第35話 放課後の息抜き、そして乱入者(1)

 大和達は、放課後、四人で集まって出かける事になった。


「しかし、遊ぶは良いけど、この辺りは田舎だし、何して遊ぶんだ?」


 健流は、黒瀬にそう尋ねる


「そうだね〜。う〜ん・・・」

「考えて無かったのかよ・・・」


 黒瀬は何も考えていなかった為、悩みはじめ、それを見た健流はため息をつく。


「この辺りで遊ぶとしたら、カラオケ、ゲーセン、ボーリング・・・位か。」

「そんなもんだろうな・・・名古屋まで出ればもっとあるだろうけど・・・」


 瀬川と健流がそんな風に考えていると、姫乃が、


「私、どれも行ったこと無いので、興味があります。」


と言った。


「じゃあ、私カラオケ行きたい!」


 黒瀬がそれを聞き、挙手しながら叫ぶ。

 

「よし、ならカラオケにしよう。」

「わかった・・・てゆーか俺もカラオケって行ったこと無いな。」

「え?大和も?今どき珍しいね。」


 瀬川の言葉に健流がそう答えると、黒瀬は驚いてそんな風に言った。


「まぁ・・・中学の時は、そんな友達もいなかったし、高校入ってからも、あんまり遊びに行ったりしなかったからな。」

「・・・そうだね。私達も、学校では話しても、遊びに行かなかったもんね。(しまったなぁ・・・もっと早く遊べば良かった・・・)」


 そんな二人に、瀬川は笑顔になった。


「これから遊べばいいだろ?時間はいくらでもある!・・・受験もあるけどな。」

「・・・途中まではいいセリフだったんだけどなぁ・・・」

「・・・そうだね・・・」


 途中からは顔を顰めた瀬川に、同じように健流と黒瀬も消沈する。

 

「ほら、今から遊びに行くのですよ?もっと笑顔で行きましょう?」


 そんな三人に、姫乃が笑顔でそう言った。


「おう!」

「・・・そうだな。」

「それもそうね。よし!今日は思いっきり歌うわよ!」


 三人共に、姫乃の言葉に笑顔になってそう答えた。

 三人は、地元のカラオケボックスに向かう。


 二時間で部屋を借り、案内された部屋に向かう。


「へ〜・・・これがカラオケボックスなのね・・・」

「・・・そういえば、俺、人前で歌うのって初めてだな・・・やべぇ、緊張してきた。」


 カラオケ初の二人は、キョロキョロしながら部屋の中に入る。

 

「フリードリンクだから、飲み物は通路にあったドリンクバーで勝手に持ってくればいいわ。始める前に飲み物取って来よう?」

「じゃんけんで持ってくる人決めれば良いんじゃないか?」

「ううん、私と大和で・・・」


 黒瀬と瀬川がそんな風に言った時だった。


「あっ、私初めてだから、どんなのあるか見てみたいから行きますよ?」

「・・・じゃあ、俺も行こう。瀬川、黒瀬、何にする?」


 姫乃と大和が自ら立候補した。

 しかも、自分で見てみたいという大義名分さえある。


「すまんな。俺はコーラで!」

「・・・私は・・・私も・・・はぁ。私もコーラで。」


 一緒に行こうと思った黒瀬だったが、瀬川を一人にするのも悪いと思い、諦めた。


「行きましょう。」

「ああ。」


 二人が廊下に行く。


「・・・ねぇ。大和って如月さんの事を好きだと思う?」


 黒瀬は瀬川に思い切って聞いてみた。

 瀬川は、きょとんとしてから、真顔になり、


「・・・そうだな〜、少なくとも嫌いではないと思うぞ。何せ、あの大和が、お互いに名前で呼ぶのを認めた位だからな。」


そう言った。


「そうだよね・・・」

「あいつは、ああ見えて、人から強制されても、嫌な事は嫌だと言える奴だ。そんな大和が、如月さんからああ言われたからって、すぐに呼び捨てで呼ぶとは思えない。俺たちが知らない間に、それなりに仲良くなったんだろうな。」

「はぁ〜・・・やっぱり・・・」


 黒瀬が、しょんぼりしていると、瀬川は真剣な表情で、


「黒瀬、大和が好きなら、恥ずかしがってる場合じゃないと思うぞ。」


と言った。


「っ!?な、何いってるの!?私は別に・・・」


 その言葉に驚き焦る黒瀬。

 しかし、瀬川は表情を変えず、更に諭すように続ける。


「俺が脳天気な野球バカだからって、バレて無いと思ってるのか?そんなのとっくに気づいてたぞ?」

「・・・」

「別に誤魔化すなら誤魔化すでいいが、後悔だけはしないようにしろよ。」

「・・・そうね。」

「あいつの周りには、如月さんだけじゃない。あの、灯里って子もいるんだ。気合入れて行かないと、気づいたらゲームセットだぞ。」

「わかってるわよ!・・・いや、わかって無かったのよね・・・はぁ・・・」

「・・・まぁ、元気出せよ!まだ、試合が決まったわけじゃない!これからだ!俺は応援してるぜ!」

「ありがと・・・瀬川。あんたやっぱりいいヤツだね。」

「・・・今頃気づいたのか?俺は最初からいいヤツだぜ!」


 にかっと笑ってそう言う瀬川。

 黒瀬はそんな瀬川に勇気づけられ、気合を入れる。


「・・・そうね!負けてらんないわ!」

「おう!その粋だぜ!!(・・・はぁ〜・・・こっちの身にもなって欲しいもんだ・・・なんで好きな女と他の男の恋路を応援しなきゃなんねーのか・・・やれやれ。)」


 瀬川は、内心苦笑しながら応援する。

 彼は、根っからの友達思いで、優しい男だった。


 ガチャッという音がして、二人が戻ってくる。


「おまたせ。」

「あっ!戻って来た!さぁ!歌うわよ!まず、私から!」


 こうして、カラオケは進む。

 黒瀬は、流行りのアイドルの歌を、瀬川は最新の男性ボーカルグループの歌を歌った。


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 息抜き回と思って読んで下さい。


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