18.せ〇〇〇しないと出れない部屋
「ア、アルトさんどうしましょう!!」
「いや、落ち着いてください。いや、まじでどうするんだよ、これ!! 魔王って試練終わった後にエッチな事をするの? 変態じゃん!!」
「いや、そんなことを風習はないはずなんですが……」
突然の状況に俺とサティさんは思わずテンパってしまう。普通に考えておかしいだろ。なんだよ、『せ〇〇〇しないと出られない部屋』って!!
何か他に出るヒントとかはないのだろうか?
「とりあえず扉を開けてみましょう!! えい!!」」
可愛らしい掛け声とは裏腹に凝縮された闇が扉を襲う。土煙が晴れた後に出てきたのは傷一つない扉だった。
サティさんの力でもこれかよ……マジでせ〇〇〇しないと出れないのか?
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名前:せ〇〇〇しないと出られない部屋
効果:せ〇〇〇しないと出られない部屋。特殊な魔術で結界が張られており、攻撃では破壊できない。
備考:元は控室だったがとある魔物によって変化された部屋。人と魔物の恋愛……素晴らしいわね。今後の創作活動に使えそう!!
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あれ? これってまさか……俺は嫌な予感が頭をよぎる。今回の件ってファングの仕業じゃないのか……そういや、魔王が女狐とか言ってよな……
「と、とりあえず何かヒントを探しましょう!! あれ……これは映像水晶です!! この水晶に魔力を流すと何らかの映像が映るはずです!!」
テンパっているサティさんが部屋を漁っていると何やら重要そうなアイテムを発見したようだ。彼女は得意げに水晶を掲げて魔力を流す。まさか、エッチな映像とか流れないよな?
俺の心配は杞憂だった。最初に流れてきたのは戦闘シーンである。巨大なスライムと、何人かの魔物や人間が戦っているのが見える。
『くっ、このスライム強い!! 勇者の力を使っても倒せないなんて……』
『私は誇り高き竜族なんだから!! スライムにだって負けられないんだからね!! 勇者!! 私の火を聖剣に纏わせなさい!! 再生をする前に焼き切るわよ!!』
これは……アリシアとサラマンドだ。いや、それだけじゃない。他の四天王選抜試験の参加者もいる。これは……過去の映像じゃない。
別行動をしているみんなの戦いの映像だ!!
『変態仮面とその奴隷もやるじゃないの!! 私にあわせなさい。アンダーテイカー家の秘伝の魔術をおみまいしてやるわ』
『ほう、その年でこれだけの魔術を使えるとはな!! 優秀ではないか』
『バフは任せてくださいね!! あと、スライムが余っていたら回収します。うふふ、リアルスライム攻め楽しみですね』
モナとデスリッチが協力して魔術を使う。この光景はデスリッチの正体を知っている俺からしたら熱い展開である。先祖とのコンビっていいよな。ジャンヌは……元気そうだ。
『ふふ、我が最強剣術の錆にしてやろう!! イザベルよ、私の勇姿に惚れる治すといい!!』
『サポートは任せて!! この戦いが終わったら両親に会いに行ってもらうんだから!!』
ホーリークロスさんとイザベルさんがタイミングを合わせて斬りかかる。てか、いつの間にか実家に行く事になってるけど……何というか早いな!!
『-------!!』
巨大なスライムが溜まらないとばかりに悲鳴を上げて、その触手が暴れまわる。いきなり激しくなった攻撃にみんなが吹き飛ばされるのが見える。
『く……こんなところで負けるもんか、私は勇者なんだ。サティさんを救うんだ!!』
傷だらけになりながらもアリシアが立ち上がる。いや、アリシアだけじゃない。デスリッチや、サラマンド、他の参加者もみんな立ち上がって再度スライムに攻撃を仕掛ける。
「みなさん……」
その姿にサティさんが嬉しいような辛いようなそんな不思議な表情を浮かべる。ああ、みんなにはサティさんの夢はちゃんと伝わっているんだ。そして、サティさんを救うために人と魔物が手を取り合っている戦いを見て俺は思う。
魔王たちにも見せてやりたかったぜ。
「サティさん……みんなサティさんの夢を守りたいって思っているんですよ。俺がさっき言ったことは間違ってなかったんです」
「そうですね……アルトさん、一つお願いがあるんですがいいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか? 何か鑑定しますか?」
映像を消してサティさんは意を決したように俺の方を振り向いた。今のを見てここから出る方法を見つけたのだろうか? 俺の鑑定スキルが役に立てばいいんだが……
どこか緊張した様子で彼女は口を開く。
「アルトさん……私を抱いてくれませんか?」
「え?」
予想外の言葉に俺は思わず間の抜けた声で訊き返してしまった。
突然のことで俺は慌てふためいてしまう。サティさんは急に何を言っているんだ? 抱くって抱きしめるって意味じゃないよな。その……いわゆるエッチッチなことだよな……
「サティさん、落ち着いてください。確かに外はやばそうでしたが、自暴自棄になってはいけませんって!! アリシア達も苦戦してましたが絶対勝てますって!! 勇者パーティーもいますし、デスリッチやサラマンド、ケインも優秀です。もしかしたら今頃あのスライムを倒しているかもしれません」
「アルトさん、私は自暴自棄になっているわけではありませんよ。ここにいるのがあなた以外だったら絶対こんなことは頼みませんし……その……先ほどの告白の答えでもあります」
サティさんは顔を真っ赤にして震える声で答えた。その視線は恥ずかしさを誤魔化すかのように俺ではなく地面を見つめている。
サティさんも勇気を出しているんだ。
「こんな時にって感じですが、私は臆病なのでこんなことでもなければ自分からは言えなかったでしょう……だから、今の私は魔王失格かもしれませんね。部屋から出るためだけではなく、大好きな人と一緒になりたいからとこんなことを言ってしまうんですから」
「サティさん……」
そこまで言われて、ここで引けるのか? 引けるはずがない。そもそもこういう流れになるチャンスは何回もあったのだ。全ては俺がくだらない言い訳をしたり、ヘタレていたのが原因である。
だったら今度こそ……
俺は彼女に近づいて肩を抱く。甘い匂いがふわりと鼻腔を刺激する。
「サティさん、大好きです。俺が絶対幸せにします」
「はい……その……初めてなんで優しくしてくださいね」
上気した顔で目を潤ませながら言われたものだからたまったものではない。くっそ、こんなんもう我慢できねえだろ!!
そのままベッドに押し倒してしまいたい衝動を必死に抑える。サティさんが震えていることに気づいたからだ。そりゃあ、緊張するよな……こわいよな……
「では、ベッドまでエスコートさせてもらいますね、お姫様」
「ふふ、私はお姫様ではなく魔王ですよ」
気障なジョークだが笑ってくれたようだ、心なしかお互いの間に流れていた空気も柔らかくなった気がする。
ついに初体験か……思わず生唾を飲んでしまう。そして、俺が騎士の様に彼女の手の甲にキスをした時だった。
『おめでとうございます!! せっぷんを確認致しましたので、扉が開きます』
「「は?」」
無機質な声と共に鉄格子が上がって扉が開いたことに俺とサティさんは同時に間の抜けた声をあげる。セックスじゃなくてせっぷんなのかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
俺の下半身とか色々たいへんなんだけど!! どうしてくれんだよぉぉぉぉぉぉ!!!
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