第116話 魔女 対 エデン(1)

「さて、聞いての通り、私はここからは見届け人に戻らせて貰うわね。」


 そう言って、呆気に取られる面々に告げる桜花。

 そして、その言葉を聞き、灯里が噛み付いた。


「ちょっと桜花ちゃん!どうせなら最後まで付き合ってくれても良いじゃない!!」

「あのね灯里・・・さっきの竜はやりすぎだと思ったから手伝ったけど、後はあなた達でもなんとかなるでしょう?なら、必要以上に出張らないわ。それとも、私が全てを終わらせてしまって良いのかしら?アンジェリカさん?」


 桜花はそうアンジェリカに向き直って言う。

 その言葉を受けて、アンジェリカは首を横に振った。


「・・・いいえ、それでは私達は納得出来ないでしょう。」

「でしょうね。私が逆の立場だったらそうだもの。だから自分たちの力でなんとかしなさい?」

「・・・はーい。」


 アンジェリカの言葉と桜花の言葉で渋々頷く灯里。

 そんなやり取りを呆然と見ていたマリアは、その言葉で意識を元にした。


「・・・おのれ・・・イレギュラーめ!よもや・・・このような状況になるとは!!」


 マリアは憤慨した。

 己の長い人生をかけた事が、全て粉々に砕け散った。


「(籠絡した神も!使い魔にしたドラゴンも!手掛けた弟子も!わたくしの拠点も!!全て!全て台無しに!!おのれイレギュラーめ!!)」


 その表情は般若のように歪んでいる。

 アンジェリカは改めてマリアに向き直った。


「さて、魔女。これより総力戦だ。私が・・・私達が!お前を討ち滅ぼす!!」


 その言葉に全員の表情が変わった。


 健流も、姫乃も、灯里も、光も、充も、渋谷も、ティアも、セルシアも、レーアも、クリミアも!


 覚悟を決めた表情になった。


「・・・ふざけるな!!このわたくし・・・『クイーン オブ ウィッチ』がニンゲンを滅ぼす!これは決定事項なのだ!!」

「ほざけ!貴様も人間だろうが!!舐めるな魔女!!」

「全ての使い魔よ!この場にいる全てを殺せ!!」


 こうして、激突が始まった。



 

「はっ!ふんっ!!」

「十三!」

「ああ!」


 息のあったコンビネーションで魔獣を屠っていく渋谷とティア。

 そして、そこに、


「お父さんお母さん!」

「行け!」「任せました!」


 セルシアが『渦』で大きめの魔獣を吹き飛ばす。


「おお!俺たち家族の力は圧倒的じゃねーか!うおっと!?」

「十三!油断しすぎです!!」

「お父さん!まったくもう!後で説教です!!お母さんと一緒にね!!」

「おお、怖い!まぁさっさとこんなの終わらせちまおうぜ!!」

「ええ!」「うん!」


 家族三人、素晴らしいコンビネーションで魔獣を屠る。

 



 クリミアと共闘するレーア。

 しかし、レーアはクリミアのように近接が得意という訳では無い。

 魔獣の一体を倒した瞬間、隙が出来た。


「レーア!危ない!!」

「えっ!?きゃああああ!?」


 レーアは固まる。

 

「(避けきれない!?)」


 レーアは思わず目を閉じる。


「危ない!!」


 レーアの隙に突っ込んで来た魔獣を身体を張って受け止める充。



「大丈夫ですか!?」

「えっ・・・」


 充はレーアを見て微笑む。

 レーアは呆気に取られた。


「光から聞きました。あなたも健流達の支えになってくれていたのですよね?」

「・・・ま、まぁ・・・そう・・・なの…かな?」

「助けられて良かった。あいつらの恩人を助けられなかったら、俺は健流の親友として自分が許せなくなるところだった。あなたは戦士タイプには見えません。俺が身体を張るので、隙を見て攻撃をしてください!俺を盾にして、怪我をしないように気をつけて下さいね?」

「・・・は、はい。」

「そ、それと・・・これをどうぞ。」

「・・・ジャンパー?」


 充は頬を赤く染めて、レーアを見ずに着ていたジャンパーを差し出す。


「そ、その・・・俺が着ていた奴なので汗臭いかもしれませんが・・・その・・・服が少し破けているので・・・それで・・・隠して貰えたら、と思って・・・」

「・・・」

「あっ!?やっぱり俺のじゃ嫌ですよね!?すみません!でも、女性が・・・特にあなたのような綺麗な人が、そんな状態でっていうのは良くないかもと思って・・・ははは!」

「・・・見つけた・・・」

「・・・えっ?」

「見つけた!あなた名前は・・・確か瀬川充くんだったわよね!?」


 レーアは戦闘中にも関わらず充に詰め寄る。

 充は、とんでもない美人が、破れた服から下着が見える状態で詰め寄った事にドギマギしながら答える。


「は、はいそうですけど!?」


 充の頬が更に赤くなる。

 そんな様子にレーアは更に目を輝かせる。


「うん!うん!!良いじゃない!!瀬川くん・・・いえ!ミツルくん!!」

「は、はい!?」

「私はレーアって言うの!」

「レーア・・・さん?」

「そう!私頑張るから!終わったら後で一緒にご飯に行きましょう?」

「は、はぁ・・・良いですけど・・・」

「よし!じゃあ頑張るわね!ダーリン!!」

「ダーリン!?あっ!ちょっと・・・」


 レーアは嬉々として魔物を屠っていく。

 先程よりも力強く見えた。

 充は呆然として・・・


「・・・よくわかんないけど、あんな綺麗な人が頑張ってるんだ。俺ももっと頑張らないと!!レーアさん!俺の後ろに!!前に出すぎです!!」


 更に気合を入れ直してレーアの後を追う。


「あっ!!ダーリンも来てくれたのね♡これで百人力よ!!」

「ちょ、ちょっとレーアさんダーリンってどういう・・・あっほらまた!はぁっ!!もう!レーアさん危ないですよ!」

「ごめんねダーリン・・・でも、やっぱり身体を張って助けてくれるのは素敵♡これが終わったらラブラブしましょうね!私頑張っちゃう♡」

「話を聞いて・・・あ〜もう!レーアさんってば!!」


 そして、そんな様子を見たクリミアは・・・


「・・・なんです?これ・・・というかレーア・・・まさか・・・ちょ、ちょっと!レーア!!詳しく話をしましょう!!・・・おい聞け!!私を独りにする気ですか!?させませんよ!あなただけに相手を作らせません!!!こら!!レーア!!話を聞け!!!!」


 やり場の無い怒りを魔物にぶつけて行くのだった。



********************

という訳で、充とレーアの救済イベントです。


充はとても良い奴です。

レーアもなんだかんだで気に入っているキャラです。

というわけで、二人で幸せになって貰おうと思いました。

 

クリミアは・・・強く生きて下さい(笑)

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