第102話 剣豪の敗北

 渋谷が目を覚ますと、ティアが連れ去られた空間と同じ場所だった。


「あら、目が覚めたのね『剣豪』渋谷十三じゅうぞうちゃん?」

「貴様!魔女!」

「貴様なんてご挨拶だわ。こんな美女を相手に。」

「抜かせ!あんな良い子を改造して、ティアを連れ去り、黒瀬光を利用しやがって!!貴様のような奴こそ人間じゃねぇ!この化け物め!!」

「酷いわぁ・・・でも、良いの。私は優しいから許しちゃう。だってこれからわたくしの駒になるんだものね。」

「誰が貴様のような奴に使われてやるものか!!俺を操れると思うな!!」


 事実、渋谷は修行により、強固な精神構造をしており、魔女でもそう簡単に操れるものではない。

 普通であれば、だが。


「そうなのよね・・・だから、ここは協力者に頼みます。ねぇティアちゃん?」

「はい、母上。」


 その背後からティアが現れる。

 渋谷はティアを見て歯ぎしりをする。


「おい!ティア!無様に操られてるんじゃねぇ!!」

「十三、私は操られてなどいない。母上に協力しているだけだ。お前も協力してくれるだろう?」

「誰があんな奴に!」

「ティアちゃん。『剣豪』ちゃんは意地を張ってるだけよ。男の子だもんね。」

「母上。」

「だからね?ティアちゃん。素直になって貰いましょう。ティアちゃん?服を脱いで、『剣豪』ちゃんを抱いてあげて?」

「わかりました。」


 そう言って一糸まとわぬ姿になるティア。


「おい!馬鹿野郎!やめろ!そんな奴の言いなりになるな!!」


 渋谷は、なんとか拘束を抜け出そうとするが、ピクリとも動かない。


「『剣豪』ちゃん、無駄よ?私の拘束魔法をティアちゃんのと一緒に考えては駄目ね。」

「くそっ!おい!馬鹿ティア!やめろ!!」


 ティアは渋谷を脱がして行く。


「さて、それじゃあ、私は行くわね。光ちゃん達も行くわよ?これ以上は教育によろしくないわ。」


 すると、そこにいた光は、


「え〜!?師匠それはないですよ〜。どんな風なのか見てみたかったのに〜!!」

「・・・光・・・」


 頬を膨らませて文句を言う光を、充は辛そうに見る。

 彼の知っている光であれば、そんな風に無理やり行為をしようとする人を見たら止める筈だからだ。

 光の精神汚染が深まっている状況がわかってしまい、充は泣きそうになった。


「こらこら。そんな風に言ってもだ〜め。そういうのは、あなたの大事な大事な大和健流くんとする時にしなさい?それとも・・・彼を惑わす二匹の雌犬に、他の男をけしかけて鑑賞するとかどう?」

「なるほど!流石ですね師匠!泣き叫ぶあの二人を見ながら、健流とするのも良いかもしれませんね!その時には、私と健流がしているのを、犯されているあの二人に存分に見せつけなきゃ!アハハハ!」

「・・・光。もう行こう?」

「どうしたの充?なんか辛そうだよ?大丈夫?」

「・・・別になんでもないよ。さぁ。」

「しょうがないね〜。では師匠。失礼します。」

「はいはい。」


 二人が空間からいなくなる。

 

 渋谷は、ティアから目をつむり、身体が反応しないように身体制御と精神統一をして、なんとか防いでいた。


「流石ね『剣豪』ちゃん。その状況でそれが出来るのは。でも、それじゃあ面白くないのよね。という事で、はい。」


 その瞬間、魔女の身体からピンク色の霧が空間内に充満する。


「・・・何をした!?」


 異常を感じ取って、渋谷が魔女に問いただす。

 魔女はニヤリと嘲笑って、


「その霧はね?興奮剤なのよ。それも枯れた老人でも反応するレベルの、ね。あなたは目を瞑っているから見えないだろうけど、ティアちゃんはもう凄いことになってるわよ?ああ、そうそう、死のうと思っても死ねないからね?あなたが眠っている間に制約をかけてあるから。遠慮なく色に狂って壊れちゃいなさい?」

「悪魔め!!」

「あははは!褒め言葉だと思っておくわね。じゃあ私も行くわ。ここにいたらわたくしでも反応しちゃうから。あなたはタイプじゃないのよ。ティアちゃん、存分にね?」

「はい・・・母上・・・。十三と・・・繋がれる機会を・・・頂き・・・ありがとうございます。」


 ティアは、既に完全に発情しており、子供のような、弟のような、家族のような・・・心の中では男としても見ていて憎からず思っていた、渋谷と繋がれることに歓喜していた。


「さぁ・・・十三。私と気持ちよくなりましょう。愛していますよ・・・」

「やめろ・・・ティア・・・頼むからやめてくれ・・・俺は・・・俺はお前を愛している。母としても姉としても・・・女としてもだ!だが、こんなのはいかん!やめろ!!頼むから・・・やめてくれ・・・もう・・・限界なんだ・・・正気が保てない!」

「良いのです十三。一緒に・・・一緒に壊れましょう?私と一緒に・・・壊れて・・・お願い・・・」


 ティアの目から涙が一筋流れた。

 そして、そのまま渋谷に口づけをし、渋谷の全身に舌を這わす。


「ティ・・・ア・・・」








 翌日、魔女は渋谷とティアを閉じ込めていた空間に入る。

 そして、魔法を解除した。

 ピンクの霧が晴れ、二人が姿を表す。


「あら、凄い匂いね。あれからずっと二人で頑張っていたのね。うふふ・・・」


 今もティアに覆いかぶさって行為をしている渋谷。

 魔女が居ることも、霧が晴れている事にも、もう気づけていない。

 精神のたがが完全に外れていた。

 

 背後から近づき、渋谷の後頭部に手を添える。


「はい『剣豪』ちゃん、チェックメイトね。これからはわたくしの為に働いてもらうわね?」


 そして、黒い闇が渋谷を包む。

 最愛の母であり、姉であり、女であるティアと共に正気を壊されていた渋谷に抵抗する事は出来なかった。





 今、魔女の拠点である異界。

 玉座に座る魔女の前には、弟子である光とティア、その背後に充と渋谷が立っている。


「これで、こちらもそこそこの戦力になったかしら。後は現界で今月の末まで光ちゃんを鍛えるだけね。『あの方』から良い物も貰ったし。もうすぐ・・・もうすぐだわ!うふふふ・・・」


 魔女は知らない。

 もうすぐその目論見に、綻びが出来ることを。

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