03EX-星降る夜──ふたりだけの、二話だけのプロローグとエピローグ

03-20-Prologue──決意の朝に

 明けてアルカディアの朝、とまり木の翡翠亭──


 窓からは朝日が差し込んでいて、あさぼらけなんてとうに過ぎ去っているというのに、すこし肌寒く感じるのは、きっと──



「藤間くん藤間くんっ、さっそく行きましょう!」


「今日はさらにやる気マックスな……」


「調合も錬金も加工もぜーんぶ終わってますっ。さささ、行きましょう!」


 俺とコボたろうはアッシマーに背を押されるようにして宿を出る。


「わたし、採取がんばりますからっ! あと開錠も任せてくださいねっ! あとあと……」


 やる気満々なのはいつもなんだが、今日はやけに自己アピールをしてくる。

 そんなことしなくても……お前がめちゃくちゃ頑張ってることなんて、とっくに知ってるのに。


 アッシマーの行動がなんのつもりかは分からないが、頑張らなきゃならないのは俺のほうだった。



─────────




──捨てないで。




          どうか棄てないで──




──あいつらがしたみたいに。




            ゴミのように──




──俺、もっと頑張るから。




   わたし、もっとがんばりますから──




──だから、捨てないで。




      だからどうか、棄てないで──




──でも、俺のせいで

  お前がつらいのなら。




        でも、わたしのせいで

        あなたがつらいのなら──




──俺は。




              わたしは──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る