天邪鬼は人
第1話 殺し
「っっっ!!」
ばっと、跳び上がるように身体を起こした。
午前二時。草木も眠る丑三つ時。夜空に朝の気配はない。
嫌な夢を見た。
Tシャツがべっとり貼り付いて気持ち悪い。着替えるために、寝床を抜け出す。
べったり貼り付いた髪の毛をかき上げる彼の横顔を、月の明かりがうっすらと照らす。軽く目を閉じて、深く息を吐いた。
それは、友人を殺す夢。
ただ、彼ももう中学生。自分の意見を飲み込んで、
しかし、腹が立つことに変わりはない。
そう。最初はただの回想だった。
とあるひとりのクラスメートとほんの少しそりが合わなかった。それはよくある相性の不一致。ちょっとした気持ちの行き違い。
そこに不運な腐れ縁が絡みつき、ふたりは衝突することがほんの少し多かった。
そんなある日。
内蔵が煮えくりかえるような過去の怒りが蘇り、飛び出しそうになる拳をぐっと握りしめる。それはもう目を覚ましてしまうほどに。掌に血が滲むほどに。
目覚めの悪い朝だった。枕も布団も、
その日だけなら、それで済んだ。
しかし、その夢は何度も何度も続く。毎回、同じというわけではない。日中の出来事が影響する。彼と衝突した日の夜は必ずうなされた。
当然のごとく、彼の不満と怒りは積み重なっていく。
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「…そう。
じゃあ、彼のことは嫌いなの?」
部活の帰り道。
《占い☆今日だけ無料です☆》
という見慣れない怪しげな看板に、
「いえ…彼にも良いところはあると思うので、仲良くしたい気持ちはあるんですけど…」
「我慢できない部分もあるってわけね!…ふむ」
右手を載せた手のひらサイズの水晶をチラッと見てから、彼女は彼の手をひっくり返して、わざとらしく眺める。
「…ふんふんふん、ふん!オッケー!」
軽々しい口調の後、深い藍色のフェイスベールの上に並んだ薄紫の瞳が、じぃっと見つめた。
「…あなたの心の声に従いなさい」
何の解決にもならない答えだった。
だが、淡い瞳があまりに自信に満ちていて、言葉を失う。やっぱり時間の無駄だったのかもしれない。
「…ありがとうございました」
そう言って、力なく鞄を持って立ち上がる彼を、彼女は綺麗な銀色の長髪を
「まいどあり!また来てね☆」
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そんな占いが彼の心を穏やかにするわけもなく、その後も悪夢は続いた。
そして、彼の苦悩など知らずに、奔放な行動を繰り返すクラスメート。
それでも、悪夢は止まらない。
ある日、彼はとうとう考えてしまう。
『俺ばかり苦しんで、あいつは悠々と毎日を過ごすなんて、不公平ではないか』
夢の中でくらい、一度くらい、ちょっとぐらい良いのではないかと。
積もりに積もった怒りはすこしの緩みで弾け飛ぶ。
気づけば、
赤黒く染まった顔をしたクラスメートは、しばらく叫ぶように口をパクパクさせていたが、そのうちにだらんと脱力して、動かなくなった。
虚ろな目をした彼が真っ白な顔で横たわる。生前の毒が滲み出たように醜く歪んだ顔で、虚ろな
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