第2話 鹿鳴学院

あれから3ヶ月と少しがたち、編入試験の合格通知が来て、僕は晴れて私立鹿鳴学院に編入することになりました。

が、、、

父さん、不甲斐ない息子でごめんなさい。

正直もう心が折れそうです。

編入試験は別の会場だったため、今日初めて学院に入ったのですが、

学院の周りには赤レンガの塀、肝心の学院本体はまるでお城のようで、なんだか落ち着かないですし、しかも中庭には枯山水、裏庭には日本庭園らしきものがあるなんて、本当にここは東京の真ん中なのでしょうか。

土地代を考えただけで震えが止まりません。

授業開始のチャイムらしき音楽はとっくに流れたのですが、いまだに教室にたどり着けず、今は疲れてしまって廊下に設置してあるベンチで一休みをしている最中です。

ここにたどり着くまでに何人かの生徒さんとすれ違い、ジロジロ見られたことでも確実に精神的ダメージを受けました。

そりゃそうですよ、制服が違いますから。

誰がデザインしたかもわからない下町の公立高校の制服と、海外で活躍する超有名デザイナーが手掛けた由緒正しき私立高校の制服。

制服がまだ届いていないので前の高校のを着ているんですなんて、わざわざ一人一人に言う勇気もなく、、、

巡回している警備員さんに道案内を頼む勇気すらなく、、、

もう帰りたい、帰り道もよくわからないけど

そう考えているうちに、本日2回目のチャイムがなりました。


「もしかして君は今日編入してきた人ですか?」

動く気力も湧かず、ただベンチのに座り、灰になりかけていると、一人の男子生徒が話しかけてきた。

綺麗に整った黒髪にきちんと着られた制服。

いかにも鹿鳴学院の生徒という感じだ。

「はい、そうです。」

少し気後れしながら応えると、彼はすごく

ほっとした顔をして近づいてきた。

「あぁ、良かった。やっぱり迷ってたんですね。授業前、秦と僕で探していたのですが、

見つからなくて焦っていたところです。」

近くに来るまで気づかなかったが、彼の額には汗がにじんでいた。

この広い校舎の中を、時間が許す範囲で頑張って探してくれていたらしい。

お手数をかけて申し訳ないと思いながら、頭を下げる。

「ご迷惑をおかけしました。」

すると、彼はにこりと笑った。

「気にしないでください、誰でも最初は迷ってしまうほど、この学院は広いですし、編入生の案内は、クラス委員と生徒会の役目ですから。」

見つけてもらったのが優しい人で良かったと思うと同時に、ともかくこれで迷子になるという地獄は終わったのだと安堵した。




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お嬢様、少しは僕の話を聞いてください!! 香田 @blueandwhite

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