第118話 魔女 対 エデン(3)
「『インフェルノ』!!」
魔女から周囲一帯に炎が撒き散らされる!
「(躱せない!ここしかない!)『グローアップ』!!」
アンジェリカがスキルを発動させる。
このスキルは、管理者であるシータから、アンジェリカが新たに貰ったスキル『成長』だ。
これを使用時、アンジェリカは20歳位の姿になり、能力はそれ相応に跳ね上がる。
金色に輝く髪は伸び、145センチ位しか無かった身長は165センチ位まで伸び、胸は大きくなり、腰はくびれ、足は伸びる。
端的にいって絶世の美女だった。
ちなみに、服は身体の成長に合わせて大きくなる仕様だ。
このスキルを授かった時に不幸があり、ビリビリに服が弾け飛んだ姿を龍馬に見られた為、管理者がそういう仕様にしてくれたのだ。
スキルのおかげで思念波が強固になり、『神託』は『神話』という管理者との通信が可能になると共に、もう一つ副産物があった。
肥大化した思念波は、物理、超常のどちらにも作用する障壁とする事が出来るようになったのだ。
アンジェリカは障壁を展開し、炎を突っ切る。
そして、炎を抜けた先にいたマリアと再度相対した。
戦いは終盤を迎えていた。
「たかが成長した位で!!」
先程よりもさらに苛烈さがました魔法の連続攻撃。
しかし、今度は躱すだけでは無い。
「何!?」
アンジェリカは迷わずマリアに突っ込む。
先程と違い障壁が展開できるからだ。
「はっ!!」
「くっ!?小娘ぇ!!」
アンジェリカの突きがマリアの展開する障壁に
威力も格段に上がっている。
「せい!はぁ!しぃっ!!」
「っ!!くそ!!がぁ!?」
アンジェリカの連撃!
障壁は徐々に削られて行き、ついには突き破りアンジェリカの蹴りが魔女の腕にヒットした。
「貰った!!」
畳み掛けるアンジェリカ。
だが、マリアも伊達に苦難を乗り越えては居ない。
「舐めるなぁ!!『ソニックブラスト』!!」
「っ!?」
全周囲に衝撃波を放つマリア。
アンジェリカは障壁を展開する間もなく、腕で防ぐも直撃して吹き飛ばされた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「くっ・・・魔女め・・・流石に強い・・・」
マリアはかなり消耗しており、腕を蹴られた際に衝撃が顔面まで抜けた為、唇からも出血があった。
アンジェリカも衝撃波が直撃したものの、ガードしていた為、大きな損傷は無い。
「(まずい・・・このままでは・・・)」
マリアが状況の悪さに歯噛みしている中、更に状況は悪化する。
「長!全て片付けたわ!!後は魔女だけよ!!」
姫乃の声が響く。
マリアがそちらを向くと、エデンの戦力は大きな怪我も無く魔女と向き直っていた。
「こいつにはティアの受けた心の傷を倍返ししないとな。」
「十三。それは私の自業自得な部分もあるので良いのです。でも、十三とセルシアを巻き込んだ事は許せん!その身で
「お母さん、それこそ私の望むところだよ。お父さんと一緒に、お母さんを傷つけた罪を償ってもらいます!!」
怒りに燃える渋谷達。
「俺の事は良いけど・・・光を巻き込んだ事は許せない!存分に力を振るわせて貰うよ!」
「ダーリン・・・光ちゃんの事好きなの?」
「えっ!?い、いや、どうも違ったみたいなんです。多分、妹に向けるような感情だったようで・・・ていうかダーリンって・・・」
「そっか!良かったわ!大丈夫よ!ダーリンには私がいるからね♡でも、ダーリンを傷つけた事は許せないわね!魔女!覚悟しなさい!!」
「・・・レーア。後で話し合いです!・・・ふぉ!?アンジェリカ様が・・・アンジェリカ様が成長なさっている!?ああ・・・更にお美しく・・・クリミアは一生ついていきます!!例え火の中水の中!ペットとして可愛がって頂きます!!」
微妙にラブコメしている充とレーア、それとアンジェリカの成長した姿を見て、一人テンションをあげるクリミア。
「さぁ!最後の喧嘩だ!!落とし前、つけさせて貰うぜ!!」
「・・・ねぇ、なんかレーアさんとミツルって・・・」
「ええ、ちょっとびっくりね・・・レーアさんのあんな姿初めて見たわ。」
「・・・私、充の妹だったの?いつから?同い年だよね!?なんで!?」
ヤンキーに戻っている健流に、レーアを見て驚愕している姫乃と灯里、充の発言を聞いて混乱する光。
カオスだった。
しかし、そんな面々を見て、アンジェリカは嬉しくなった。
「あははははは!」
「・・・何がおかしい!!」
マリアはアンジェリカに叫ぶ。
気に入らなかった。
自分以外の者が幸福そうに見えることが。
マリアには何よりも気に入らなかった。
「それは嬉しいに決まっているじゃないか。私の仲間達がどれだけ心強いのかよくわかる!それに引き換え魔女。お前は孤独だな。」
「っ!!黙れ・・・黙れぇ!!」
「!!散開!」
アンジェリカの号令で一斉に散開する面々。
マリアが無差別に魔法を放ち始めた。
まずは牽制。
「魔女!いつまでもやられてばかりだと思うなよ!『フリージングアロー』!!」
ティアが放った氷の矢がマリアの足元に直撃した。
「くっ!?動けない!?だが!」
足元が凍結し、身動きが取れなくなる。
反撃の魔法が魔法発動後のティアを襲う。
しかし、
「やらせない!『渦』!!」
セルシアが渦でマリアの魔法を吸い込んだ。
「光!合わせて!『月光』!!!」
「うん!『メテオキャノン』!!」
姫乃と光が二人で石の
障壁で防ぐマリア。
しかし、
「頂きです!はぁっ!!」
クリミアの風の遠当てが魔女の顔面に突き刺さった。
「がはっ!?ぐっ!?がっ!?」
そして、その衝撃で緩んだ障壁をすり抜けて礫がマリアを襲う。
「おのれ!!」
魔女が礫をくらいながらも指を姫乃に向ける。
その指から高速の鉄の杭が飛び出した。
「させない!!」
『天啓眼』でそれを予知していた灯里がそれを斬り飛ばす。
「くそ!!死になさい!!」
魔女が360度に魔法の砲弾を飛ばし始めた。
「退避!!」
アンジェリカの指示に距離を取って防御体勢に移る姫乃達。
しかし、そんな弾幕を掻い潜る者たちがいた。
「甘めぇよ!!」
「効くかぁ!!」
「うおおおおお!!」
渋谷、健流、充の三人だ。
男達は、切り払いながら、ガードしながら、躱しながらマリアに近寄っていく。
まず、最初は渋谷だ。
「ティアの無念!はらさせて貰う!!」
「剣豪!?ぐぅ!?『ペインキラー』!『爆風』!!」
「むぅっ!?」
「お父さん!はっ!!」
渋谷の上段からの振り下ろしが、マリアの障壁を抜けて左腕を切り落とす。
マリアは魔法で痛みをカットした。
そして、爆発的な暴風で渋谷を吹き飛ばす。
壁に激突しそうになるが、セルシアが『渦』で渋谷を吸い寄せ防ぐ。
続いては充だ。
「これは光と俺の心の痛みの分だ!!」
「ごふっ!?『魔弾』!!」
「ぐわっ!?」
充のボディブローがマリアの腹部を襲う。
しかし、マリアの反撃の魔力砲撃で充は吹っ飛んだ。
「ダーリン!!」
「うわっ!?れ、レーアさん!?ありがとう受け止めてくれて・・・でも、ちょっとその・・・当たってるので離して貰えると・・・」
「もう!可愛いんだから!!もっとギュってしちゃう♡」
「えっ!?ちょっと!?」
だが、充の頑強さはマリア自身の仕込みによるもの。
充は出血はあるものの、健在だった。
その上、レーアが後ろに吹き飛ばされた充を、後方から抱きしめたので、それ以上のダメージは無い・・・レーアの胸に抱きしめられるという別のダメージはくらったようだが。
「魔女!」
「獣風情がぁ!!『サウンドボム』!」
健流がマリアに飛びかかる。
マリアは超音波の塊を健流にぶつける。
「ぐぅぅぅぅ!?うおおおお!!」
「何!?」
健流は身体から赤いオーラと銀色のオーラを発しながら、超音波に吹き飛ばされるのを耐えた。
「滅びの獣のオーラ!?何故その状態で正気を失っていない!?」
「あいつは友だちになったんだ!俺の心の中で穏やかに眠ってるぜ!」
「そんな馬鹿な!?」
「食らえ魔女!!『激震』」
「ぐはぁ!?」
健流の大技がマリアを吹き飛ばした。
全身から出血をして動けないマリア。
「魔女!!覚悟!!」
アンジェリカが飛び込む。
とどめをさすために!
しかし、
ーーーーーーマリア!マリア!聞こえるか!?ーーーーーー
「ケン・・・トゥム・・・様・・・」
そこに龍馬に連れ去られたケントゥムの声が響き渡る。
警戒して動きを止めるアンジェリカ達。
ーーーーー我はここまでだ!イレギュラーは化け物だった!もうもたん!!最後の力でお前を逃がす!!ーーーーー
「何!くっ!!」
アンジェリカがそれを聞き魔女に詰め寄り拳を振るう。
しかし、拳が届く直前、マリアが姿を消した。
ーーーーーさらばだマリア!愛して・・・ぐああああああああーーーーーー
そして、ケントゥムの声も消えた。
「くそっ!もう少しの所で!!」
アンジェリカが床を叩く。
これまでに無いほどに追い詰めたものの、マリアには逃げられてしまった。
こうして、魔女との決戦は、魔女が敗北するも逃走を許すという状態で幕を引いたのだった。
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10/14 21:53
修正しました。
内容は、今回で八章終了としましたが、あと2話は通常通りで、閑話は3話後からです。
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