靄がかかった空間
「ねえアリ、ちょっとこの家、でかすぎない?」
「そう?僕はニーケ兄にはこのくらいじゃまだ足りないかと思ったんだけど…」
「いや、下手したら俺の部屋よりでかい」
俺は友達を呼んで、家を一望していた。友達はなんか「探検だー!」とか言ってる。
そんなことができるくらい、この家はバカでかかった。
二人で暮らすには広すぎるし、何より掃除云々がめんどくさそう!
「あら、ずいぶんいい家買ったのねえ」
後ろからエレノア姉さん似の声が聞こえた。この声は…
「エリノア姉さん!なんで来たの?」
俺は後ろを振り向いた。エレノア姉さんの双子の妹、エリノア姉さんがいた。
エレノア姉さんもエリノア姉さんも、腰まである金髪に金色の目、白い肌で綺麗なんだよね。
声もしぐさも見た目も瓜二つだから、最初見分けるの大変だったな…
「エレノアから、リンちゃんの服とか家事とか手伝ってあげなっていわれたのよ。だから、私もこの家住むから!よろしくねニーケ!」
「え、ほんとに?ありがとう!家事大変そうだなって思ってたとこなんだ!」
「あ、ありがとうございます」
おお、リンが自分から初対面の人に声をかけた!
ふと時計を見た。
やばい、もう4時半だ。
城を出たのが2時頃だから…帰らないと母さんに叱られる…
「じゃあ、俺そろそろ城に帰らないと!」
「そう!次来るときは家具一式もってきなさい!」
「わかった!リンはここに残ってエリノア姉さんの手伝いとかしてて!」
「わかりました!」
そういって俺は城に向かって全力疾走した。
俺が城に戻って、着替えて道場に着いた頃には、エクセレスはいた。
「遅かったですね、ニーケ様」
「ごめん、いろいろやってたら遅くなっちゃって…」
「稽古はできそうだから問題ありません。では、始めましょう」
「エクセレスは、何の武器を使うの?」
「私が最も得意とするのは、刀ですね。だから、刀の使い方を教えたいと思います」
刀かあ、俺、今剣を使ってるから、てっきり剣を教えてくれるのかと…
「どのくらい経ったらうまく使える?」
「そうですね…どんなに飲み込みが早くても、実戦でうまく使えるためには1年はかかるかと…」
い、一年!?
「長っ!」
「まあ、まずは基礎から。持ち方から始めましょう」
そういって、エクセレスは俺に木刀を渡した。
お、重い…
「これでも軽い方です。慣れてください。まず、右手を…」
稽古は三時間たってようやく終わった。
「では、もう街に帰っていいですよ。家具一式は、この袋の中に入っています」
そういって、エクセレスに小さい袋を渡された。
「無限収納です。いくらでも入ります。結構レアなアイテムなので、なくさないように腰にでも縛っておいてください」
「わかった、ありがとう!」
俺はすごく疲れていたが、高揚した気持ちがおさえきれず、街まで走って帰った。
「おかえり~。ご飯できたよ~」
「おかえりなさい!稽古、お疲れ様です!」
「ただいま、二人とも、ありがとうね!」
帰ったら、リンとエリノア姉さんがご飯を作ってくれていた。二人とも、エプロン似合ってる!
「ニーケ、家具は?」
エリノア姉さんが俺に聞いた。そうだ!俺が家具を持ってきた気配がないから…
「ああ、この袋の中。無限収納って言うらしいよ」
「へえ、レアじゃん」
「ニーケ様、テーブルとイスはありますか?」
「うん、今出すね」
俺は、袋に手を入れて、テーブルと椅子を探し出した。そして、
「出てこい!」
と念じた。すると、ドスンという音がして、テーブルと椅子がきれいに並んでいた。
「じゃあ、食べようか」
「「「いただきまーす」」」
「はー!おいしかった!ありがとね、二人とも!」
「どういたしまして、じゃあ、早いとこ風呂入って寝ようか」
「そうしましょう!」
その後、何も特別なことは起こらなかった。
俺がベッドを寝室に出現させ、思い思い好きな場所で寝ることにした。
リンは、一人で広いベッドを使うのを拒み、俺と同じベッドで寝ることになった。
「じゃあ、電気消すわよ~。リンちゃん、あんまり大胆なことはしないように!」
エリノア姉さんがニヤニヤしながらそう言った。
そして、電気が消えた。
俺は白い靄がかかった空間に立っていた。
ここはどこだろう。初めて来たはずなのに、なぜか一度来たことがある気がする。
足元は漠然としていて見えない。
なぜか恐怖は感じない。
頭のどこかから、このまま進め、という声がする。
俺はそれに従って、ゆっくりと歩きだした。
どのくらい歩いたのだろう。不意に、あたりの靄がサアッと開けた。そして、
「うむ。来たな、ニーケよ。今日は、お前に名前を付けてやろう」
真っ白い人のような影が、俺の前に立っていた。
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