「ニウム学園に進学することが決定いたしました」


「は?ニーケ、銀が作れるの!?」

姉さんは素っ頓狂な声をだした。

「うん。もっと成長すれば金も作れるかもね」

「はあ、錬金術師ってすごいのね…」

姉さんは感心している。俺もそう思う。

だからこそ、だ。俺みたいな人が錬金術師になってよかったのか…?


「二、ニーケ様。この銀をあなたが作ったのですか…?」

後ろから声がした。いつの間にかリンが立っていた。銀を凝視している。

「え、うん。錬金術ってすごいんだね」

俺はさらっと言った。


リンは目をまんまるくして俺を見た。

「この銀、超高品質ではないですか!」

リンは叫んだ。


「「え、そうなの?」」

あ、はもった。

「そうですよ! 万が一にも売ったらいいんじゃないかとか考えたらだめですよ!」

エリノア姉さんはちょっと残念そうだ。売ってお金に変えたかったのだろうな…


「ねえ、リンちゃん。この銀、売ったらどのくらいのお金になるの?」

姉さんが聞いた。俺も気になる!

「そうですね…。結構大きいですし、何より超高級品。うーん、それを考慮すると…

ざっと100億ルドにはなりますね」

リンはさらりと言った。


いや待て、100億!?さらりと言うことじゃないだろそれこそ!

「ひゃ、百億!?そんなにお金があったら、この国が3か月は回るじゃないか!」

俺は大声で叫んだ。姉さんは口をパクパクしている。声が出ていない。

リンがねちっこい目でこちらを見た。

「自覚持ってくださいましたか?この銀はそれほどまでに貴重なんです。

ちなみに、今この国で産出する銀の平均的な品質で、このサイズだと…1000万ルド行ったらいい方ですかね」

「いったい何桁違うんだ…」

姉さんが声を発した。よかった。声戻ったんだね。


突然、入り口の扉が叩かれた。

「誰だ」

俺は、腰の剣を抜き放って聞いた。

「城からの使いでございます…

なんちゃって。ガイアだよ!

ちょっと城の方に行く用事があって、城に行こうとしてたらさ。兵隊さんたちが街でうろうろしてて。気になって声を掛けたら、お前を探してるっていうからさ。

渡したいもの、もらってきたんだ!」


まぎれもないガイアの声だ。

俺は扉を開けた。

「やあガイア。どういうものだ?」


ガイアはズボンのポケットから紙を一枚取り出した。

王国の紋章が描かれた、金箔の入った高級紙だ。

ガイアは、その内容を読み上げた。

「えーっと、『ニーケ様、あなたは本日午前10時からの評議会において、ニウム学園に進学することが決定いたしました』って書いてある。

学園だって。よかったな!」

ガイアはニコニコしている。


俺とリンはそれどころではなかった。


学園に進学。それは、王家の中では「落第の印」を表す、極めて不名誉なことだった。

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