07-14-帰還──コラプス・メイオ砦

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《メイオ砦》

《コラプス・メインコア》


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《Congratulations!》


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《コラプス攻略報酬》


2ゴールド

ソウルケージ(ソウル有り)×6

ソウルケージ(ソウル無し)×33

イメージスフィア(メイオ砦1回目→)×20

イメージスフィア(メイオ砦1回目←)×20

★リジェネレイト・スフィアLV1

☆クルーエルティ・ピアース(カッパーパイク)

☆グレートツリーズ・レイジ(ウッドハンマー)

☆ウォームス(レザーベルト)

【★アイテムスタックLV1】

【☆人馬一体LV2】

【☆アイテムボックスLV1】

【採掘LV3】

【採取LV2】

【緑黄色野菜LV1】


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《59秒後、コラプス外に転移します》


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「やば! これ全部報酬!? マジやばくね!?」

「うおあああなんだこれ、なんかレアどころかエピックアイテムがふたつもあるんだけど」

「わわ、すごい! ユニークがたくさん! しかも鑑定済みだよ!」

「うわー……! いま現れたこの大きな木箱を開ければいいのかなー」

「足柄山さん、開錠をお願いできるかしら? 時間がないわ、急いで」

「は、はいですっ! とーーーーっ!」


 急に騒然とする部屋。アッシマーがバコンと木箱を開けると、俺たちは革袋を取り出し、手分けして回収する。

 さすがに人命がかかっているぶん、とくにソウルケージはソウル有り、ソウル無しを分け、丁寧に詰めてゆく。


「うお、もう時間がねえ! 全員両手になんか持ってくれ! イメージスフィアってなんでこんなに、しかもアルカディアにあるんだよ! そっちは革袋に適当に突っ込んでくれ!」

「わかったし! って、この【緑黄色野菜LV1】のスキルブックってなんに使うわけ!?」

「誰もが疑問に思ってんだからいまは気にすんなっつーの! コボたろうとコボじろうも持ってくれ!」


 そうしてカウントは減ってゆき、残り時間3秒。

 俺たちはすべての報酬を持って、コラプス・メイオ砦の外へ転移された。


──


「お、おお……! 透……! 透! 無事だったか!」


 景色が緑に変わった瞬間、ダンベンジリを含め、デンベンアシだったかダンブンヒザだったか名前が定かではないホビット連中が一斉に飛びついてきた。


「ちょ、なんだよ急に離れろ暑苦しい男臭い良い匂い!」


 他が全員女子だったからか、十人ほどいる彼らの抱擁は俺とコボたろうとコボじろうに集中した。くっそ、離れてもまだ俺から良い匂いがするじゃねえか。


「透、嬢ちゃんがた、無理をさせてすまんかった! ギルドには連絡したんだが、コラプスってことで異世界勇者を集めるのに苦労してるみたいで、でもきっと、もうすぐ助けがくるからな! 透たちはそいつらにコラプスの情報を教えてやってくれ!」

「んあ? 助け?」


 俺たちは全員ぱんぱんの革袋を担ぎ、両手に荷物を持っている。そんな状態のまま、全員で顔を見合わせる。


 そのとき──


「あ……ああっ! コラプスが!」

「なんてこった……! コラプスが消えてゆくぞい!」


 階段から立ち上る紫は、青い空に溶けてゆく。

 そうして地下へ降りる階段も、周りの柵もうっすらと緑へと戻ってゆく。



 ああ、そうか。



 俺たち、コラプスを攻略したんだな。



 ──だから、消えてゆくんだ。



「あぁぁああぁ……なんてことだ……サンダンバラ……!」

「うおおおおぉおん……! サンダンバラァ……」


 そうして、ダンジョンなどはじめからなかったように元の景色に戻ると、しかしダンベンジリのオッサンたちはその場にうずくまり、まるで友をうしなったかのように慟哭し、嗚咽を漏らしている。


「……なにやってんだこいつら」

「あの……もしかして、私達がコラプスを攻略したのだと思っていないのではないかしら……」


 どうやら七々扇の言うとおりみたいだ。えーなにこれ。めっちゃ言ってやりたいけどめっちゃ言いにくい。


「ケージ持ってんのだれ?」

「……俺……」


 じゃああんたが言いなよ、といたずらっぽく口角を上げる高木。

 ひとつため息をつき、いやな予感がしながらも、


「あー。こ、これなーんだ」


 右手にも持った革袋を緑に降ろし、担いだ革袋からソウルケージのひとつをそっと取り出すと、ホビットたちは泣き顔を驚きに変え、再び俺へと一斉に群がった。


「透、こ、これは──」

「あーいや……ソウル有りって書いてあるソウルケージを6個手に入れたんだけど。こんなかにサンダンバラのオッサンがいるのか」


 鈴原が【紙生成LV1】スキルで緑の上に白紙を広げ、その上にソウルケージを並べていくと、ひとつだけうっすらと光っている水晶があった。


 たぶん、コボルトの意思と同じ。

 俺にはぽうっと灯っているだけにしか見えない光に、ホビットたちは目を細め、眩しさに手をかざす。



 そこから先はもみくちゃだった。


 涙と鼻水とよだれにまみれたホビットたちが一斉に俺を押し倒し、歓声と感謝の言葉を叫びながら──


「透! 透! 感謝する! 感謝するぞおおおおお!」

「お前さんがたは勇者さまじゃ! 間違いなく勇者さまじゃあ!」


 次々と胴上げされてゆく俺たち。    

 あ、よかった、サンダンバラのオッサンが入ったケージはあったんだな──


 ようやく思考がそこにたどり着くと同時に、頬にめちゃくちゃ情熱的なキスをされた。こう、ぶちゅーーーーっと。

 振り向くと涙を流すホビットのひとりだった。



 …………俺、はじめてだったのに。しくしく。

 頬からバラの香りがする。しくしく。

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