河童の伝道師

第1話 河童の伝道師

彼は弱き足で歩む。

痩せた体でただ歩む。

青白く細いその体は

四十を老爺が如く見せ

それでも彼はただ歩む。

眼には悲しき強き光。

彼は別れしわが子を想う。

川に呑まれしわが子を想う。

語らぬわが子との誓いを胸に、

弱き身体で旅をする。

訪れし村は数しれず、

彼は河童の伝道師。

彼は集いし子供に語る。

川に棲む化物を語る。

亀の甲羅に緑肌。

狙うは馬の尻子玉。

どうかみんなくれぐれも

川に近づいちゃいけないよ。

彼を見送りし子供は沸く。

彼の語りし化物に沸く。

未知の化物に抱くは、　

恐れを知らぬ好奇心。

一度みんなで見てみよう。

怖がるやつは置いていけ。

彼は聞こえし声に祈る。

全てを託し天に祈る。

叶わぬわが子との誓いを胸に、

せめての手尽くし天に託す。

どうか此度こそ一人でも。

独り冥途のあの子のもとへ。

寂しく歩くあの子のもとへ．．．