閑話 魔女と光と充 side 光&充

side 光


「ほら、光ちゃん?もう少し魔力を安定させなさい?」

「はい、師匠」


 私は師匠に言われた通り、魔力の出力を安定させる。

 私が師匠と、この異界に来てから、もう半年が立つ。

 ここでは時間の流れが向こうの世界とは違うらしく、師匠の話では、向こうではまだ7月の末頃との事だった。


「うん。今日はここまでで良いわ。」

「はい、ありがとうございました。」


 私は、割り当てられた自室に行く。

 

 疲れていた事もあり、シャワーを浴びるとすぐにベッドに横になった。

 そして、ここ半年の事を思い返す。


 ここに来てからはひたすら修行の日々だった。

 

 幸い、私には才能があったらしく、師匠に大きく叱責される事無く過ごしている。

 ただ、一つだけ辛いことがある。


 それは、健流に会えない事。

 最初の一ヶ月位、私はいつも枕を涙で濡らしていた。

 

 あまりにも寂しくて、健流に会えない事が辛かった。

 こうしている間にも、健流はあの二人に何をされているかわからない。


 師匠の話では、健流を身体で籠絡しているのでは無いかとの事だった。

 じゃないと、健流が私になびかないわけが無いと。


 正直それはわからない。

 何せ、姫乃も灯里も女の子から見ても、綺麗だし可愛い。

 私では敵わないと思う位に。

 でも、健流は見たくれでそういう相手を選ばないと思う。


 だから、二人の内面も綺麗だと思う。


 健流が惹かれるのもわかる。


 あの二人がいる限り、健流はわたしだけのものにはならない。

 あの二人がいなくなれば・・・

 

 ・・・あれ?なんで私そんな風に思うんだろう?


 あの二人は友達・・・大事な友達・・・うう・・・頭痛が・・・


 コンコン


「光ちゃん?」


 師匠?


「はい、なんでしょうか師匠?」

「いえ、ちょっとね。部屋に入っても良いかしら?」

「どうぞ。」


 師匠が入ってくる。

 そして、そのまま私に近づき、頭を撫でた。


「・・・師匠?」

「・・・いえ、なんでもないわ。流石は光ちゃんね。本当に才能があるわね。ちょっとわたくしが驚くくらいに。」

「そうなのですか?」

「ええ、少し予想外だったわ・・・でも・・・これで良し、と。それじゃあね?」


 師匠は、最後に私の頭を一撫でしてから部屋から出ていった。

 なんだったのだろう?


 でも、いいや。

 私は師匠が大好きだ。

 師匠の為ならなんでも出来る。


 師匠の邪魔をする奴らは排除する。

 エデンの奴らは皆殺しだ。


 それに・・・姫乃や灯里、使にも、死んで償って貰おう。

 健流も、あの二人を殺したら、喜んでくれる筈。

 だって

 あの二人は健流を騙し、色気でとりこにしようとしている。


 健流と一緒になったら、ずっと二人でただれた生活を送ろう。

 朝から晩までベッドで抱き合って過ごす。

 そしてまた朝までずっと繋がるの。


 ドロドロにとろけた生活を過ごすの。


 うふ

 うふふ

 うふふふ


 待っててね・・・健流・・・


 ちゃんとあんな二人は忘れさせてあげるから・・・

 あなたの心も身体も私のものだからね・・・ 


 今の私には頭痛は無い。

 さっきの頭痛はなんだったんだろうか・・・


side 充


「ぐ・・・あ・・・あ・・・」

「あら、頑張るわね。良く生きてるものだわ。多くの実験体はだいたいコレくらいで死んでいるのに。興味深いわね。」


 俺は、魔女に改造されている。

 常に変な生き物・・・魔女は魔物とか魔獣とか言ってたが、それと戦わされて、怪我をすれば、妙な薬や外科手術などで、身体をいじくり回される。


 だが、そのおかげで信じられないくらい強くはなっていた。

 

 今も、大怪我をした俺は、妙な薬を投与され、怪我はふさがったものの、焼けるような痛みと頭痛、臓器がとけているかのような痛みを感じ、のたうち回っている。


「この分で行けば、中々良い駒になれそうね。」


 魔女はそう言って、部屋から出ていった。


 のたうち回りながらも、俺は必死に光の事を考える。

 でないと気が狂いそうになるからだ。


 光・・・もうかれこれ一週間程会っていない。


 魔女が、修行の邪魔になるからだと言っていた。

 魔女は一週間に一度位しか光に会わせてくれない。

 

 光は会う度に、少しずつ壊れていっているように感じた。

 残虐性が増し、今まで口にしなかった事も言うようになった。


 特に驚いたのが、灯里と如月を殺すという言葉だ。

 あの光がそんな言葉を言う訳がない!

 光は本当に優しいやつなんだ。


 迷子を見つければ、自分に用事があっても優先して助けたり、困っている人を見たら、力になる。

 あいつはそんな奴だ。

 それが、友達を殺すなんて言う訳がない!!


 全部、全部魔女のせいだろう。


 あの魔女は恐ろしい・・・本当に恐ろしい。

 人の命に一欠片の価値も見出していない。

 

 ただただ、自分が楽しい事だけを楽しみ、その楽しみも他人の不幸や絶望だ。

 あんな奴に光がいいようにされているのを見ると、気が触れそうになる程頭にくるが・・・俺にはどうにも出来ない。


 さっきの怪我も、俺の仕上がり具合を見ると言って、魔女と立ち会わされ、ボロボロにされた。

 それこそ、奴は指を何度か動かしたくらいだったが。


 圧倒的な戦力差。

 それが奴と俺の差だ。

 正直心が折れそうになる。

 

 だが、それでも光の為に頑張るしか無い。


 おそらく俺が消えたら、あいつは本当に一人になっちまう。


 頼む!

 俺の身体!!

 

 どうかってくれ・・・


 光を健流に託すまでで良いから!!


 頼む!

 健流!!

 光を・・・光を救ってくれ!!


 その為なら・・・俺はお前に殺されても良い!!


 ああ・・・駄目だ。

 今日も気絶するのか・・・

 また目が覚めたら、殺し合いと実験道具か・・・


 俺の精神よ・・・保ってくれ・・・

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