5.ジャンヌオルタ
夜道で俺とサティさんは、ジャンヌと対峙していた。いや、まじでこいつは何を考えてんだ? しかも、この不可視の結界は……
「ジャンヌの絶対領域か!! まさか、身にまとっていたはずの結界をこんな風にとばせるようになったのか!!」
「流石ですね、アルトさん!! これが私のジャンヌオル〇としての力です。守るための力ではなく、相手を倒すための力!! 魔王軍四天王は伊達ではありませんよ」
「別に四天王は戦闘集団というわけではないのですが……」
誇らしげにドヤ顔をしているジャンヌにサティさんが冷静に突っ込みを入れる。だけど、四天王ってわりかして戦闘集団なきがするんだけど……
だけどサティさんが言うならそうなんだろう。みんな最終的には暴力で解決しようとしていた気がするがきっと気のせいだ。
「申し訳ありませんが、モナの身柄を確保させていただきます。あの子は危険です。このままではオベロン様がNTRされてしまいますからね。」
「お前……モナをどうするつもりなんだ? 元はとはいえ仲間なんだろ? まさか……」
ひどいことをするつもりじゃ……と聞こうとするとジャンヌはにやりと笑みを浮かべた。
「決まっているじゃないですか!! あの子を捕えて大っ嫌いなNTR本をたくさん読んでもらいます!! 他人の物に手を出してはいけないという事を理解させるんです。あ、ちゃんと三食デザート付きで、最終的にはブラッディクロスさんに持って帰ってもらうのでそこはご安心くださいね!! ちなみにこの街にあるカフェのパンケーキはとっても甘くて美味しいのできっとあの子も喜んでくれると思います!!」
「至れり尽くせりだな、おい!!」
「なんというか……基本が優しいんですね……」
こいつやっぱり悪ではないな……変態的な考えのため勘違いしてしまうが、基本的には心優しい聖女なのだ。それにMだからかSの心はいまいちわからないようだ。
だからこそ、モナと話せばわかり合えると思う。あと、モナのやつなんだかんだNTR本むっちゃ読んでいるからむしろ喜びそうなんだが……
「ふっふっふ、生まれ変わった私の残酷さに驚いているようですね。というわけで申し訳ありませんが、お二人にはおとなしくしていてもらいましょうか?」
「悪いけど、こっちもデスリッチのやつに色々と頼まれているんでな。引くわけにはいかないんだよ」
モナとアリシアが喧嘩をした時も思ったけど、こいつら勇者パーティーはなんだかんだお互いを想いあっているのだ。だったら、俺はちゃんと話し合ってほしいと思うのだ。
とはいえ、俺の力ではジャンヌには歯が立たないだろう。でも、一人じゃない。
「任せてください、アルトさん。とりあえずは彼女を無効化しましょう。モナさんが落ちてくる前にかたずけますよ」
以心伝心とばかりにサティさんは微笑んで、ジャンヌの方へと一歩踏み出す。
「ジャンヌ〇ルタさん……あなたの思惑はわかりました。でも、こっちにも色々と事情があるんです。そもそも……結界ごときで私に勝てるとでも?」
一瞬で空気が変わった。サティさんを中心に圧倒的なプレッシャーが発生する。これが魔王の……戦闘力99999の迫力である。
俺もこれを感じるのは、デート中に巨乳な女の子の胸元を見ているのがばれた時以来である。いや、しょっちゅう味わっているな……
「もちろん、あなたとまともに戦う気はありません。私にはオベロン様から預かっているこれがあるんですよ!!」
ジャンヌは余裕の笑みを浮かべながら、サティさんと違い豊かな胸元から日記のようなものを取り出して読み上げた。
「八月十日 エルダーにいわれてキャベツと牛乳の量を増やしてみた。これで少し大きくはなるといいんだけど……」
「なんで私の日記をもっているんですか!! やめてくださいぃぃぃぃぃぃ!!」
サティさんの絶叫があたりに響き渡る。奪い取ろうとするジャンヌの絶対領域によって、触れることはできないようだ。
おっきくって……多分胸だよな……
「ふふふ、私は真っ向からではあなたには勝てませんが身を守ることならばできます。これが私の宝具『黒歴史(ブラックヒストリー)』です。あなたが邪魔をしなければ私もこれ以上は読みません」
「うう……アルトさんにきかれたぁ……」
得意げなジャンヌとは対照的にサティさんは顔を手で隠すようにして、うずくまってしまった。
「サティさん、大丈夫です。努力するあなたが大好きですよ」
「うう……でも、本当はもうちょっと大きい方がいいなって思っているんですよね?」
「……そんなことはないですよ」
一瞬言いよどんだのがばれてサティさんが不満そうにほほを膨らましている。可愛い……だけど、何かを忘れているような……
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、これどうなっているのよぉぉぉぉ」
空中で目を覚ましたのだろうモナの絶叫が聞こえてくる。それに反応したのは二人だった。一人は慌てて立ち上がるサティさんだったが、へこんでいたせいか一瞬対応がおくれてしまい、このままではモナを受け止めることができない。
「大丈夫ですか、モナ!!」
必死な様子でさけんだなのは彼女の元へと駆け出すジャンヌだった。落下地点にはられた結界に包まれたモナは不可視の結界に受け止められてあたりを見回して怪訝な顔をして一言。
「ジャンヌ、その恰好は……? それに今までどこにいったのよ。心配したのよ!!」
「あ、これはですね……」
先ほどまでの様子が嘘のようにしどろもどろになるジャンヌだった。
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