第2章 わたし、〝友だち〟じゃなくて〝親友〟が欲しい——

第6話(本文〝西木 草成氏〟作)【さらばSAOよ!】

 きっかけは至って単純だった。今から二年前の高校入学、座席がたまたま近かった彼女が、真央の机を覗き込んだのが始まりだった。オタクが教室で人に見られたくないものを読むときの常套手段である、ブックカバー。しかし、結局のところ中身を読まれてしまえば全く意味のないことなのだ。


『あ、可愛い絵』

『え……あっ! これは、いやっ……』

 突然声をかけられ、思わず手に持っていた「文学少女と月花を孕く水妖」をカバンの中にぶち込んだ。しかし、その拍子にフックから外れたカバンから数冊のライトノベルが床に散らばってしまった。さらに、それらにはブックカバーがされておらずそれぞれ表紙がむき出しの状態になっておりより一層慌てた真央は周りから見られないように体で覆い被さりながら本を隠す。


 インキャ、オタクと呼ばれる人種は自身の趣味や収集、それらに対して労を執る人物ではあるがそれ以上にそれらの趣味に対して自信が持てない人種でもある。入学一番でオタクと見られた暁には、これからの高校生活三年間を暗く過ごすことになるかもしれない。

 そんな一抹の不安が、彼女を行動させたのだ。しかし、真央に声をかけた少女はこぼれ出たラノベの表紙を見たあと。その目を怯えた表情をした真央に向けた。

『ねぇ、これ。有名なやつでしょ? 私、名前だけ知ってるんだけど内容よく知らないんだよねぇ〜』

『……SAO?』

『え? エス? エー?』

『……あ、ソードアートオンライン……です。よね?』

『ウンウン。もしかして、全巻持ってたりする系?』

『……一応……最新刊までなら……全部……』

『ねぇ、今度貸してよっ!』

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