どんまい」


「うるさいわ!」


ステータスを見比べて、シアは自信満々にえばり、その様子を見たルイに慰められた。

しかし、流石は物語でも多く出てくる伝説に近い職業の剣聖と賢者だ。ステータスの数値で俺が勝っている部分が1つもないだけでなく、ところによってはダブルスコアの以上の差も付いている。



「これは勝負は決まったようなものね」


「何をお願いしようかな」


「やってみないと分からないだろ!」


俺は他とは一風変わった職業を授かって少し自分は特別だと浮かれていたのだろう。しかし、目の前にいる2人は下手すれば俺と同じか、それ以上に特別なのかもしれない。そんな2人に勝つためには努力しないとな。

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