10.VSデスリッチ?

ジャンヌが作った結界の穴から外に出た俺たちは急いでデスリッチの元へと向かう。サティさんはまだみんなを安心させるために中にいるが、俺の思う通りならば、危険はないはずだ。



「デスリッチがどこにいるかだよな……」



 鑑定スキルをつかって魔力の残滓を見ようとすると、一切の迷いなくジャンヌが走り出す。満面の笑みで「願い事♪ 願い事♪」っていっているのがちょっと……いや、かなりこわい。



「あいつがどこにいるのか?」

「はい、方向で間違いはありません」

「流石、ジャンヌね。聖女としてアンデッドの気配がわかるのかしら?」

「いえ、これは愛の力です!!」

「愛!?」



 素っとんきょんな声を上げるモナに俺は冷や汗を流す。こいつご褒美のせいで完全に正気を失っていやがる!!

 モナにデスリッチとの本当の関係性がばれるじゃねーか!!



「モナ、いいから早く行くぞ!! お前は小さいんだ。おんぶしてやろうか?」

「な……別に私は小さくなんかないんだからね!!」



 モナは不満そうに頬を膨らますとむきになって足を速める。よかった……なんとか誤魔化せたみたいだ。

 ジャンヌが向かった先はデスリッチが泊っている宿だった。そして、その道中で何人かの人や魔物が倒れているのが目に入る。



「これは……死んではいないようだな。昏睡状態か!!」

「デスリッチの仕業かしら、でも、なんで……」

「とりあえず治癒をしましょう。神の加護よ、我らが友を癒したまえ」



 ジャンヌの体が光ったかと思うと倒れている人々にその光がうつっていく。そして、その光が彼らを包むと、目を覚ます。



「ああ、ジャンヌ様……ありがとうございます」

「礼は不要です。それよりもなにがあったのでしょうか?」

「それがデスリッチ様がいきなりやってきて、『人間が四天王なんておかしいだろう? 魔王に抗議をする。邪魔をするのならば貴様らもただではおかない』といって……」

「あいつ何を考えているのよ……」



 襲われていた人の言葉を聞いてモナがまゆをひそめる。なんか出来すぎているなって思った俺は目の前の青年を鑑定してすべてを察する。

 


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名前:ワッケーロ

職業:パン屋

戦闘能力:5

スキル:パン作り。小麦鑑定。同人活動

貧乳大好き度:999

備考:普段はパン屋として働いているが、とある本のティーサというキャラにはまっており、エッチな絵をたくさん描いている。

 一回ティーサちゃんパンを作ろうとして奥さんにむっちゃ怒られた。最近好きな本の作者に頼みごとをされてうっきうきである。

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 こいつ……完全にグルだぁぁぁぁぁ!!! 俺がジャンヌに視線を送ると彼女も何か察したかのようにうなづいた。

 さすがは愛奴隷ジャンヌ、デスリッチが本気ではないともう気づいているらしい。



「あいつ何か余計なことを考えてやがるな……」

「もう、オベロン様ったら……私に思うことがあれば素直にいってくだされば……」

「あの……ティーサちゃんのコスとっても似合っています!! その……『このオス豚が!!」って罵ってくれませんか?」

「え、何言ってるの、この人こわ!!」



 モナが変な絡まれ方をされているがまあいいだろう。そして、俺たちはデスリッチがいる酒場へと向かう。

 扉を乱暴に開けるとそこには何体ものアンデッドの兵士や魔法使いがおり、その奥にどこから持ってきたのか、玉座に座っているデスリッチがいた。

 その姿はまるで英雄譚に登場する悪役のようで……




『ふはははは、流石聖女だな。われの結界を打ち破るとは!! だが、貴様の四天王になって魔物と人間の仲を取り持つという作戦は失敗だ!! われのこの行動によって人々は魔物を恐れるであろう!! それを防ぐには……どうすればいいかわかっているな?』

「く、デスリッチ……最近はまともになったとおもっていたのに……」



 得意げに演じているデスリッチの言葉に悔しそうなモナに声を聞きながらジャンヌが足を一歩踏み出した。



「デスリッチ……いえ、オベロン様!! お約束通り私はあなたの元にやってきました。だから、結婚してください!!」

「「「はーーー!?」」」



 俺とモナ、ついでにデスリッチの絶叫が響く。こいつマジで何を言っているの!?

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