☓☓☓☓☓☓☓☓はな
第3話 りかわる
古今東西。
いろんな場所で語られる成り代わりの怪異。身近な人へと別人が成りすます都市伝説。原因はいろいろな説があげられる。幻覚、幽霊、宇宙人、寄生虫…。
そういった恐ろしくて、不愉快なそれが、オレたちの正体だ。宇宙人じゃあないが、幻覚と幽霊、寄生虫あたりは、少し近いかもしれないな。
オレたちは他の生き物の姿と経験を奪い取って成り代わる。いや、成り変わるともいえる。そういう生き物だ。
これまで、数多の生き物の生命を文字通り、奪い盗って生きてきた。
彼らの意思はオレの中。
ほんの少しの欠片があれば、彼らの全てはお見通し。化けたオレを見たのなら、お前の生命はもうおしまい。
……ドッペルゲンガー?そんな風に呼ぶヤツもいたな。
でも、厳密にはドッペルゲンガーとオレたちは少し違う。あれはどちらかというと、バイロケーション、日本語だと「一身二箇所存在」とかいう超能力が暴走しているだけ。
つまり、認識していないだけで、本人の能力なんだよ。
日本じゃドッペルゲンガーと呼ばれがちだが、もし名乗るなら、オレたちはシェイプシフターってヤツだ。
シェイプシフターはいろんなものに姿を変えることが出来る。人を含めた動物はもちろん、有機物・無機物を問わず、何でもな。…って、アンタ…分かってて言わせただろ。はぁ、人の悪い…。あぁ、好きに呼べばいい。
…え?日本語で漢字をあてるなら?…うーん。「百面相」って言葉があるよな。オレたちはたくさんの人の
お?そうかい。お気に召したなら、何よりだ。
…で、どうしてオレがこんな妙なことしてるのかって話だったか。
さっきの話に戻っちまうが、何にでも成れるから何でもいいかっていうと、そんなことはねぇ。せっかくなら、
そうだな…。カッコウの托卵って知ってるだろ?
オレたち佰貌怪が人間を標的にするのは、アレと似たようなもんだ。良い環境横取りするのさ。
人間ってのは、他の個体と協力したり、関係し合うことで、発展してきた生き物だよな。
中でも、周囲と良好な関係を築けた個体は、より良い環境で生きていける。しかも、長期に渡って築かれた関係性は、よほどのことが無ければ、すぐには壊れないときた。
おまけに、人間どもは視覚に重きを置いた世界を築いている。他の感覚も使っちゃあいるけど、視覚への信頼が圧倒的だ。
他の生物と比べれりゃ、より顕著だろ?視覚以外の五感までもなく劣ってるじゃねぇか。
それなのに、『自分の目で見たものしか信じない』って自信満々に言うヤツがいるのは、可笑しくって堪んねぇや。可視光線しか視えねぇ目ン玉してるくせによ!
…まぁ、自由に姿を変えられるオレたちにとっちゃ、これほど最高の
そこから、いろいろ手を出す同胞もいるみてぇだったが、オレは野心も野望もねぇからな。
…そう。ただただ生きるだけのつもりだったんだ。あいつに会うまでは。
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