第36話 放課後の息抜き、そして乱入者(2)
「(さて、何を歌うかね・・・おっ!?これ懐かしいな。これにするか!)」
健流は、昔グレていた頃に、よく聞いていた、ロックナンバーを歌う事にした。
「おっ!?大和、渋い所行ったな!」
「私これ知らないなぁ・・・」
瀬川と黒瀬がモニターを見る。
健流はマイクを持って、歌い始めた。
『永遠なのか、本当か、時の流れは続くのか。いつまで立っても変わらない、そんな物、あるだろうか♪』
それは、男らしく、叫ぶように歌う歌。
健流は、もともと声量もあり、男らしい声なので、その歌は健流にマッチしていた。
『見てきた物や、聞いたこと、今まで覚えた全部、デタラメだったら面白い、そんな気持ち、わかるでしょ♪』
黒瀬はその歌を聞いたこと無かったが、歌詞と共に、健流の声が心地よく耳に入ってきた。
歌はどんどん進む。
『・・・涙はそこからやって来る。心のずっと奥の方、情熱の・・・』
「(・・・大和格好良い・・・)」
うっとりと聞き入っている黒瀬。
そして、時を同じくして、同じようにうっとりしている者がいた。
そう、姫乃だ。
「(・・・健流、歌上手いじゃないの・・・それに、この歌、凄く健流に合ってる・・・)」
そんな様子を瀬川はじっと見ている。
「(・・・これは、黒瀬も大変だな・・・だけど、応援してやんないとな。大和は良い奴だし。はぁ〜・・・でも、好きな子なんだ。どうせなら、想いが成就して欲しい。)」
そんな事を思っていると、健流の歌が終わった。
「ふぅ〜・・・結構すっきりするなコレ。ハマりそうだ。」
「大和!格好良かったよ!」
「ああ、ありがとな黒瀬!」
健流は、黒瀬からの称賛を、にかっと笑って受け取る。
「・・・健流くん。上手でしたよ。」
「おう!次、姫乃だろ?」
「ええ。」
「(・・・すっごい自然に名前呼びしてる。う〜・・・)」
姫乃と健流のやりとりに、やきもきする。
だが、それも姫乃がマイクを持ってからは変わった。
『あなたが、もし、旅立つ、その日が、いつか来たら、そこから、ふたりで、始めよう♪』
「(・・・凄い!如月さん凄く上手・・・)」
それは、黒瀬達が生まれる前に、大物女性シンガーが歌っていた曲。
黒瀬はちらりと健流を見る。
健流は口を開けて聞き惚れるようにしていた。
「(・・・悔しい!私の時はそんな風じゃ無かった・・・)」
『これから、始まっていく、二人の、物語は、不安と、希望に、満ちてる・・・』
「(上手いじゃねーか・・・こいつ本当になんでも出来るな。それに・・・)」
健流は、姫乃が歌う歌の歌詞を聞いて、なんとなく今の自分たちの境遇に似ていると思った。
組織に加入し、相棒となり、二人で戦って行かなくては行けない。
どちらがどちらを表しているのかはわからないが、健流にはそう思えたのだ。
「はぁ・・・中々恥ずかしかったですが、上手に歌えたでしょうか?」
歌い終えた姫乃が、三人にそんな風に問いかける。
「ああ、上手かったよ。」
「如月さん歌も上手いんだな!」
「・・・凄く上手だった。凄いね。」
三人はそう答える。
黒瀬は心無しか、少し元気が無いようにも見えた。
姫乃は、そんな黒瀬の様子を不思議に思ったが、深く触れず、マイクを置いた。
「ちょっと、飲み物取りに行ってくるね。」
そう言って、部屋を出ようとする黒瀬。
「あっ!次俺歌う番だから、大和悪いけど、飲み物取って来てくれないか?」
瀬川がそんな事を言い出した。
「ああ、良いぞ。黒瀬、一緒に行くか?」
「・・・うん!」
黒瀬が顔を明るくして、健流と外に出る。
瀬川は姫乃の方を向いた。
「悪いね如月さん。俺なんかと二人きりになっちゃって。」
「・・・ええ、構いませんよ。それで、何かお話があるのでは?」
「・・・凄いね、如月さん。そう、話がある。答えてもらえるか?」
「内容によりますね。」
「わかった。単刀直入に聞く。如月さんは、大和の事好きか?」
一方その頃、健流と黒瀬はドリンクバーに来ていた。
「大和、上手かったんだね!」
「あ〜自分じゃよくわからなかったが、それなら良かったよ。そういう黒瀬も上手かったぞ?」
「えへへ・・・そうかな?」
「ああ。黒瀬も、瀬川もな。姫乃も上手かったが。」
「・・・ねぇ、大和。あのさ、大和って如月さんの事・・・」
「あーっ!あんたも来てたの!?」
「好きって・・・へ?」
黒瀬が思い切って健流の気持ちを確認しようとしたところに、その声は響いた。
二人揃ってそちらを見ると、そこには・・・
「灯里?」
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これくらいなら歌詞、大丈夫でしょうか…ドキドキしてます
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