天河三年春


 宇宙空間はいまに多くの事件事故が勃発していた。


そのために彼らはフル回転で任務にいそしんでいる。


 宇宙は拾い。無限に広がる中でその星は偉大な宇宙の中では豆粒にも満たない。


 その中の人間というものはどれほどにちっぽけなものなのか。


 そんなことを誰かが論じていたような気もするのだが、早坂アキラにとってはどうでもいいことだ。


 そんなことよりもいま自分が抱えている問題をどうにかすることで精一杯だ。


「うーん」

 

 アキラは自分の乗ってきた小型スペースシップの操縦席に座り腕を組んだままでモニターとにらめっこをしていた。


「さてさて、どうしたものかねえ」


 モニターにはさっきからエラーの文字が点滅し、損傷している箇所を英語で表示している。


 単純に損傷個所を修理すればいいのだが、なにせここは宇宙空間だ。


「まさか、デブリにぶつけられるとはねえ。俺も油断したぜ」


 彼がいうように彼を載せたスペースシップは地球を飛び立ち大気圏を抜けてきたところでデブリに出くわしてしまったのだ。


 もちろんデブリ接近の警戒音はなっていたはずなのだが、大気圏を抜けて荒れかえったときに地球の美しさに思わず見とれてしまったことにより、警戒音に気づかなかったのだ。


 それに気づいたときには遅かった。


 回避行動をとる前にデブリが見事に激突してきたのだ。

 

 たちまちエンジンが強制停止し、dangerの文字がモニターに表示された。


「あららあ。本当に油断したなあ」

 

 それなのにアキラは落ち着いている。


 外壁に損傷が出ただけで、いますぐにシップが宇宙の藻屑になるような状態ではないことを把握していたためだ。


 だからといって、この状態をずっと続けていくわけにはいかない。


 アキラはしばらく考えたのちに、「キューブ、出番だ」といつも自分のそばにいるAIに話しかけた。


「アイアイサー。なにすればいい?」


 振り返ると手に乗るほどのサイズの猫耳をした丸い形のAIがアキラの頭上をグルグルと回る。


「どこか船を固定できそうなところ探してくれないかい」


「アイアイサー」


 すると、チューブと呼ばれたAIはデッキから飛び出すとそのままハッチを開けて宇宙空間に飛び出す。そのままシップを何度かグルグルと回ったのちにそのつぶらな二つ目が「ピコン」という言葉ともに輝く。


「見つけた。見つけた。アキラ」


 そういいながら、船の中へと戻ってきたチューブは再びアキラの前を何度か回る。


「見つけたか? どこだ?」

 

 アキラが尋ねると、チューブの眼から閃光が飛び出し、壁にぶつかる。同時に。船の外の風景が映像として映し出された。


 その光景の中に確かに船らしきものが見える。


「あそこかい?」


「そうだよ。そうだよ」


 画像を拡大する。


 確かに船だ。


 しかも大型船が廃棄された状態で漂っているようだった。

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