学園に来たぞ!

「ここが学園かぁ…。でかいな」

俺とリンは学園のそばの街へ来た。

学園が望めるのだが…めちゃくちゃ広い。何なら城よりでかい。

リンはあまりの威容さに圧倒されて声が出ていない。


ニウム学園は3年制で、魔法学科、戦闘学科、商業学科、通常学科の4つのクラスがある。

それぞれの学科に通称があり、魔法学科は紫、戦闘学科は赤、商業学科は緑、通常学科は黄、と呼ばれている。

というか、通称の方が有名なんだよね。

難易度は、そうだなあ…偏差値65くらいって言えばわかるだろうか。そこそこ高い。

ノー勉で入れるほど簡単な学校ではないはずなのだが、俺とリンは母さんに放り出されていきなり「入れ」なんて言われている。

まあ、リンは平気だろう。俺より頭いいから。多分。


俺たちは学園の門まで行って、ベルを鳴らした。

カランカランと大きめの音がしたが、人が来る気配がない。

「すみませーん」

リンが声を張ったが出てこない。


俺はリンに声をかけた。

「どうしようか」

「先に家具を買いますか?」

「そうしようか」

俺たちは門の前から立ち去ろうとした…


「見学の方ですか?」

不意に後ろから声をかけられ、俺とリンは鳥肌が立った。

ばっと振り返ると、眼鏡をかけ、赤毛を2本のみつあみにしている女性が出てきた。

「はい、見学希望です」

俺はその人に言った。リンは恥ずかしがって俺の後ろに隠れている。

「わかりました」

ギギィッという音がして、門が開いた。

「では、参りましょう。先に事務室に寄ってからの見学となります」


俺たちは、静かで長い長い長い廊下を歩いていた。

天井が高い。装飾が豪華。柱がめっちゃ太い。

城に帰ってきたようだ…。


「もしかして、今年受験なさるのですか?」

突然、前を歩いていた女性が声をかけてきた。

「できれば。勉強が追い付いていなくてちょっと危ういですが…」

俺は慌てて答えた。変な答えじゃなかっただろうか…

女性は俺ににっこり笑いかけた。

「大丈夫ですよ!仮に今年落ちたとしても、来年も再来年も受験はできます!」

そうなのか!俺はてっきり、今年落ちたらもうだめなのかと思ってたよ…


「はい、事務室に着きました。私はここで待っているので、二人はいろいろ手続きを済ませてきてくださいな」

「わかりました、ありがとうございました」

「あ、ありがとうございました」


事務室の扉を三回ノックし、俺たちは部屋に入った。

「失礼します」

「誰だ?君たちは。受験の受付ならもう終わってるぞ?」

いかつい男性が俺たちを一睨みしていった。めっちゃ怖い…大丈夫か、俺?殺されないか?

俺は精いっぱい恐怖を抑え込み、笑っていった。

「いえ、見学の手続きをしてもらいたくて」

「ふーん、まあそれならいいだろう。じゃあ、名前を名乗れ」

命令口調!怖い!


「ニーケ・ラドニクス・アイテルです」

「ニーケ様のメイド、リン・コンペニ・アプレイズです」

俺たちは精一杯笑っていった。

「そうか、ニーケ・ラドニクス・アイテr…もしかして、第三王子か?」

あ、ばれた。まあ、しょうがないか。

「はい、そうです」

俺は素直に頷いた。


不意に男性が俺の手を取った。

「よく来た!王都の天才!」

はあ?天才?

「女王様から成績と願書をもらっている!こんな難しい問題で、あれほどの点数を取れるとは!」

む、難しい問題?

俺は大臣に

「初歩の初歩です。なぜこんな問題も解けないのですか?」

なんていびられてたのに!


リンが俺に顔を近づけて、耳打ちした。

「ニーケ様ニーケ様、あなたはバカってことにされてますが、実際解いている問題は学習が進んでいる、7歳上のお兄様と全く同じか、それ以上の難易度の問題。解けなくて当たり前なんですよ」

そ、そうだったのか!じゃあ、あのじじi…失礼しました、大臣が俺に「初歩だ」って言ってたのは…

「ニーケ様をいじめるためですかね」

リンが俺の心を読んだように答えた。

あんのくそ野郎!


「君の成績なら、試験は受けなくても大丈夫だ!ついでに、メイドのリンさんも受けなくても平気な成績だぞ!」

男性は、俺の手を持ったままぶんぶん手を振っている。ちょっと痛いレベルだ。

「わ、わかりました。あの、見学行ってもいいですか…?」

「おお!失礼した!行ってきていいよ!」

男性は今気づいたかのようにパッと俺の手を放し、大きく頷いた。

「ちなみに、俺はドレクター、学園長だ!これからよろしくな!」

学園長、ドレクタ―はにっと笑ってそう言った。

「では、失礼しました」

「おう、またな!」

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