第4話 ステータス
「ちゃんと靴を拭いてから家の中に上がりな…」
「後で拭くから!そんな事よりも俺の職業見て!ステータスオープン!」
どたどたと慌ただしく家の中に入ってきた俺に母さんが少し怒ったふうにそう言った。そんな母さんの言葉を遮って、俺は自分のステータスを両親に見せた。職業を見せようとしたら自然とステータスオープンと頭の中で浮かんできた。
ちなみに、職業は知っているが、詳しいステータスを見るのは俺もこれが初である。
【名前】 ヌルヴィス
【種族】 人族
【年齢】 10
【職業】 不遇魔法剣士
【レベル】 1
【生命力】 50/50
【闘力】 50/50
【魔力】 50/50
【物攻】 13
【魔攻】 13
【防御】 10
【敏捷】 12
【精神】 12
【物理スキル】
・大鎌術Lv.4・身体強化Lv.3・大刀術Lv.3
・無属性魔法Lv.2・体術Lv.1
【魔法スキル】
・闇魔法Lv.4・雷魔法Lv.3・氷魔法Lv.3
・身体属性強化Lv.2・付与魔法Lv.1
【他スキル】
・隠蔽Lv.4
「あ、あれ?」
魔法剣士なのに剣術がない。鎌術ってあの草刈りとかで使うあの鎌のこと?でも大ってついてるからそれの大きなやつ?それに刀というのは聞いたことがない。
また、魔法にも魔法職の必須スキルと呼ばれているらしい生活魔法がない。それに一般的な魔法の属性と言われている火、風、水、土の属性も無い。
そもそもスキルがそれぞれで欄が別れている。
何より、授かった時からLv.4というスキルがあるなんておとぎ話ですら聞いたことがない。
「ヌル、ステータスを消して」
「え、うん」
俺は父さんの言う通りにステータスを消した。
ドンドン!
「あの…少しよろしいでしょうか?」
ちょうどその時神官さんの声と共に扉を叩く音が聞こえた。
「もしかして、鑑定水晶に手を置いてないの?」
「あ、忘れてた」
両親に1番に伝えたくてそのことを忘れていた。
「ヌル、王都にある学校に行けるとしたら行きたいか?」
父さんが小声でそう聞いてきた。
「やだよ。だって学校って勉強するところ何だよね?俺は学校なんかには行かないで冒険者になりたい!」
「そうか」
時々母さんから一般常識や文字の書き方とか算数や、軽く地理や歴史のようなものは習っている。冒険者になるには必要な知識だからと言って教わっているし、その中で学校というのはそれをもっと詳しく教わるところだと言うのも母さんから聞いていた。母さんとの勉強でも逃げ出したいほど嫌いなのにそれを冒険者にならずにわざわざそんなことをやりたいとは思わない。
俺がそう言うと、父さんと母さんは少し何かを考え始めた。そして、母さんがハッとした様子で俺に聞いてきた。
「その隠蔽ってスキルはステータスを隠せるの?」
「えっと…そうみたい」
スキルを使おうとすれば何となく何ができるか頭に浮かんでくる。
「それで物理職以外のステータスとスキルは隠しなさい。職業の魔法もね。あと、スキルレベルも全部2レベル下げなさい。下げて0になるスキルは消していいわ」
「わ、わかった」
母さんの圧に何も言い返せず、俺は母さんの言う通りに隠蔽を使ってスキルを隠した。
【名前】 ヌルヴィス
【種族】 人族
【年齢】 10
【職業】 不遇剣士
【レベル】 1
【生命力】 50/50
【闘力】 50/50
【物攻】 13
【防御】 10
【敏捷】 12
【スキル】
・大鎌術Lv.2・身体強化Lv.1・大刀術Lv.1
その結果、俺のステータスはこんな感じになった。この隠蔽というスキルはステータスを隠したり、下げたりできる。逆に無いスキルを追加したり、スキルレベルやステータス数値を上げて表示するのは無理だ。
ドンドン!
「あの…ヌルヴィス君のお宅ですよね?」
「あ、すみません。今開けます」
もう一度ドアを叩く音と共に神官さんの声が聞こえてきたので、父さんは声をかけてドアを開けた。ドアを開けると、神官さんと女騎士さんがそこに居た。
「あの…息子さんがいきなり走り出したのですが…どうかしましたか?」
「すいません。うちの息子が不遇剣士という職業を授かったそうで、慌ててそれでも冒険者になれるかって聞いてきたんですよ」
「不遇剣士ですか?」
え?俺の職業は不遇剣士ではなくて不遇魔法剣士だ。それを言おうとしたら母さんに肩を押さえられた。母さんの方を向いたら首を小さく横に振っていた。言うなってことなの?
「まずは何も問題がなく職業を授かれたようで良かったです。水晶で確認を行って貰えますか?」
「え、あ、はい」
そう言って神官さんは水晶を取り出したので、その水晶に手を置いた。その時に両親の顔を伺ったが、頷いていたから大丈夫だろう。
「不遇剣士ですね。聞いたことがない職ですが、Lv.2の天才スキルがあるので冒険者として十分活躍できますよ」
「あ、ありがとうございます」
神官さんはそう言って部屋から出ていった。
「「ふぅ…」」
「え?」
神官さんが出ていって少ししてから両親は息を漏らし、イスに崩れるように座った。
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