第3話 放課後で高笑い

 顔面から盛大に転んだ高原君は念のため保健教諭の検査のと遅めの放課後を迎えていた、帰宅部の高原君は帰る為カバンを取りに教室へと向かう途中で校舎裏にて男女2人組が向き合っているのを見かけた。


(あれは同じクラスの細川さんと…先輩かな?見た事無い顔だ。ふむふむ放課後の校舎裏なるほど!)


 結構下世話な話に意外と興味ある高原君は野次馬をするべく近くの茂みに身を隠した、高笑いさえ無ければ空気キャラとしてひっそり生きていたであろう彼の存在感は2人にバレる事なく聞き耳を立てる事に成功した。


「付き合うの試しでもいいし、なんなら友達からでも構わないからさぁ今度一緒にどっか行こうよ。不安なら俺の仲いいメンツ連れてくるからそっちも友達連れてきてワイワイやるでもこっちはオッケーだしさぁ、とりあえずライーンだけでも今日交換しない?」


 先輩らしき人がグイグイ迫るが一方の細川さんは苦笑いを浮かべながらも言葉を返せずにおり、高原君の目からは上手くいっていないようにしか見えなかった。


(なんだあの先輩、どう見たって細川さん迷惑してるのに一方的に。ただ単に女子と遊びたいだけだろアレ)


「あの、や、やめてくだ…」


 細川さんの拒絶の言葉を無視し先輩が強引に距離を詰めていく、そして細川さんに手を伸ばし触れそうになったタイミングで高原君は思わず飛び出した。


「ハーッハッハッハ、ハーハッハッハ。嫌がる女性に無理矢理迫るなど片腹痛いな、男の程度が知れるというものだ。」


 まるで見計らったかのように本日3回目の高笑いが響き渡る、表情はドヤ顔だか冷や汗が出ている高原君に2人の困惑した顔が向けられる。


「な、なんだお前⁉︎」


「通りすがりのクラスメイトだ、細川さんには指1本触れさせんぞ」

 

(あー、どうするんだコレ!近くで見ると先輩ガタイも身長もハンパねえぞ、逃げようにも細川さん置いていけないし…)


 最悪ボコられてる間に逃げてもらおうか高原君が考えている間に奥の方から何人もの人がこちらに向かって来るのが見えた、どうやら死角にゾロゾロ居たらしい。


(どう考えても先輩の仲間だよな、ひーボコボコにされる!)


 高原君が覚悟を決めると先輩の仲間の1人が大声を張り上げた。


「はーい、カットカット! 一旦止めて、いやー予想外の展開だねコレ、ハハハ」


「はへ?」


「でも面白いからこの展開で行こうか! インスピレーション湧いてきたしワクワクしてきたぞ」


「ほえ?」


 修羅場を覚悟していた高原君は思わぬ状況に困惑していると先程まで細川さんに迫っていた先輩が声をかけてきた。


「あー勘違いさせちゃってごめんねー、これ映画研究部が部活動としての撮影でね、細川さんに何かしようとしたわけじゃないんだ」


「え〜、つまり私は…」


「まぁ、ぶっちゃけ邪魔した形になるかな…」


「あの、その、え〜、すみませんでした!!」


 思わず頭を下げる高原君、彼が心の中で涙したのは言うまでもない事である。


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