冒険者パーティーとの望んでいない再会

「ん? ……てめぇは」


 冒険者ギルドへ向かう途中だった。俺はあまり会いたくない連中と再会する。そう、俺が冒険者として登録する時に因縁をつけられた冒険者パーティー『疾風迅雷』の連中だ。


「……ん? 誰、誰? お兄ちゃん、知り合い?」


 事情を知らないカレンは無邪気に聞いてくる。


「知り合いといえば知り合いだが……出来れば会いたくなかった連中だ」


「てめぇは、あの時の【竜騎士】じゃねぇか!」


「なんだなんだ? 竜は捕まえられないのに、女は捕まえられたのか?」


 わかりやすく、こっちを馬鹿にしてくる。


「お嬢ちゃん、そんな弱い奴となんで一緒にいるんだよ? そんな奴と一緒にいないでさ、俺達と一緒にクエストに行こうぜ」


「そうそう……それで、クエストが終わった後はホテルでしっぽりとよぉ……ぐふふっ」


 カレンを見た冒険者達は、飢えた獣のように、涎を垂らし始めた。


「ふ、ふざけないでよっ! 誰があんた達のパーティーなんかに! わ、私はお兄ちゃんと一緒にいるのっ!」


 カレンは俺にしがいついて「べー!」と舌を出した。


「おいおい……つれねぇなぁ」


「って、見て見ろよ! こいつ等の装備よっ! オリハルコン製だぜっ!」


「マ、マジかよ!」


 次に、冒険者パーティー達は俺達の装備を見て、血相を変えた。


「なんで、こんなEランクの冒険者がオリハルコン製の装備なんて持ってるんだよ」


「ふざけんな! Аランクのパーティーでもなきゃ、そんな上等な装備は持ってないぜっ! Bランクに上がった俺達だって、そんな上等な装備持ってないっていうのによっ!」


 彼等の装備は基本的に魔法金属(ミスリル)製だ。C~Bランクの冒険者にとってはそれが相応だ。

 それよりも低いEランクの冒険者パーティーである俺達がオリハルコン製の装備をしているのが異常なのだ。А~Sランクの冒険者パーティーでやっと相応なのだ。彼等が不相応だと判断し、目の敵にするのも無理はない。

 

 わかりやすく嫉妬しているのだ。


「どうやってそんな上等な装備を手に入れた?」


「……教える必要性はない。誰が教えるか」


 俺は答える。


「まあいい……どうやって手に入れたかはともかく。お前達にはその装備は勿体ねぇ。命は助けてやるから、装備は置いていけよ」


「どこが冒険者よ! まるっきり盗賊(シーフ)じゃないっ! あんた達なんて、とんだ悪党よっ!」


「……事を荒立てるな」


「リーダー……」


『疾風迅雷』のリーダー格の男がメンバーを制する。既に事が荒立っていると思うのは俺だけだろうか?


「坊主……勝負といこうじゃないか?」


「勝負?」


「俺とタイマンだ。俺が勝ったら、お前達の装備を貰う」


「俺が勝ったら?」


 賭けというものはつり合いが取れているから成立するものだ。オリハルコンの装備をかけるに値するものを、彼等は持っているというのだろうか。


「……こいつをやろう」


 リーダー格の男は首筋から何かを取り出した。


「あれは……」


 古代書物の知識と、すぐに合致がついた。


「こいつはお前さんが喉から手が出る程欲しい、魔道具(アーティファクト)じゃねぇか? こいつは『聖竜の涙』っていう、魔道具(アーティファクト)だ。非売品で、簡単に手に入れる事は出来ない、レアアイテムだ」


『聖竜の涙』聖竜(ホーリードラゴン)が流した涙が結晶化したものだ。それをイヤリング風に加工した魔道具(アーティファクト)だろう。竜が近くに来た時、共鳴し、竜の存在を告げてくれる。そういう、竜に対する探知機のような役割を果たしてくれる。


「……どうする? 賭けて勝負するか? それとも逃げるか?」


 あれが便利なものだ。これから竜を探す上で有用な魔道具(アーティファクト)。是が非でも手に入れたい。


「ふざけるんじゃないわよっ! お兄ちゃんが逃げるわけないじゃないっ!」


「ああ……その通りだ、カレン。受けてたってやろうじゃないか」


 あれは欲しい。例え、リスクを背負ってでも。


「へっ! 竜の一匹も従えてねぇ竜騎士が! 偉そうに、リーダーの勝負を受けやがって!」


「後悔するぜっ! Eランクの冒険者風情が! Bランクの冒険者であるリーダーに勝てるわけがねぇだろうが!」


『疾風迅雷』の連中は俺を罵ってくる。仲間であるリーダーの勝利を信じて疑っていない様子だ。俺の勝ち目は万が一にもない、そう思っている事であろう。


 俺達は、突如、賭け試合をする事になった。


 こうして闘いの火蓋が切られる事となる。

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