第73話 二日目の過ごし方

 朝食の時間となり、食堂に移動する四人。


 光は若干顔色が赤いが、姫乃と灯里は既に平常に戻っていた。

 健流は少し肩を落として歩いている。


「元気出しなさいよ健流。そんな気にする事ないわよ!」

「そうですよ。むしろご立派でしたよ?」

「もう・・・勘弁して下さい。」


 トボトボと歩く健流。

 それを見て光は、


「(健流ショックを受けてる・・・うん!ここは元気を出してあげないと!)」


と、気合を入れた。


「ねぇ、二人ともちょっと良い?」

「ん?何ヒカリ?」

「どうしたんです?」

「あのね・・・昨日は私達のやりたい事をやったから、今日は健流のやりたい事をさせてあげられないかなって思ってさ。」

「・・・そうね。別に特にやる事も無いし。」

「別に良いですよ?健流、何かやりたい事あります?」


 そう言って三人は健流を見る。

 健流は、これが三人が気遣いを見せてくれているのだと気がついた。

 そして、大きく深呼吸して、気分を変える。


「・・・ああ、実はな、昨日の俺の行動にも関係してるんだが、釣りがしたいんだよ。」

「釣り?フィッシングの?ガールハントでは無く?」

「ガールハ・・・って何言ってんだ姫乃!?そんな事俺がするわけねーだろ!?フィッシングの方だ!!」

「ふーん・・・別に隠すこと無かったんじゃないの?」

「いや、一人でのんびりしたかったんだよ。だけど、昨日三人で行動してわかった。みんなで行動するのも楽しいってな。その・・・教えるから、お前らもやってみないか?」


 健流がそんな風に打ち明けてみると、三人は嬉しそうに笑顔になった。


「良いわね!あたしも釣りやったこと無いからやってみたい!」

「そうですね。私も未経験です。ちょっと楽しみですね。」

「うん。私もだよ!健流、教えてね?」

「ああ!任せとけ!!」


 こうして気まずい空気が無くなり、食堂で席に着くと、


「おはよ〜・・・」


 と、目をこすりながらレーアがやって来た。

 その格好は、浴衣の胸元がはだけており、健流には目の毒だった。


「(うわっ!?でけぇ!?てか、ブラジャーしてない・・・だと!?)」


 健流があいさつもそこそこに思わず凝視してしまう。

 健全な青少年である健流には仕方が無いことなのだ・・・多分、大人の男でも見てしまうであろうが。

 すると突然、健流の両頬が掴まれ、更に脇腹を摘まれた。

 そして・・・


「痛ってぇぇえぇ!?」

「健流!見すぎ!!」


 灯里が頬を掴む指に力を入れる。

 

「健流!見ちゃダメ!!あれは毒!ファンタジー!偽物なのよ!!」


 姫乃も同じだ。


「レーアさん!早く胸元直して下さい!!」


 光も脇腹を摘む手の力を入れた。


「失礼ね。本物です〜!!大和くん確かめてみる?」


 レーアは不服そうな表情をしてから、健流に流し目をしながらしなを作って近寄っていく。


 そして、摘まれる指には更に力が入れられる!


「あがががががが!」


 健流の災難はどうやら終わらないようだった。




「ごちそうさまでした。は〜美味かった!」


 ひと悶着あった後、食事を終え、満面の笑みを見せる健流。

 食べ始める前までは摘まれた所が赤くなっていたが、持ち前の回復力のおかげかすでに元に戻っている。


「あなた達はこの後どうするの?」


 レーアが四人に訪ねた。


「この後は近くの川で釣りをする予定なんすよ。」

「健流に教えて貰うことになってるんです。」

「レーアさんも来ますか?」


 健流と姫乃、灯里がそう答えると、レーアは少し考えてから、


「う〜んやめとこうかな。昨日は出かけて無いし、今日は宿場町をぶらつこうと思ってたから。誘ってくれてありがとうね姫乃ちゃん。」


そう答えた。


 レーアは微笑んでいた。

 嬉しかったのだ。

 姫乃が人生を楽しんでいる様子を見せている事が。


 レーアは以前から姫乃に、仇討ちの虚しさについて語っており、姫乃の生き方を危惧していた。

 それが、今やどうだろう!

 しっかりと青春を謳歌している様子を見せている。

 それもこれも・・・


「(大和くんのおかげね。今度お礼をしなきゃね・・・あっそうだ!)」


 レーアは健流にするお礼を思いついたようだ。

 その表情は悪戯をする子供ようなものだった。

 

 レーアが思いついたお礼とは一体何なのか?

 健流の運命や如何に!!

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