俺の名前は、ニーケ・ラドニクス・アイテル
「…お前、誰?」
「気になるじゃろ?わしは、人の言う『神』といったとこかな」
白い人影がウインクしたのが見えるようだ…神様、ずいぶんお茶目なんだね…
「まあ、一杯どうぞ。ちょっと飲んでくれないと不都合が…」
そういって神様は透き通った黄金色の飲み物を取り出した。
うん待て、今不都合とか言わなかった?
「なんか変なこと言ったよね…?」
「おほんおほん、気のせいじゃな」
嘘が下手すぎるだろ…
まあ、神様の出してくれたものってことで、死にはしないだろうと俺は一口飲む。
美味い。蜂蜜のような甘さの中に、ほんのり酸っぱさが混ざっている。
甘党の俺にはものすごくうれしい味だ。
神様がニコニコしているのを感じた。俺がおいしいって思ってるの、分ってるんだな。
俺は一杯、勢いよく飲みほした。
一瞬、何かが頭の中にすっと入って行った気がした。
神様が、手元から謎の石板を取り出した。
それを、頷きながら眺めている。
「あのー、神様。その石板、何が書いてあるんだ…?」
「あ、これ?お前の能力値と将来の希望」
急に面談をされている気分になってきた…
「ふむ、ニーケの能力値だが、潜在的な能力がめちゃくちゃ高いな。バカなのは、潜在している分をうまく使えてないのだろう…」
神様はぶつぶつそんなことを言っている。
今バカって聞こえた気がしたぞ…
いや、バカだのなんだのうんたらかんたら言われるより、だ。
「神様、俺は魔王討伐に行きたいんだ!できそうか?」
神様は、あからさまに驚いたようだ。やっぱり難しいのk…
「むう、そんなことでいいのか?」
は?今、そんなことって言ったよな?
そんなこと、だと?今まで何人の猛者が魔王に挑んで、そして死んでいっていると思っているんだ!
「ああ、俺の夢は魔王討伐なんだ!それ以上のことがあるのか?」
「いや、なんか魔王討伐した後世界を占領したりしないのかなあって思ったのじゃ」
世界占領!そんなことしたら俺が魔王になっちゃうじゃないか!
「そんなことしないさ!そっちの方がいいってなったら別だがな…」
「ほうほう、なるほど。じゃあそれを考慮して職業を決めると…」
神様はぶつぶつ言いながら、俺に背中を向けた。
しばらくたった。俺は、うずうずしていた。
俺は何の名前がもらえるのだろうか。フェルム?もしかしたらそれ以上の、ブレイかもしれない。
アールムもいいな…ああ、何がもらえるのだろうか。
ようやく、神様が重々しく俺の方を向いた。
その手には、瓶が握られていた。
「ふむ、お前は普通の名で収まる器ではないな。ではお前には、アイテルという名を授ける」
神様は俺にそう言い、一見何も入っていないような瓶を開けてひっくり返し、俺の上に持ってきた。
涼し気な空気が頭の上からそよそよと降りてきて、俺は胸いっぱいにその空気を吸った。
俺の脳の一部が書き換わったような感覚に襲われた。
「さて、ニーケ。お前の名前は?」
神様が俺に聞いた。
「俺の名前は、ニーケ・ラドニクス・アイテル」
俺は、自然にそう答えていた。
「神様、ところで、アイテルってなんていう職業なんだ?」
俺は、神様に聞いた。アイテルなんて聞いた事がない。
「ん?なんじゃ、知らないのか。お前に授けた名前とは」
「わしの兄弟の名前、つまり神に匹敵する。職業は、錬金術師じゃ」
辺りが急激に靄に包まれ、俺の意識は遠のいていった…
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