第6話

地面が揺れている中、

カシャンとなにかが開く音が聞こえた。


私は横向きに、あいはうつ伏せに倒れている。


あいが顔をあげ、目を大きく開く。

私の袖を掴み、低い声で「冬木」と呼ぶ。


私は、あいが見ている方向に、ゆっくりと頭を動かす。

そして、呆気にとらわれ、ぽかんとする。


目の前には、森ではなく、高いビルが突然現れていた。

窓が多いせいで、太陽の日差しの反射で眩しい。


私もあいも立ち上がる。


ビルが高すぎて見にくいけど、屋根についている大きな文字が確かに。。。


「ヒーロー事務所だ!冬木、詐欺じゃなかった!」

あいは、私の両方の肩を両手で触れる。

キラキラと輝いた大きな目で、私を見つめる。

「私、夢を叶えるのだ!」

と、嬉しそうに言う。


普通は、友達の幸運は、一緒に喜ぶものだ。


それなのに「よかったね」と言いながら、

残念とか試験に落ちればいいのにとか思ってる自分がいる。



私は、友達失格だ。



あいは、このままヒーローになったら、死ぬかもしれない。

それを考えると、怖い。


すると突然、私達の横に、砂を吹き飛ばしながら何かが出てきた。


びっくりしすぎて、私とあいが跳ねた。


出てきた何かをよく見ると「看板?」みたいなものだった。


安心して、そこにあった文字に目を通す。


「「こんにちは!」」


と書いてある。意味不明なメッセージにあいと私が目を合わせる。


あいが、看板の方を見て、頭を傾ける。

「こんにちは?」


と、その瞬間、看板の文字が変わった。

これ、看板ロボット的なものかな。

「「オレは、ローベルトという。このヒーロー事務所の社長だぜ。」」


「えー!?」

私とあいが同じタイミングで言う。

だって、ロボットが社長と言ってるだよ。


再び文字が、変わる。


「「ふふふ。こんな反応したお前たちきっと、オレがロボットって思ってるでしょう?」」


その通りだ。もしかすると、心読める?


「「で、オレは心なんか読めへんだぞ笑」」

本当に?


「「これがオレの超能力だぜ」」

「えー?ロボットになることですか?」

あいが興味をもったみたい。

「「違うってば! ものに変身する超能力だぞ。」」

「そういうことですね!」

「「(ため息)、とりあえず話題に入ろう!」」

って書いてあった後しばらくの沈黙が続く。


「「だーかーら、返事!」」

「はい!」

「あ、はい」

「「名前と超能力言え」」

「はい!私、川田あいです!

超能力はものを浮かせることです!」

「「はい、オッケー!あの青色のドアから入って、そこ、案内する人がいるから、言うこと聞いたってや」」


「はい!」

あいは、荷物を整って、私の前に立つ。

「冬木、私、合格してくるから、待ってて!」

「あ、うん。気をつけてや。」

「うん。」

真剣な顔で、青色のドアから入る。


気がついたら、私と看板ロボットしかいなくて、気まずさの空気が溢れる。


「「で、お前は?」」

という文字で、私がびくっとする。


なんて、言えばいい。


まあ、こうなったら、あれを言うしかない。


私は、体を看板に向ける。

そして、気まずい沈黙を破るために、私は口を開く。


こうなったら、胸を張って言う。







「私は。。。」







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