3.デスリッチとモナ
気分が悪くなったと宿に戻ったジャンヌと別れて俺たちはあいつらに近づいていく。
「おい、デスリッチ。なーにナンパしてんだ? さすがにモナはまずいだろ……」
「そうですよ……あなたが前世でモテなかったのは知っていますが……」
俺とサティさんはあきれながらデスリッチに話しかける。いや、流石にデスリッチは親戚のおじさん的な感じで話していると思ったが、念のためである。
サティさんは……ごみを見るような目で見つめているが、まあ、いつものことだしな。
『ぬおおお!! なんで貴様らが!! しかも、いちゃつきおって!! リア充が、死ね!!』
「あ、アルトとサティさん、聞いてよ。こいつ結構話せるのよ!! やっぱり、長くいきているだけあるからか、勇者パーティーのことも詳しいの。オベロン様の事を色々聞いちゃった」
デスリッチがげんなりとした様子で、モナが嬉しそうに声をあげる。
「お前らいつの間にかそんなに仲良くなったんだ?」
「そりゃあ試験では一緒に、巨大なスライムと戦ったりしたし、最近はこいつらと魔術に関しての意見交流会もしているんですもの。世間話くらいはするわよ」
『ふん、仕事だから仲良くしているだけにすぎん。相変わらず、勇者の方は我を毛嫌いしているようだしな』
まあ、アリシアはデスリッチのせいで散々な目にあったからなぁ……その結果サティさんとも仲良くなったんだが……それはそれ、これはこれなのだろう。
「それで、お二人は何を仲良く話していたんですか? ずいぶんと盛り上がっていたようですが……」
「ああ、それがね。こいつが『勇者に幼馴染の聖女を寝取られパーティーから追放された俺は、リッチになって魔王軍に入って復讐をする』の新刊を持っていたから、ちょっと話をしていたの。勇者様は確かにすごいひとだけど、NTRはいけないって」
「「デスリッチ……」」
『しかたないだろうが、何て答えればよかったというのだ!!』
俺たちがジトーっとした目で見つめるとデスリッチが半泣きで俺に言い訳をする。モナはデスリッチの正体を知らないから、まさか、すべてがこいつの勘違いだったと言うわけにはいかなかったのだろう。
そもそもブラッディクロスさんいわく、アンダーテイカー家は思い込みが強いらしいからちゃんと話を聞くかもわからないしな……
俺は声を潜ませてデスリッチに聞く。
「まあ、いいや、それでジャンヌとなんかあったらしいじゃないか?」
「ああ、やつに会ったか。貴様から見てどうだった?」
「それでね……オベロン様はすごいんだから!!」
「ああ、そうなんですね……確かに魔術の才能だけはすごいですよね」
サティさんが酔っぱらったモナに絡まれているのを横目に俺は考える。チラチラとサティさんがデスリッチを見て、無茶苦茶何か言いたそうにしているが気にしない。
ジャンヌがどうだったって……相変わらず、変態だったとしか……
「あ。自分が四天王になってお前と気まずいって嘆いていたぞ。なんかやたらと冷たくされるって……嫉妬はなさけないぞ。デスリッチ」
『やかましいわ!! そりゃあ、我とて、思うことがないわけではないが、エルダーの考えだ。間違っているとは思わん。それよりもだ。あの女が四天王になってやったことは何だか知っているか?
「いや、知らないけど……」
「我を補佐に任命したことと、このサイン会だけなのだ。それをどう思う』
「どうって……ああ、そうかお前と関係する行動しかしていないのか」
俺の言葉にデスリッチが大きなため息をつきながらうなづいた。
『あの女は自由になったとほざいているわりには、我に依存してばかりだ。それでは神に依存して自分を抑えつけて聖女をやっていた時と何も変わらぬ。だから、少し距離を置こうと思っていたのだがな……」
頭を抱えて唸るデスリッチの机にはノートと、羽ペンが置いてある。ちらっとのぞくと、達筆な筆記体に可愛らしくデフォルメされたカレンちゃんが描かれていた。
ああ、こいつちゃんとサインの練習をしていたのか……
「お前……結構ジャンヌの事が好きだよな」
『やかましいわ!! それよりも、ちょうどいい。我のお願いを聞け。あの女の依存先が一つだからいかんのだ。だから、やつと勇者パーティーを仲直りをさせるのを手伝ってはくれないか? シルバークロスとやらはもう、察していそうだから放っておいてもよかろう。とりあえずモナと仲直りをさせたいのだ』
「は……?」
デスリッチの予想外の言葉に俺は思わず聞き返すのだった。
「NTRダメ絶対!!」
「モナさん!! ほかにもお客さんがいますからちょっと声をおとしてくださいぃぃぃぃ」
モナうるせえな!!
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デスリッチ……何だかんだジャンヌを大事にしているんだよなぁ……
すいません、来週は更新お休みします。
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