02-20-底辺が異世界で成り上がり無双するまで

 アッシマーとリディア、そして初召喚したマイナーコボルト──コボたろうと一緒にスキルブックショップを訪れた俺たちは『オルフェの白い砂』を2シルバーでココナに売却し、しかしその2シルバーは今まさになくなろうとしていた。


──────────

【召】コボたろう (マイナーコボルト)

スキルスロット→1

【主】藤間透 2シルバー

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▼─────ステータス

HPLV1 30カッパー

器用LV1 30カッパー


▼─────戦闘

槍LV1 30カッパー

防御LV1 30カッパー


▼─────行動

歩行LV1 30カッパー

警戒LV1 30カッパー

気配LV1 50カッパー


▼─────その他

騎士道LV1 50カッパー


──────────


「なあココナ。召喚モンスターにスキルをセットする、ってどういうことなんだ? このスキルスロットってのが関係してるのか?」


「召喚モンスターは普通、スキルを習得できないにゃ。でも召喚者がそういうスキルを持っている場合は習得できて、召喚モンスターにスキルをセットすることでスキルの効果が表れるにゃ」


「セットと習得はどう違うんだ?」


「スキルブックを購入して習得するところまでは同じにゃ。おにーちゃんたちはそれだけで全部のスキルの効果が表れるけど、召喚モンスターはそうはいかないにゃ。習得スキルをセットすることで初めて効果が発揮するにゃ。コボたろうのスキルスロットはいまのところひとつにゃから、LV1のスキルブックをふたつ購入しても、ふたつ同時に効果を発揮できないにゃ」


「ええと……じゃあ【槍LV1】と【防御LV1】を習得しても、どっちかしか使えないってことか?」


「そうにゃけど、召喚士は召喚モンスターのスキルスロットを好きなタイミングで瞬時に入れ替えられるにゃ。だからそのふたつを習得しておいて、基本は【槍LV1】、コボたろうが大きな攻撃を受けてしまいそうなら【防御LV1】に切り替えてあげればある種両方のスキルを使えることになるにゃん」


 んあー……。結構忙しそうだなおい。リディアに釘をさされたけど、慣れてきたらコボたろうとふたりがかりで戦闘しようと思っていたんだが、そんな余裕はないかもしれん。


「ちなみにコボたろうは自分の意思でスキルを切り替えられるのか?」


「基本的にはできない「がうっ!」にゃ……ん?」


 ココナの否定をコボたろうが割り込んで肯定した。

 ココナもリディアも驚いている。


「コボたろう、できるのか?」

「がうっ!」


「できるみたいなんだけど……」


 顔を見合わせるココナとリディア。


「おにーちゃん、コボたろうを召喚してから何年経つにゃ?」


「三十分前にはじめて召喚した」


「コボたろうにはすでに自我がある。だから自分の意思でスキルをきりかえられる……ほんとうにふしぎ」


 またも首を傾げるリディア。ココナは首を傾げるだけでは満足できないようで、疑問を前のめりでぶつけてくる。


「いやいやいやいやおかしいにゃん。召喚モンスターは最初赤ん坊みたいなものにゃ。ご主人さまへの忠誠を植えつけられた乳児にゃ。普通、何ヶ月も何年もかけて心を育んでいくもので、またそれを支えることが良い召喚者の務めにゃ。それなのになんでコボたろうにはもう心があるにゃ?」


「んなこと言われてもな。……いいんだよ、こっちのほうが。なあ、コボたろう」

「がうっ!」


 アルカディアには、与えられるユニークスキルというものがある。


 聞けば祁答院のように剣の扱いが得意になる【エクスカリバー】、灯里のように魔法が得意になる【黄昏の賢者トワイライト・フォース】。アッシマーの【アトリエ・ド・リュミエール】。


 同じように俺に与えられた【オリュンポス】が召喚モンスターには無いはずの心を与えるものだったのなら。


 俺は、与えられるだけの人間から、何かを与えられる人間になれるじゃないか。


 それが与えられたユニークスキルの力だというのはしゃくだが、それだけじゃない。


 俺はこれからコボたろうと育んでゆく。生活を、心を育んでゆく。与えて、与えられて、育んでゆく。


「コボたろう」

「がう?」


 それはチートでもユニークスキルでもなく、俺の……藤間透の意志だ。


「強く、なろうな」

「がうっ!」



 強くなる。



 底辺が異世界で成り上がり無双するまで。



 遥か遠く長い道のり。



 俺は今日、その第一歩を、たしかに踏み出した。



(了)

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