11.ジャンヌの気持ち
『いや、貴様は何を言っているんだ。我はこれから会場の人間を人質に魔王軍に四天王復帰を願うのだ。ならば本来の四天王である貴様が何をすべきかは……わかっているな?』
ジャンヌの戯言に一番最初に立ち直ったのはデスリッチだった。さすがご主人様である。彼女の奇行には俺たちよりも慣れているのかもしれない。
「ええ、わかっていますよ……あなたがみずから悪者になって、ぎくしゃくしているモナと私の仲を取り持とうとしていることも……」
「ちょっと……ジャンヌそれはどういうことなのよ?」
『……』
ジャンヌの言葉にモナが騒いで、デスリッチが無言を貫いた。ああ、やっぱりそういうことなのか……こいつは俺たちの作戦を自分のやりたいようにやっただけで、結局狙いは変わってなどいなかったのだ。プライドと魔法の才能だけが高い面倒な男である。
そして、みんなの視線がジャンヌに集中する。
「そして、あなたがプライドが高いから約束をしたことは意地でも守るっていうことも!! ですから、私と結婚してください!! 結婚首輪は安いのでもいいです!! むしろ安い方が奴隷って感じで興奮します!!」
さきほど拾ったメモを聖書のように掲げ、騒ぎ立てるジャンヌのせいでシリアスな雰囲気が一瞬でぶっ壊れた。
「ちょっと待ちなさいよ!! 奴隷ってどういうことなの? デスリッチ……あなたまさか、ジャンヌに変なことをしたんじゃ……」
『それは……』
「違いますよ、モナ……私が自分の意思で彼のものになったんです。この人は……初めて私に触れてくださったんです」
デスリッチを睨みつけるモナからかばうようにジャンヌが間に立って、彼の白骨化している手を愛おしいもののように握りしめる。
その光景はまるで、悪魔に魅入られる修道女のようでどこか魅惑的だ。まあ、実際はヘタレと変態聖女なのだが……
「ジャンヌに触れた……? 『絶対領域』があるはずじゃ……」
「はい、デスリッチ様は誰もがふれることのできなかった私の『絶対領域』を攻略しぬくもりを教えてくださり、腐敗した教会から私を解き放ってくれたんです……」
『ふん、勘違いするなよ。我は貴様の力を利用しようとしただけに過ぎない。そのあと勝手に貴様が慕ってきただけだ……いや、本当にそうなんだがなぜかツンデレっぽくなってしまうな!!』
デスリッチがツンデレっているが、そんなことを気にせずにジャンヌは彼の手を強く握る。最近冷たくされていた反動か、ミシミシっといっているが気にしないでおこう。
どうせデスリッチだし……
「教会の腐敗……そんなの私は知らなかった……ジャンヌはつらい目にあっていたの? なんでいってくれなかったのよ!!」
「あなたやアリシアは心優しいですからね。私が訴えたら教会から真正面から戦おうとしたでしょう? ですが、勇者パーティーであなたがたが人間の主戦力の一つである教会とぶつかりあったら、人間たちは危機になる。だから、あなたたちには頼れなかったんです……」
「でも……私は……それでもあんたの力になりたかったわ!!」
モナの悲痛な叫びがこだまして、そのまま駆け出して行ってしまった。確かにモナは思い込みが激しいし、アリシアも正義感が強い。ジャンヌの秘密をしれば本気で教会を敵に回しだろう。
そもそも、デスリッチが教会を敵に回したのは偶然だしな……だけど、それでも大切な仲間の相談されなかったのはきついだろう。
『ふん、ジャンヌよ。良いのか?』
「はい、いつか話さなくてはいけないことですから……それに、私はあなたを憎まれ役にしたくはありません。だって、デスリッチ様はなんだかんだモナのことを気に入っているでしょう?」
『ふん、あんなぷにぷに女興味ないわ』
ジャンヌはこうなることを覚悟していたかのようにつらそうな表情でうつむく。
「アルトさん……申し訳ないですが、モナを見に行ってもらってくれますか?」
「ああ……」
寂しそうなジャンヌと複雑そうな顔をしているデスリッチに見送られて俺はモナの後を追いかけるのだった。
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また宣伝ですが、こちらも読んでくださるとうれしいです。
『処刑フラグ満載の嫌われ皇子のやりなおし~ギロチン刑に処され死に戻った俺ですが、死にたくないので民に善行を尽くしていたらなぜか慕われすぎて、いつのまにか世界を統べる王になっていました~』
という作品をなろうで連載中です。
ギロチン刑に処されタイムリープした皇子が、処刑から逃れるために周りに優しくしていったら、なぜか皆に理想の王とあがめられるようになる勘違いものです。
自信作です。
現在ハイファンランキングで七位といいところまで行っており、なんとか五位になりたくて頑張ってます。
よろしくお願いします。
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