第117話 魔女 対 エデン(2)

「うらぁ!どんどん来やがれ!!」


 赤いオーラを出しながら魔物の中に飛び込んでいく健流。

 目につく魔物を片っ端から殴り飛ばしていく。


「健流!前に出過ぎ!!あたしも連れてけ!!」

「馬鹿!テンション上がりすぎでしょ!もう!!」

「うわわわ!?ちょっと二人とも!横からも来てるってば!『フレアアロー』!!」

「あ、ごめんヒカリ。」

「これだから灯里は・・・」

「姫乃!あんたもでしょ!!」


 やれやれとポーズをしている姫乃に灯里が噛みつく。

 光は苦笑いしながらも内心では別の事を思っていた。


「(良かった・・・また二人と仲良くなれて・・・魔女さん、あなたは悪い人のようだけど、この力をくれたことだけは感謝します。)」


 光はマリアに感謝していた。

 勿論、操られた事は許していない。

 しかし、それでも特別な力を持つ三人の仲間入りをさせてくれたのは、他ならぬマリアだ。

 そこには感謝していたのだ。


「おらぁ!どんどん行くぜ!」

「あー!!このヤンキー!!昔に戻ってるじゃない!!また桜花ちゃんにどやされるよ!?」

「ひっ!?姐さん!?すんません!!」

「・・・どれだけ桜花さんを恐れてるのよ・・・」


 姫乃は健流の様子を見て呆れた。


「・・・健流・・・後で説教よ。」


 反射で謝る健流に、そこまで恐れられてるのかと桜花はちょっと傷ついた。

 ・・・口から出たつぶやきはやはり恐れるべきものであったが。


 こうして魔物を討伐していく面々。

 全ては、魔物を駆逐し、マリアと相対しているアンジェリカを支援する為だった。


「(長!待ってて!すぐに片付けて手伝うから!!)」


 姫乃は高揚する心のままに魔物を屠りながらアンジェリカを想う。

 小柄な身体に組織の人全てを背負う自分たちの代表を。

 思えば幼い頃からずっと見守ってくれていたアンジェリカ。

 その恩義に今こそ報いる時なのだ!

 姫乃は更に気合を入れていく。

 全てはアンジェリカの元に行くために。


「(ヒカリとミツルを助けられて本当に良かった・・・後は、大本を叩いて、その後、健流の理性を陥落させるのみよ!無理やりアタシ達との関係を飲み込ませるんだから!!)」


 灯里は安堵と、そして未来に心を馳せる。

 真の敵である健流の理性を倒すのは自分たちであると。

 魔女などその前座でしか無い。

 灯里はそう考えていた。

 前座はさっさと終わらせる。

 来たるべきメインイベントのために。


「(魔女は強い!肌で感じた俺にはわかる!だけど、俺にもビーストって心強い仲間が力を貸してくれてる!今度は情けねぇとこ見せねぇぞ!!)」


 健流も人知れず燃えていた。

 以前相対した時には、戦うことすら出来ず、身体が敗北を認めていた。

 しかし、今は違う。

 頼れる仲間と、心で眠るビーストが居れば、魔女であっても戦える!

 そして、仲間を傷つけた落とし前をつけさせる!!

 そんな思いで魔物と向きあう。


「よっしゃ!もっと来おい!」

「健流!だから前に出過ぎって言ってるでしょ!!」

「もう!この馬鹿!!いい加減にしなさい!!積極的なの私達にだけで良いのよ!!」

「姫乃!?それ言っちゃっても良いの!?」


 四人はドタバタしながらも魔物を駆逐していった。






「・・・少しはやるようになったわね、小娘。」

「ふん、永く生き過ぎて耄碌したか?魔女。私達は負けない!」

「・・・忌々しい!!ニンゲンめ!!わたくしの悲願の邪魔をするな!!」


 魔女が矢継ぎ早やに繰り出す魔法をアンジェリカは避けていく。

 桜花と龍馬によってこの辺りは鍛えられていた。


 苦もなく躱すアンジェリカに歯噛みするマリア。

 しかし、


「確かに強くなったわね。それでもわたくしには届かない!相変わらず小娘には決定打が無いのよ!!だが、わたくしは違う!!上手く避けるのであれば避けられないようにするだけよ。消し飛べ!!『インフェルノ』!!」


 アンジェリカの周囲一帯を炎が包む。

 逃げ場は無い!


「(直撃!勝った!!)」


 マリアは口角を上げた。

 一番の脅威はここに沈めた。

 後は、滅びの獣を手にして目覚めさせれば形成が逆転する!

 そう思った時だった。


「はぁ!!」


 アンジェリカが炎を物ともせずに姿を表した。


「何ですって!?その姿は一体!?」


 マリアは驚愕した。

 炎が直撃した筈のアンジェリカがほぼ無傷で、その上、その姿は20代の姿となっていたからだ。


「行くぞ魔女!!これが私の奥の手だ!!」

「くっ!少し成長した位でいい気になるなよ小娘ぇ!!」

「おっとヒステリーか?年寄はこれだから。」

「貴様ぁ!!」


 アンジェリカとマリアの戦いは終盤を迎える。

 

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