第9話



新年が幕を開けて1週間が経過した。今日は久しぶりに4人で集まって冬休みの課題を倒す会が開かれる予定だ。もちろん場所は海斗のお家。


「お邪魔しま〜す……。」

最初に海斗の家にやってきたのは夏樹だった。

「うっす夏樹! いつも通り適当にすわっといて。飲み物とってくるわ」

そう言ってキッチンへと向かう海斗に夏樹は「ありがと」と短く一言礼を言って定位置となっている場所にすわった。


それから10分ほどして4人全員が集合し、早速勉強会がスタートしたのだが……。


「夏樹〜助けて……これ分かんない」

ものの30分もしないうちにひ氷緒が音を上げ出した。


「どの問題?」

「この例題70の⑵」

その問題は数Ⅰのひとつの難関である二次関数の最大最小だった。一度やり方をマスターすればできるため夏樹は特製プリントを作成して氷緒に渡す。

「たとえばこれだと下に凸なグラフの最大値でしょ? だから真ん中を基準にしてそれより軸が左にあるか右にあるか真ん中にあるかで場合分けするんだよ。」

「なるほど……! わかったよありがとう夏樹!」

「いえいえ。でもこれ1学期の内容だからね……。頑張ろう。」

「うう……面目ない……」


こんな調子でどんどん進み15時を回ったところで勉強会はお開きとなった。ただこのまま帰るのもったいないということでみんなでゲームをしたり駄弁ったりして時間を過ごしていた。


「そういえばなんだけどさ、氷緒は正直夏樹が自分のこと好きだって気づいてたのか?」

急に恋バナに話を変えたのは海斗だった。だが正直気になる夏樹は止めに入らずちゃっかりと聞こうとしていた。


「うん……。そうなのかなぁって思ってはいたけど本当に好きでいてくれたとは思わなかった。」

(僕も同じだな……)

「だから正直夏樹が告白してきてくれた時嬉しくてさ、後パニックになっちゃった。」

えへへ……と可愛らしくはにかむ氷緒に夏樹は見惚れていたがそれに海斗が気づかないはずもなく「で? なつはいつから氷緒のことが好きなんだ?」と爆弾を投下した。


「それ答えないとダメ……? 結構恥ずかしいんだけど」

「答えて!」

食い気味に言ってきたのは氷緒だった。氷緒に頼まれては断れまいと夏樹は口を開いた。

「結構前だよ。それこそ5月か6月くらい。」

「へ、へ〜」

「ちなみになんで好きになったんだ?」

「っ! そ、それは……」

言い淀んだ夏樹だが氷緒が目をキラキラさせて待っているのを見て覚悟を決めた。

「初めは単純に気が合う女子だったんだけどたまに帰りとかにバラバラになるとなんか寂しいしもっとお話ししたいって思うようになってた。」

「っ……! これなかなか恥ずかしいね……」

「だから言いたくなかったんだよぉ」


からかうつもりで質問をした海斗だったが新米カップルのあまりの初々しさに返り討ちにされてしまうという悲惨な結果に終わってしまった。




そして海斗の家からの帰り道夏樹は重大な事件に気づいてしまった。


「あ……氷緒がなんで僕のこと好きなのか聞いてない……」


夏樹はこの世の終わりのような顔で家に帰るのだった。

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