「あっ、早坂君たちだ」


 土方塔子がなにを見ているのだろうと思わず視線を追いかけた大曲は、その姿を確認するなり思わず声を出してしまった。


すると、早坂アキラが大きく手を降っており、その肩にのっていたチューブと名付けられたAIロボットがピョンピョンと跳ねながらこちらへのほうへと近づいてくる。


そこあとをアキラが笑顔を浮かべながら続いており、その後方には倉崎樹と枇々木拓海の姿があった。


「大曲たちも待機かい?」


アキラがいつものように人懐っこそうな口調で尋ねると、いつのまにかアキラの肩に戻ったチューブが「タイキ? タイキ?」と繰り返している。


「そうだよ。でも、さっき放送あってた通り、そろそろ出る準備しないといけないみたいだよ」


「なんか零の起動させとけとかいっていたねえ」


アキラはおどけたようにいいながら、視線を拓海のほうへむける。拓海は舌打ちしながらそっぽを向く。


「枇々木……」


 塔子は拓海のほうへと近づく。拓海は一瞥しただけでまったく別の方向を見ていた。その横顔をしばらく見ていたかと思うと、塔子は再び口を開く。


「枇々木。ここがどこだかわかる?」



「……ああ……」


ここがどこか?

その言葉が意味することなど拓海にはすぐに見当がつく。


「団長はあきらめていないわ。だから、ここにきたの。わかってる?」


その言葉に拓海が俯く。


「もしかして、あの事故?」


しばらくの沈黙ののちに樹が口を開いた。


「あの事故って数ヵ月前にこのあまりであった座礁事故のことか?」


日高が続ける。


その事故はトリプルエスが結成して以来の五本の指に入るほどの最悪な結果に終わった事故として新人の間にも知られていた。


「その事故と今回の任務って関係あるのですか?」


日高がさらに尋ねる。


「それは……」


「見つけたいんじゃねえのかい」


塔子の代わりにアキラが口を開く。一同の視線がアキラに注がれた。


「その行方不明の座礁船をみつけて、事故の真相をはっきりさせたいってのが団長の目的ってところかなあ」


そうだろうと塔子に確認する。


「私にもはっきりしたこといえないけど、その可能性はあると思うわ。団長もあの事故のこと気にしていたもの」


 塔子は相変わらず別の方向を見ている拓海に視線を送った。


「やっぱりそうか~。団長、何度もここに足を運んでいたみたいだしい」


「どうしてわかるの?」


「わかりますよ。ちょっと調べればね」


そういって、アキラはいたずらな笑顔を浮かべたり


「そうよ。団長はどうしても見つけたいんだと思う。あの事故は団長にとってはシコリだし、なによりも元神風師団としてのプライドが許さないのよ」


 その言葉でアキラは、虎太郎のことを思い出した。


(親父がいた師団ということか)


 納得いくまでやらないと気が済まないというのはわからなくもない。虎太郎はまさしくそんな男だった。


 とくに船の整備に関しては余念がない。いつも、底的に仕込んできた。そのおかげでたいていの整備は完璧にできる自信はある。


 そんなこというと虎太郎は絶対に「てめえが完璧にこなせるはずねえ。そんなの俺をこえてからいえ。このバカ弟子」と罵るに決まっている。確かに超えていないことは熟知している。


「けど、本当にどうやって見つけるのかなあ。なにか、その船に関する資料とかないんですか?」


「資料といっても設計図ぐらいよ。何の役にもたたないわ」


「設計図? それだ‼」


 アキラは声をあげたかと思うと突然きた方向へ戻り始めた。


「アキラくん。どこいくんだよ。待機しないと……」


「おい、こら」


 樹と拓海の静止も聞かず、ドッグから出ていった。


「ちっ、勝手な行動とりやがって……」


 拓海と樹は彼の後を追う。


「ああ、いっちゃった」


「止めなくてよかったんですか?」


「大丈夫よ」


「どうして?」


「さっき通知が入ったわ。私たちと枇々木たちはもうしばらく待機よ」


「そうなんですか?」


「でも、なぜ待機?」


「念のため」



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