第72話 朝を迎えて一騒動

「・・・ん?朝・・・か?」


 健流が目を覚ます。

 ぼんやりそのまま昨夜の事を思い出していると、姫乃にしてやられた事を思い出した。


「(くそっ!本当に手段を選ばねぇなアイツ!にしても、なんでこんなに身体が動かねぇんだ?それに重いし、なんかそこら中から良い匂いがするんだが・・・)」


 健流は、ここでようやく周囲の状況を確認した。

 すると・・・


「(姫乃!?)」


 右手を抱え込んで、首筋に顔を寄せて寝ている姫乃が!

 その表情は幸せそうだ。


「(灯里!?)」


 逆側には、左腕を抱え込み腕に顔をこすりつけている灯里が!

 嬉しそうに笑顔で寝ている。


「(光!?おい!お前が一番ヤバい!!)」


 そして、健流に被せてあった布団をはだけ、健流の上に直に乗って寝ている光がいた。

 しかも、体格差のせいか、朝反応を見せる荒ぶる健流の健流が、丁度光の問題のある所に触れている。


「(ヤバいヤバいヤバい!!鎮まれ!早く鎮まれ!!)」


 健流は祈る。

 このままでは、風呂での時の事よりも、ダントツで不味くなる。


 特に問題なのが、全員浴衣で寝ているという事だ。

 一度でも浴衣で寝たことがあれば、経験があるだろう。

 浴衣というのは、寝ている時にはだけてしまうものなのだ。


 よって、今の四人はほぼ下着状態。

 そんな状態で、朝反応を見せるリトル健流が、光の下着越しに触れてしまっているのだ!


 健流の焦りが加速する。


「(頼む!鎮まってくれ!頼む!)」


 男は誰しも経験していると思うが、男性自身というモノは、何故か焦れば焦るほど鎮まらなくなるものなのだ。

 奴は一向に鎮まる気配を見せない。

 むしろ、女性の良い香りと、腕や首筋に感じる柔らかさやくすぐったさ、何処とは言わないが微妙に当たっている、とある所の感触で、荒ぶりが増しているようだ。

 しかし、そんな時だった。


「あ・・・ん・・・はぁ・・・はぁ・・・あっ」


 健流の祈りも虚しく、光から妙は声が聞こえ、息が荒くなる。


 ぐりっ

 

「(光!ストップだ!動かないでくれ!!)」


 寝ぼけているのかなんなのか、光が、健流自身に、どこの部位とは大きな声では言えないが、下着越しに押し付け始めた。


「(くっ!?マジか!?やべぇ!?)」


 光は動きを止めない。

 寝ているので動きは緩慢ではあるが、間違いなく押し付けられている。


 この所、姫乃に散々悶々とさせられていた健流。

 このまま行けば、昨夜を遥かに越える、不名誉な称号を与えられる事になる。


「(くそっ!こうなったら!!)」


 健流は覚悟を決めた。

 下着を見た等、多少の叱責は甘んじて受けるべきだろう。

 大いなる不名誉よりはマシだった。


「ふぁああああああ!あ〜よく寝た!!」


 大きな声でわざとらしくアピールする。

 すると、三人共にピクッとして目を開け、むくりと起き上がった。


「あれ・・・もう朝・・・?」

「ふぁぁぁぁぁっ!よく寝た〜!!」

「う・・・ん・・・あれ?なんか良い夢見てた気がしたんだけど・・・って健流!?あれ!?私そのまま寝てたの!?嘘!?」


 三人がそれぞれの反応を見せる中、安堵しているのは健流だった。


「(危ねぇ・・・助かった!だがまだだ!)」


 健流は更に作戦を進める。

 もう一つ解決すべき問題が有るのだ。


「ひ、光!ちょっとどいてくれ!流石に重い!」

「あっ!?ご、ごめん健流!」


 本当は特に重く無かったが、あえてそう言うと、健流の足の上に座り込んでいた光がすぐにどく。

 そして、間髪入れずに、


「お、おい!服!浴衣!!」


 はだけた浴衣について言及した。

 勿論、健流は顔をそむけて目を瞑っている。


「えっ?きゃっ!?」

「「!?」」


 三人は自らの有様に気づき、すぐに浴衣の前を閉じる。


「(よし!ミッションコンプリートだ!!)」


 健流は充足感を覚えた。

 これで問題は無くなったと!

 やりきった!っと大の字になって全身の力を抜く。


 だが、健流は肝心な事を忘れていた。


 己がどのような状態であるのかを。


「「「!?」」」


 驚愕する三人。

 そして・・・


「た、健流・・・それ・・・あたし達でそうなっちゃったの?」

「は?」


 健流が、灯里が指差す所を見ると・・・

 浴衣がはだけて、ボクサーパンツが丸見えで、朝反応が起きている状態の己自身があった。


「おわぁぁぁぁぁ!?しまったぁ!!〜〜〜っまたかよ!!」


 健流は急いで起き上がり、後ろを向いて浴衣を整える。


「(くそっ!!何がミッションコンプリートだ!超失敗じゃねーか!!)」


 完全に、Missionにんむ failureしっぱい だった。


「健流・・・ごめんなさい。そんなになるまで我慢してたのね・・・」


 姫乃が、バツが悪そうに言う。


「ち、違う!これは!男は何故か朝に反応する生き物なんだ!やましい事は無い!」


 本当は少しあるが、そこは内緒だった。


「あっ聞いたことあるかも・・・」


 光がそんな反応をする。


「(ぐっ!!ここまで元気なのはお前が原因なんだぞ光!他人事みたいに言いやがって!!)」


 しかし、真実を伝えることは出来ない。


 健流はがっくりしながら、昨日の二の舞いを演じるのであった。

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