19.対決旧四天王


「変な空気になっちゃいましたね。あははははは」

「そうですね、えへへへ」



 俺とサティさんはお互い乾いた笑い声を発しながら先へと進む。てか、今はそれどころではない、俺は必死にゴブリンの裸を想像する。

 いや、流石に下半身を元気にしたまま戦いたくねえよ!! まあ、戦いにはならないと思うけどな。



「アルトさん、さっき皆さんが戦っていたのはファングではありませんでした。彼と遭遇するとまずいので姿隠しのローブを使いましょう」

「え? でも、あれって一人用ですよ……?」

「こうすれば二人でも着れるのではないでしょうか?」



 サティさんが俺の背中に自分の体を押し付ける。うおおおお、また元気になってしまう。スライムだとわかっているのに柔らかい感触につい嬉しくなってしまう自分が悲しい。

 てか、今思ったがエルダースライムやたら大人しいな。



「サティさん……今日は積極的ですね」

「もう、今はそんなことを言っている場合ではないでしょう!! まあ、さっきのでちょっと吹っ切れたっていうのはありますが……」



 俺に体重を預けながら耳元でもごもご言っているせいか、やたらと吐息を感じる。これはちょっと役得だなと思いながら、姿隠しのローブでサティさんごと包む。

 そして、二人で歩き始めると、少し歩くごとにサティさんを感じれて色々とヤバイ。耳元から吐息を感じ、背中には胸の感触、そして、いい匂いがするよーーー!!

 そんなことを考えているととだだっ広い広場に着く。



「誰か入ってきたようだな!! あの部屋も攻略されたようだし……サティとアルトか? 姿隠しのローブを使っているのだろう」



 奥の一室そこにはうっとりするような純白の毛皮の獣人がいた。彼は俺達の侵入に気づいたかのようにこちらをじろりと睨みつける。

 姿は消せても匂いは消せないからな。獣人になっているこいつには俺達の存在はバレバレの様だ。



「サティさん!!」

「はい、アルトさん私があなたは守ります」

「予想以上にラブラブな様子で来た!!」



 俺とサティさんは姿を隠しても無駄と悟り、ローブを脱ぎ捨てて、即座に戦闘態勢になる。



「ファング!! リリス叔母さんをどうしたのですか? 返答によっては私はあなたを許しませんよ!!」

「へぇ……旧四天王相手でも一向に引く気なしか。ちょっとは成長したようだな。魔王の試練を受けさせた甲斐があったというものだ」



 睨みつけるサティさんに対して彼はなぜか嬉しそうににやりと笑った。一触即発というところで複数の足音が聞こえてくる。



「お前がファングか!! 倒して……あれ? なんでサティさんがいるの? アルト兄まさか、もう助け出したの?」



 あの巨大なスライムを倒したのだろう。アリシア達もやってきた。本来はアリシア達がファングを引き付けてその間に俺達がリリスさんを助ける手はずだったが、計画通りにはいかないものだ。

 それも仕方ない。そもそも前提が間違っていたのだから。



「これで全員そろったようだな。それでは……おめでとう!! ここにいるみんなは合格よ!!」

「「は?」」



 俺とデスリッチ以外が間の抜けた声を上げると同時にファングの姿が一瞬にして銀髪の貧乳な美人へと変わる。

 その姿にみんな混乱してざわざわと騒がしくなるが。魔物の中には何人かはしてやられたという顔をしているので、リリスさんの変身魔術を知る者なのだろう。



「知らない方は初めまして、私はリリス。今回の三回戦の試験監督役を務めさせてもらったわ!! サティとアルト君、よくぞ魔王の試練をクリアしたわね。そして、勇者アリシアを筆頭とした参加者の方々、格上であるエルダースライムの本気を相手によくぞ戦い抜きました。みなさんの種族を超えた協力は魔物と人の共存を謳う今回の四天王選抜試験にはふさわしい戦いでした。映像を見ているであろう観客の方々も感動したでしょう!!」

「え? ちょっと待ってください!! 映像ってどういう……それにファングは……」



 リリスさんの言葉にサティさんが顔を真っ青にして詰め寄るが、彼女は涼しい顔で答える。



「ああ、私の変化の魔術で一部の壁や床を変化させて映像水晶とリンクしていたのよ。その性能はあなた達二人ならわかっているでしょう? あの部屋とは違って流石に音声は聞こえていないから安心してね。ちなみに、ファングの奴は強い奴を探して世界中を旅しているからよくわからないわ!!」



 映像水晶って……あれだよな……せ〇〇〇しないと出られない部屋にあったやつだろう……かなり鮮明に映るアレである。つまり俺がサティさんを肩を抱いたり、色々としていたことがみんなに見られたって事で……



「ふざけんなよぉぉぉぉぉぉぉ!! やっぱり四天王にはろくなやついねえじゃねーか!!」

「きゃぁぁぁぁぁ、魔王としての威厳が……あんなところを国民に見られたんですか? 私!!」

「待って……私たちが一生懸命戦っている間に二人とも何をやっていたのさ!!」



 俺とサティさんが絶叫すると、アリシアがジトーっとした目で睨んでくる。いや、あれはしかたがないんだっての!!



「うふふ、あなた達の種族を超えた愛には感動したわ。試験も終わったし、私はこれで帰るわね!! リビドーがたぎってきた!! 今度の新刊はヘタレ一般人X魔王よ!! 完成したら送るから楽しみにしててね!!」



 好き勝手言うと、呆然としている俺達を置いてリリスさんはさっさと出口の方へと向かってしまった、マジかよ……



「とりあえず帰りますか……」

「あんなことや、こんなことが国民に見られた……恥ずかしくて死にたい……」

「ねえ? 本当に何があったの? アルト兄とサティさんは何をやっていたの?」

「聞かないでくれ……どうせあっちに戻ったらわかるんだからさ……」



 あまりのことに呆然としているサティさんと、状況がいまいちわからないアリシア達に声をかけて俺達は魔王の洞窟を後にする。

 とりあえず四回戦に進めたからいいのか……? まあ、俺が本当にやりたいことが今回の試験で分かった気がする。




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もしも、イチャイチャしてたら色々危なかった……

実況中継……


そして、アルト君の逃げ道がなくなりましたねw


また、この作品とは一切関係ないのですが


『外れスキル「世界図書館」による異世界の知識と始める『産業革命』~ファイアーアロー?うるせえ、こっちはライフルだ!!~』


というこちらでも公開している作品が今月10月14日に発売されます。


領地運営モノでファンタジー世界の住人がこちらの科学の知識を手に入れて魔法と科学の力を組み合わせて様々なものを発展させる話となっています。


よかったら買ってくださると嬉しいです。


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