第2話美人の欠点はブスの汚点
美人薄命、一笑千金、眉目秀麗、
美人に関することわざや、美人を元にした語源は山ほど耳にするのに、不細工の事についてはあまり耳にはしない。
これは必然的に人類が綺麗な言葉などしか耳に入れようとしない傾向の現れだと思う。
結局のところ人は見たくもないもの、聞きたくないものは排除し、見てしまったらその事に関して深く考えずに、非難してしまうのだ。
だから俺は今、学校で1番のイケメンである影山先輩が、不細工な非常勤講師下北と校内でおっ始めていた事を本能で排除しようとしていた。
気分が悪くなり教室の忘れ物を取ってすぐに下校するために、足早に一階の廊下を進む。
すると通りがかった生徒会室のドアが開く
「ちょっとれーや君手伝って」
生徒会室から出てきた女生徒から声をかけられた瞬間、その声の主を一瞬で本能で拒否した。
聞こえないフリをして、歩行速度を速める。
「流石に、目の前では無理あるでしょ」
女生徒は俺に足をかけて転ばせる。
ですよねー、でも普通袖掴んだりして止めない??
この女生徒を本能で拒否する理由がこれだ。
転んだ俺を嬉しそうに見上げる彼女は東城優、
ここ、宮古西高校の生徒会長。3年生だ。
少しウェーブのかかった茶髪のショートが得意げに揺れる。
「何するんですか、止めるなら普通に止めたら?」
「せっかく手伝って貰うのに、気を悪くさせないように止めたつもりだけど?」東城はニヒルな笑みを浮かべる。
「転ばされて気が良くなるやつに、そうゆう事してください。まぁ薄緑色のパンツ見せてくれたのでプラマイゼロって事にしときます。」
「そうゆう事言って良いんだー?」
え、普通に嫌われて、近づきたくないと思われたくて言ったのに、どうやら彼女の1番触れてはいけない琴線に触れたようだ。
俺は震える足を抑えながら立ち上がる。
東城先輩との出会いは去年の夏、調子に乗って体育大会の実行委員なんかになったのが終わりだった。
2年当時から生徒会長だった東城先輩は、体育大会実行委員にも当然顔を出す。まだ怖いもの知らずだった俺は、頭も良くて可愛らしい顔立ちの生徒会長なんて狙わないわけがない。
積極的に関わっていこうと、東城先輩の手伝いを沢山していた。ある時、東城が脚立に乗って、少し高いところに万国旗を付けようとしていた。しかし、東城先輩は150cm身長があるか無いかのミニマムサイズ。
脚立の1番上に乗っても届きそうになかった。
怖いもの知らずの俺はそこに颯爽と手助けをしに行き、万国旗を付け終わったとき、脚立が倒れて、地面に思い切り身体を打った。普通脚立をしっかりと立てていて倒れるはずが無い。何かあったのだとは思ったのだが、昔の俺はそこまで深く考え無かった。倒れ込んだ俺に東城先輩は駆け寄り心配そうな顔で見ていたが、俺が無事を伝えるととても嬉しそうに微笑んでくれた。
その時はなんて可愛らしい優しい人なんだと思った。でも、今思い返せば東城先輩が脚立をぶっ倒したのだろう。あの優しい笑顔は俺の無事を喜んだ訳ではなく、新しいおもちゃを見つけて喜んでいたのだ。そこからが早かった。
体育大会が終わっても廊下ですれ違う度に足をかけてくるし、掲示板にポスターを貼るから手伝えと言われた時、何を手伝う事があるのだろうと思っていると、充分手の届く距離にある高さなのに俺の足を踏み場にして画鋲でポスターを刺したり、その時わざと踵をぐりぐりされた事を俺は忘れない。
つまるところ東城優はドSなのだ。
普段は表に出さず可愛い勉強のできて、ユーモアのある人気の生徒会長、でも、中々反抗してこない奴だと分かると下僕の対象にしていじめ倒すイカれ女だったのだ。
白石とは別のタイプの美少女だが、可愛ければ誰でもタイプの俺は、まんまとその可愛い顔に騙され、なんでも言う事の聞くいい下僕になってしまった。
俺はMの属性は持ち合わせていないので、完全に東城先輩をもう女として見れなくなってしまった。
しかし、こんな性格の東城先輩がまともに男と付き合う事なんて出来ないはずだ、つまり処女なのだろう。その一つの要因だけで俺の魂は何度でも蘇るはずだったが東城先輩は普通に怖い。
それでも、俺を痛めつけながらも相手してくれる。
その事だけに少しの喜びを見出してしまっている。
やはり美少女と美人と言うだけで本能で喜びを感じてしまうのが男の性。
きっと彼女が美しいから欠点でしかない、欠点は見方を変えれば武器だ。でも不細工だと誰も得しない汚点なのだろう。
顔が全てではないと、顔が綺麗な人が言うから通る世界。
美しければ多少の欠点も美化されてしまう。
白石の様な人ですらどこか欠点はあるのだろう。
ワキガとか、ケツ毛多いとか。
もしそうだとして、俺に白石の好きになった相手の欠点を受け止められるか分からないが、受け止めた先が本当の好きなんだろう。
まぁ白石の欠点なんて大した事ない、俺に受け止められないことはないだろう。多分ね。
「話を戻すと手伝いってなんですか?」
「戻すほど話してないんだけど?」
「あっ、す、すいません何でもないです。」
おっと、頭の中で話逸らしすぎた。不思議そうな顔で俺を見つめる東城先輩は、少しきょどる俺をみて口の右端を少し上げる。
「涼川冷彌君あなた生徒会に入らない?」
「え?」
そして数日が過ぎ、1話目に戻るっ!
最初に抱くなら処女がいい 上下上下 @Souhei0712
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