第2話 とあるカップルの様子

よくいるような若いカップルが手を繋いで歩いてくる。

「あ、今年も七夕イベントあるんだね。」

無邪気な笑顔で隣の彼を見上げている。

「そうみたいだな。」

少しぶっきらぼうではあるが、彼女もそんな彼に慣れているのか、気にした様子もない。

「短冊、書いていこうよ。」

ぐいぐい彼を引っ張っていく彼女に対し、嫌そうに見せながらも、そこまで抵抗せず引っ張られていく彼。そんな彼の不器用さを受け入れる彼女と、彼女の無邪気さをそっと受け入れる彼。お互いがお互いを想い合っている様子が見てとれる。


「えーっとね。『あっくんと結婚できますように』っと。」

頬に赤みがかかっていて、少し照れながら書く様子に、見ていてニヤニヤしてしまう。

「なんでそんな恥ずかしい。ばかみたいなこと書いてんなよ。」

自分の名前が短冊に書かれ、いろんな人に見られるのが恥ずかしいのだろう。こういう短冊を書くのはバカップルの定番だものな。

「えー。でもこれ以外にお願いなんて思いつかないし。」

そう言われて、恥ずかしそうにしていた彼も満更ではないのだろう。嫌だと言いつつ笹に結ぶ彼女を止めようとしていない。


「あっくんは書かないの?」

短冊を手に持ちながら聞く彼女に対し、書かない と言う彼に彼女は少し不満げだ。

「なんのお願いもないの?」

「ないな。」

すかさず返す彼にぶす腐れはじめた。

「俺のしたいことは俺が決めんの。……けど、咲希には来年も一緒にいて欲しい。」

彼女の落ち込んでいく姿を見て、恥ずかしさを堪えて告げたのだろう。彼女もそれを聞いて嬉しそうだ。


「じゃあ私があっくんの願いを聞き入れてあげよう。」

すっかり機嫌を直して話している。

「なら、咲希の願いも俺が聞き入れないとな。」

彼の精一杯の一言だろう。とても早口に呟いて、彼女の吊るした短冊を素早く取って帰路に着く。

しかし、その小さな呟きはしっかりと彼女の耳に届いたようだ。嬉しそうに彼の隣へ行き、腕を組んで並んだ。


青春を見させてもらった。不器用な恋が、このままじれじれと続いていきますように。

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