第6話 シアとルイのこれから
「シアとルイの時に神官さん達が慌ただしくしてた理由はそれだったんだね」
神官さんが言っていたから2人の職業は聞いていないけどもうわかる。剣聖と賢者は勇者と一緒におとぎ話にもよく出てくる。だからとても有名だ。それにおとぎ話の中での剣聖と賢者はとても強い。
「アメシアちゃんとルイスちゃんは何の職業を授かったの?」
「剣聖と賢者だって」
そう言うと2人は目を大きく見開いて驚いた。その後は頭に手をやって大きく息を吐いた。
「ヌルほど前代未聞という訳では無いが、これは王都の学校に行くことになりそうだな」
「そうね」
2人は少し寂しそうにそう言った。
「ヌルは2人が学校に行くとしても、1人で冒険者になりたいの?」
「なりたい!」
「そっか」
それからも少し話をしていて少し経つと、窓から神官さん達がシアの家から出てきた。そして、馬車があるであろう広場に行くのが見えた。
「私はアメシアちゃんの家に行ってくるから」
「ああ」
「いってらっしゃい」
母さんはそう言って、家から出ていく。母さんはシアとルイの家族を呼びに行ったのだ。元々、職業を授かったあとは俺の家で職業授かり祝いのパーティをする予定だったからな。
「3人は外で遊んできなさい」
「「「はーい」」」
俺の家にみんな集まったが、俺達子どもの3人が居ると邪魔だからと外に追い出された。しかし、これは3家のパーティではいつものことだから慣れている。
「神官さんと家で何を話したの?」
「王都の学校に来てくれって話よ」
「同じく」
両親が予想していたとおり、2人は王都の学校に誘われたみたいだ。
「あれ?ヌルは驚かないのね?」
「あ、父さんと母さんから2人は王都に行くことになるかもって言われてたから!」
「ふーん」
王都に行くであろうことを既に知っているのは少し怪しいと思うが、誤魔化せたみたいだ。ルイは微妙な反応だが、元々無表情な方なので、未だに何を考えているか分からないことが多い。
「それで、2人は王都の学校に行くのか?」
このまま俺の話を深堀されても嫌なので、俺は話題を逸らした。
「行きたいと思ってる!王都なら色んな服が売ってるところもあるらしいから!」
「学校の図書館には沢山の本があるって聞いた。だから行きたい」
「そ、そっか」
2人とも行きたい理由が学校とあまり関係ない気がするけど、2人らしいと言えばらしいかな。これで勉強をしたいから学校に行きたいと言ってたら2人が本人かどうか少し疑っていたかも。
「そ、それでね…」
「ん?」
シアが少しもじもじしながら何かを言おうとしている。しかし、そんなシアを知ってか知らずか、話し出したのはルイだった。
「ヌルも一緒に学校に来ない?」
「え?俺?」
「あっ!先に…。んんっ!私達が入学するならヌル1人分の学校にかかるお金も免除してくれるって言ってたのよ!」
シアは咳払いをし、ルイの補足説明をしてくれた。
確か、学校に通うには普通の家族が30年は不自由なく生活ができるほどのお金がかかると言っていた。それなのに、2人が入学するなら追加でもう1人も免除してくれるとはな。それほど、2人の職業は強いってことなのか?もしかすると、見せた俺の不遇剣士という職業を見たのが初めてだったから……いや、それはないか。
「誘ってくれたのはすげえ嬉しいけど、俺はやっぱり冒険者になりたいから学校には行かない」
正直、2人が誘ってくれるとは思ってなかったから誘われた時は凄く嬉しかった。でも、俺は冒険者になるという夢を諦めるつもりは無い。
「で、でも、学校に通いながらでも15歳になったら冒険者になることだって…」
「シア」
ルイはシアの名を呼び、シアの言葉を遮った。
ちなみに、冒険者になれるのは15歳で成人を迎えてからだ。
「ヌルが夢を諦めて一緒に来てくれることは無いから諦めるよ。言っても無駄」
「まあ、そうだな」
ルイの言い方に少しトゲはあるが、言っていることは正しい。何を言われても俺は夢を諦めることは無い。
「それくらい私も分かってるわよ…。ヌル!次に会った時は学校に通えば良かったってヌルが後悔するほど強くなってやるんだから!」
「それはルイも同じ」
「はっ!俺の方が強くなるに決まってんだろ」
俺と、シアとルイはそう言って数秒睨み合った。しかし、それは数秒ですぐにみんなで笑い合う。
「それなら私達が王都に言って次に会った時に勝負ね!負けたら何でも言う事聞いてもらうからね?」
「その勝負は面白そうだな!」
シアが提案した勝負はとても面白そうだ。勉強をするために王都に行く2人に俺が負けることは無い!今のうちから何をお願いするか考えておこうかな。
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