賭け試合

「へっ……馬鹿な野郎だぜ」


「ああ……リーダーに勝てるわけがないっていうのによ」


 冒険者パーティーの連中は俺を嘲ってくる。


「冥途の土産に自己紹介くらいしてやる。俺の名はオリバー。このBランク冒険者パーティー『疾風迅雷』のリーダーだ」


 オリバーは両手にナイフを構えた。


「ステータスオープン」


 俺はオリバーのステータスを見る。


 【オリバー】


天職:暗殺者


Lv :30


HP :200/200


MP :50/50


攻撃力:100


防御力:100


魔法力:50


素早さ:150


【装備】


〈暗殺用ナイフ〉※攻撃力+20 敏捷性+20


〈ミスリル製鎖帷子〉※防御力+20 敏捷性+10


【職業固有スキル】


『暗殺』


【通常スキル】


『敏捷性UP大』


 あのオリバーという、リーダー格の男の天職は暗殺者(アサシン)のようだ。暗殺者は防御力は高くないが、代わりとしては素早さが高く、あまり攻撃が当たらない職業だ。


 いよいよ……俺も何か、戦闘用のスキルを習得する必要性があった。今までは雑魚モンスターしか相手にしてこなかったが……その雑魚モンスターにすら苦戦し、窮地をカレンに救って貰ったのは情けない話ではある。


 ともかく。相手は未だ闘った事のない強敵だ。LVも圧倒的に自分より高い。決して侮れない相手であった。


「へっ……竜もいない竜騎士が、この俺の相手になるわけねぇだろうが。確かに、最初に会った時よりは幾分か、レベルアップしているみてーだけどよ。そんなもんで、俺とてめーの差が埋まるわけねーだろ」


 相手は俺を完全に舐めていた。だが、俺には勝機があった。相手が俺を完全に舐めているという事もあったし、俺には古代書物の知識があった。知識は力だ。


 相手よりもLVが相当に低くても、知識があれば対処できる。形勢を逆転する事ができるのだ。


 例えば、暗殺者は素早さは確かに高いが、魔法防御力は低い。こういった場合、魔法攻撃の効き目が良かったりする。相手の弱点を突くのは作戦の基本だ。


「お兄ちゃん! がんばって! あんな嫌味な奴、コテンパンにしちゃって!」

 

 カレンが俺を応援していた。


「ああ……わかってる。言われなくてもそのつもりだ」


 俺は〈オリハルコンの剣〉を構えた。


「それじゃあ、始めるか。誰か、合図をしてくれ」


「うっす」


 手下の男が、爆弾のようなものを投げる。魔道具(アーティファクト)だろう。


 パン!


 破裂音が響いた。試合開始の合図だ。


「さあ、試合開始だ! やっちまうぜ! キッヒッヒ!」


 【暗殺者】オリバーが俺に襲い掛かってくる。


 来る。俺は相手の攻撃に備えた。


「ひゃっはぁ!」


「くっ!」


 鋭く、そして素早い攻撃が俺に襲い掛かってくる。俺はその攻撃を何とか受け止めた。


 キィン!


 ナイフと剣がぶつかり合い、けたたましい音を奏でる。


「へっ! 随分と無駄にあがくじぇねぇか! だったらこいつはどうだ!」


 オリバーは暗殺者だ。勝利の為なら手段を選ばない。だから、利用できるものなら何でも利用する。人の寝首を平気でかくような職業だ。楽に勝つ為なら、何でもやってくる。


「うっ!」


 ザサァ! オリバーは地面を蹴り上げた。砂だ。オリバーは砂で目つぶしをしてきたのだ。


「な、なによそれっ! 汚いわよ!」


 カレンは非難した。


「へっ! 馬鹿な事を言ってるんじゃねぇ!」


「喧嘩っていうのはな、勝てばいいのよ、勝てば」


 取り巻き達が嘲ってきた。


「それじゃあ、終わりにさせてもらうぜっ! てめーを殺して、それでお前達の装備を引っぺがしてやる」


 オリバーは俺を見下し、そう、告げてきた。


「てめーの妹は俺達が可愛がってやるぜっ! きっひっひっ!」


「ああ……たっぷりと面倒見てやるから、心配しないで、あの世にいけよっ。くっく」


 手下達がそう、嘲ってくる。


「ふ、ふざけるなっ!」


「あばよっ!」


 キィン! 視界を奪われた俺だが、何とか勘で攻撃を防いだ。というよりは、剣がナイフに上手い事当たってくれたような、そんな感じであった。


「ちっ! しぶとい奴だぜっ!」


 オリバーは舌打ちをする。


 俺は逆転のチャンスを伺っていた。


 必ず、勝機はある。必ず。


 俺は必死に耐え、その勝機を待ち続けていた。


 

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