04-04-アンプリファイ・ダメージ

 結局ココナの店では

 【SPLV2】【俊敏LV1】【☆召喚MP節約LV1】

 【〇召喚疲労軽減LV1】【呪いLV1】【休憩LV1】

 の6スキルを8シルバー20カッパーで購入した。


 【呪い】の衝撃が強くて飛ばしてしまったが、【休憩】スキルは休憩時の回復効率を高めてくれるらしい。超便利だ。



「私びっくりしちゃった……。藤間くんも足柄山さんも、豪快なお金の使い方するんだね」


 アッシマーは【調合】【錬金】【加工】のメイン3スキルにLV4がえ、それぞれを2シルバー40カッパーで購入、【器用LV2】【SPLV2】を60カッパーずつで購入し、さらには【技力LV1】を50カッパーで習得──8シルバー90カッパーを支払った。


 生活費を除いた全財産は残り8シルバー90カッパー。……かと思いきや、


「なあココナ、ここってスキルブックの買い取りってやってるか?」


「やってるけど珍しいもの以外はギルドと同じくらいの二束三文にゃ。その代わり珍しいものはココニャちゃんのコレクション行きにゃから、高く買取るにゃ」


「珍しいの基準がわからねえ。……これはどうだ?」


 コボたろうの【コボルトボックス】に持たせていたスキルブックを二冊出す。そのうちの一冊にココナは目を輝かせ、


「【反復横跳びLV1】⁉ すごいにゃ! 見たことないにゃ! おにーちゃん、これはどこで?」


「なにその食いつき……。たしかエシュメルデ草原のマイナーコボルトからドロップした」


「にゃぐぐ……まさか近辺にこんな珍しいスキルブックを持ったコボルトがうろついてたにゃんて……。おにーちゃん、この【遠泳LV1】はそこまで珍しくもにゃいからギルドと同じ10カッパーで引き取るにゃ。でもこの【反復横跳びLV1】は10倍の1シルバーで買い取らせて欲しいにゃ!」


 そんなわけで、俺たちの所持金は10シルバーになった。それを持ってぞろぞろと武具屋へと足を向ける。


──────────

コモンアーマー 1シルバー

DEF0.30 HP3

 安物の素材でつくった簡素な鎧。

 まずはここから。

──────────


 茶色のすこしボロっちい革鎧を装備するコボたろう。


「……は? 服の上に鎧って着られるのか?」


「……? 着られるよ?」


 灯里はなに言ってんだこいつって思ってるだろうな。普通に考えたらおかしいこと言ってるもんな。

 どういうことかっていうと、服の上に鎧を重ね着できるのはおかしいってことなんだ。


 いや余計わからんよな。


 コモンシャツを装備すると能力値が装備分の[DEF0.20 HP2]上昇する。コモンアーマーだと[DEF0.30 HP3]上昇する。

 …………と、ここまではいいよな。


 俺はコモンシャツからコモンアーマーに着替え、コボたろうの能力が[DEF0.10 HP1]上昇するものだと思っていた。


 しかし、違ったのだ。

 コボたろうは当然のようにコモンシャツの上からコモンアーマーを装備し、コモンシャツとコモンアーマー両方の防御力、そしてHPが上昇していたのだ。


「藤間くんはゲーム脳ですねぇ……」


「ほっとけ」


 いや、だってさ。

 『たびびとのふく』と『かわのよろい』ってどっちかしか装備できないじゃん。


「でも言われてみりゃそうだよな。そりゃ両方装備できるよな。今までプレイしてきたゲームシステムに疑問を抱いたことすらなかったわ」


 ……とまあそんなわけで、コボたろうが鎧を装備した。……俺? 適性不足で装備できないって言われた。しょんぼり。



──────────

藤間透

LV1/5 ☆転生数0 EXP3/7

HP10/10 (+5) SP13/13 MP11/11

▼─────ユニークスキル

オリュンポス LV1

召喚魔法に大きな適性を得る。

▼─────アクティブスキル

損害増幅(アンプリファイ・ダメージ) 消費MP4

纏(まと)ったものが被(こうむ)るダメージを増幅する靄(もや)を発生させる。

▼─────パッシブスキル

──LV3──1Skill

採取

──LV2──2Skills (+1)

SP、器用

──LV1──17skills (+4)

☆召喚MP節約 (+1)、☆アイテムボックス、〇召喚疲労軽減、

〇採取SP節約、MP、技力、俊敏、召喚、

召喚時間、呪い、逃走、歩行、運搬、

休憩、草原採取、砂浜採取、砂採取、

▼─────装備

コモンステッキ ATK1.00

コモンシャツ DEF0.20 HP2

コモンパンツ DEF0.10 HP2

コモンブーツ DEF0.10 HP1

☆ワンポイント(☆召喚MP節約)

採取用手袋LV1

──────────


──────────

足柄山沁子

LV1/5 ☆転生数0 EXP3/7

HP7/7 (+5) SP19/19 MP8/8

▼─────ユニークスキル

アトリエ・ド・リュミエール LV1

全ての非戦闘スキルに適性を得る。

アイテムの使用に大きな適性を得る。

モンスターからの報酬が増加する。

▼─────パッシブスキル

──LV4──3Skills (+3)

調合、錬金、加工

──LV3── (-3)

──LV2──2Skills (+2)

SP、器用

──LV1──9Skills (-1)

○幸運、HP、MP、技力、防御、

逃走、歩行、採取、開錠

▼─────装備

コモンメイス ATK1.00

コモンシールド DEF0.30

コモンシャツ DEF0.20 HP2

コモンパンツ DEF0.10 HP2

コモンブーツ DEF0.10 HP1

採取用手袋LV1

──────────


──────────

コボたろう(マイナーコボルト)

消費MP7 状態:召喚中

残召喚可能時間:54分

──────────

LV1/5 ☆転生数0 EXP1/3

HP15/15 (+8) SP10/10 MP2/2

▼─────特性スキル

マイナーコボルトLV1

 全身に武具を装備することができる。

 槍の扱いに適性を得る。


コボルトボックスLV1

 容量5まで収納できるアイテムボックスを持つ。

▼─────パッシブスキル(スキルスロット1)

──LV1──4Skills

器用、槍、防御、【歩行】

▼─────装備

コボルトの槍 ATK1.00

コモンアーマー DEF0.30 HP3

コモンシャツ DEF0.20 HP2

コモンパンツ DEF0.10 HP2

コモンブーツ DEF0.10 HP1

採取用手袋LV1

▼─────その他補正

★オリュンポスLV1

 召喚モンスターのLVに応じたスキルブックがセットできる。

──────────


──


「炎の精霊よ、我が声に応えよ。我が力にいて顕現けんげんせよ。それは敵を穿うがつ火の一矢いっしなり


 灯里の抑揚を抑えた詠唱。しかし胸の前で水平に構えた杖の先に現れる魔法陣は、まるでストーリーの盛り上がりを彩るかように徐々に大きくなってゆく。


火矢ファイアボルト


 これまでより一回り大きくなった炎の矢が渦を巻いて飛んでゆく。灯里のマントも長い黒髪もたなびかせ、風をつんざき、草を乱暴に刈り取って、木々をだいだいに照らしながら、一体のコボルト──その生命を穿つため、剛直に飛んでゆく。


「ギャアアアアアアアアアッ!!」


 茶色いもやが頭上にまとわりついたコボルトは、絶叫を引き連れて吹っ飛んでゆく。

 現れたのは緑の光。残ったのは木箱と、草木の匂いに混じるシャンプーの爽やかな香り。


「がうっ!」

「ギャアッ!」


 灯里の逆方向ではコボたろうが相手の喉を見事貫き、緑の光に変えていた。


《戦闘終了》

《1経験値を獲得》

 

「か、かーーーーっ……! 助かった……!」

「はわわわわ……もう終わりかと思いましたぁ…………」


 手汗でびっちょり濡れたコモンステッキを落とし、その場に座り込む俺。

 灯里が仕留めきれなかった場合のために装備したコモンメイスとコモンシールドを取り落として膝をつくアッシマー。


「ふたりともだいじょうぶ?」

「がう?」


 アッシマーは灯里に、俺はコボたろうに差し出された手を握って起き上がる。なんとも情けない。


「それにしても一撃かよ……。灯里お前、めちゃくちゃ強かったんだな…………」


「そんなことないよ。藤間くんと足柄山さんから貰ったスキルブックのおかげ。それに藤間くんの援護があったから。あ、ありがとう」


──


 エペ草とライフハーブの採取に勤しんでいた俺たち四人は、


《コボたろうが【槍LV1】をセット》


 コボたろうがスキルをセットしたメッセージウィンドウでコボルトの出現に気づいた。


「がうがうっ!」


 コボたろうはその敵に向かいながら、顔だけで俺たちに振り返って吠える。まさか、と振り向いた先には50メートルほど向こうからこちらへ駆けてくるコボルトの姿があり、俺たちは二体から挟み撃ちにあったことを知る。


 コボたろうなら、一体のマイナーコボルトなんかに負けねえっ……!



損害増幅アンプリファイ・ダメージ……!」


 そうして俺は、灯里が構えたほうのコボルトに覚えたてのスキルを使用したのだ。


 ステッキを地面につけてスキル名を口にすると『靄が出ろ』と思ったあたりに、本当に茶色の霧のようなもやが出現し、コボルトの頭上にまとわりついた。

 

 アンプリファイ・ダメージは対象の受けるダメージを増幅させる呪い。灯里の強化された【火矢ファイアボルト】の威力と相まって、コボルトを一撃で木箱に変えた。



「正直助かった。灯里がいてくれてよかった」



 訪れた安穏あんのんにほっと胸を撫でおろしながら、べつになにをどうこうするつもりもなくそう呟くと、火魔法の余熱でも残っているのか、灯里の顔がぼっと真っ赤に燃えあがった。

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