「かわいいお前の連れに街を案内してやんな!」

「ここが街ですかぁ…」

リンは活気あふれる雰囲気と人々に気後れしつつも、あたりを見渡している。

リンは城で生まれて城で育ったから、街に来るのは人生初なのだろう。

俺は、こっそり抜け出して街に繰り出してたからもう慣れっこだ。

なんなら、街に気の置けない友達だっている。俺は城よりこっちのが好きだ…


「よう、ニーケ!久々じゃないか!また城から抜け出してきたのか?」

不意に、俺に声がかかった。友達のガイアだ。

「やあ、ガイ。今日は抜け出したんじゃねえよ。女王様からのご命令さ」

「ほう、女王様もついにお前を見放したか。街に繰り出させるなんて」

「何を言う。俺は女王様が崩御したら女王補佐だぞ?不敬罪で牢屋に突っ込んでやろうか」

「おーこわ。ほんとにこいつならやりかねないわ。で、俺は時期女王補佐様のために何をすればよろしいのでしょうか?」

ガイアは大げさにお辞儀をして俺に言った。

リンは俺たちのテンポのいい軽口を、目を点にして聞いていた。

城育ちのリンには、ちょっとこのテンポは速かったらしい。ま、俺も城育ちだけどな。


「街に住むための家探しだよ。街と住民の様子を把握するためには街に住んだ方がいいだろ?ってこと」

「ほーん、なるほどな。じゃあ、俺ちょっと周りの奴らよんで探してくるわ。手っ取り早いだろ?」

「この街、なんか住居管理してる店的なのなかった?」

「あるけど、あそこに行っても不愛想な対応されて終わるぜ。いくつか見当をつけて戻ってくるから、そのかわいいお前の連れに街を案内してやんな!服も変えた方がいいぜ!」

そういってガイアはパッと走り出した。でかい図体のわりに動きは速い。

「わかった!何から何までありがと!」

俺はガイアの背中に叫んだ。ガイアは手を振ってくれた。

「じゃあ、リン。行こうか」

リンは無言でうなずいた。

なぜか頭から湯気が出そうなくらい顔が真っ赤になっていた。


「いらっしゃいま…なんだ!ニーケじゃないの。何の御用?ここは女の子専門の洋服店だけど…」

俺は一通り街を巡ったあと、リンを知り合いの店に連れてきた。リンはどうやら人見知りらしい。俺の後ろに隠れている。

「やあ、エレノア姉さん。今日は、俺の連れの服を仕立ててほしくて来たんだ」

「へえ、連れ。ずいぶんとまあニーケも大人になってねえ」

エレノア姉さんはにやにやしながら俺を見た。

「で?連れっていうのは後ろのその女の子?ニーケも隅に置けないわあ…」


「姉さん、リンに似合う街風の服が欲しいんだ。そうだね、5着欲しいな」

「了解。任せといて!リンちゃんが最高にかわいく見える服を選んでくるわ!じゃあ、リンちゃん。こっちに来てね」

「リン、ほら。エレノア姉さんに洋服を選んでもらってきな」

「わ…わかりましたぁ…」

そういって、リンは俺の後ろからそっと出て行き、服を選んでもらいに行った。


ちょうどリンが見えなくなったタイミングだった。

からーんからーんと鈴が鳴り、扉が勢いよく開いた。

「ニーケ兄!おひさ!家見つかったよ!そこそこに広くて安め!街の中心地が一望できる、最高の立地の家!」

勢いよく飛び込んできたのは、小柄な俺よりさらに頭一個分小さい、色黒の元気そうな女の子。

「やあ!アリじゃないか!家見つかったのか!ありがと!」

「うん!じゃあ、僕が連れの女の子後で連れてくから、先に手続き済ませてきなよ!」

「そうするよ!」

俺はそういって、扉を開けて走り出した。


「あの…ニーケ様…いかがですか…?」

手続きが終わり、後はお金を払う段に来たタイミングで、扉がそっと開き、リンが入ってきた。

「え…うん。かわいいと思うよ。とっても似合ってる」

ふんわりとした、薄いピンク色の上品なスカート。ほんのりクリーム色の白いブラウス。髪型も変わっていて、きついお団子がほどけ、軽く巻かれたロングヘアになっている。金色がかった茶髪が美しい。


「ね?かわいいでしょ?僕も選んだんだ~」

アリが後ろからぴょこっと顔を出した。

「じゃあ、お金を払ったら早速新居に行こうか!」

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