10.魔王サティ様ドキドキクイズ大会

いやいやなんだよ、『魔王サティ様ドキドキクイズ大会』って……他の連中もあきれているだろうと思って見回すと、なぜか無茶苦茶テンションが上がっている。



「よっしゃー、俺達の時代だあぁぁ!!」

「サティ様ファンクラブの実力を見せてやるぜ」

「ウィンディーネに任せたのが問題でしたね……あの子は何を考えているんでしょうか……」

「多分何にも考えてないと思いますよ」



 俺は頭を抱えているサティさんを慰めるようにして声をかける。そうだよな。こいつらファンクラブからしたら、得意分野以外の何物でもない。

 これが一回戦って、魔物はともかく人間に不利すぎるだろ……



『今から出す問題に〇か×の方に向かいなさい。間違えたものはその時点で一回戦は終了ですわ!!  それでは第一問です。サティ様の一の部下であり友人であるウインディーネと出会ったのは魔王城である〇か×か!!』

「はーーー? こんなんわかるかよ!! 俺達はサティ様のファンクラブであってウィンディーネ様のファンじゃねえんだよ!!」



 予想外の問題に一部の参加者が文句を言う。まあ、確かにサティさん個人というよりも、二人の関係性に関わる問題だもんな……

 そんな参加者を横目にサティさんは申し訳なさそうに口を開く。 



「なんだかズルをしている気持ちになりますね……」

「まあ、サティさんなら余裕で全問正解ですからね、これ……」



 俺とサティさんは苦笑する。本人だしな……

 俺達が×の方へと向かおうとすると、一部の参加者が迷いなく、×の方へと走って行った。なんかファンブックにでも書いてあんのかな? 

 そんな事を思いながら、俺達は次々と問題をクリアしていく。その内容は「サティさんが初めてハコネィで食べたもの」とかサティさんとウィンディーネの想い出ばかりである。ちょっと私情が入りすぎているけど大丈夫なのかよ……?



「結構残ってますね……なんでみんな知っているんでしょうか?」

「あーそれはですね……」



 八組ほど残ったことを疑問に思ったサティさんが眉を顰める。そりゃあ、自分のプライベートを知られているのだ、不審にも思うだろう。

 だけど、それにはちゃんとした理由がある。俺の予想が正しければそろそろ……



「すいません、俺達はリタイヤします」

「俺も持病のスライムバッド病が……」



 二組ほど手を上げてリタイアしていった。やはりな……俺は怪訝な顔をするサティさんに説明をする。



「多分あいつらは仕込みですね。元々答えを知っていたんでしょう。要は無理難題を押し付けられても諦めない心と観察力を試したんでしょう」

「ああ、なるほど……てっきり私にストーカーでもいるのかと思ってしまいました」



 てへへと笑うサティさんだが、ウィンディーネというストーカーはあなたのそばにいるんですよという言葉を飲み込む。

 この問題形式なら……デスリッチや、モナも気づきそうだな。あいつらとはあまり点差はつかないだろう。そう思っている時だった。



『人数もだいぶ絞れましたわね。それでは形式を変えますわ』

「え? まだ続けるんですか? 私のプライベートが……」

「その……ご愁傷様です……」



 ウィンディーネの新しいアナウンスにサティさんが頭を抱える。あいつ調子に乗ってるな……後でエルダースライムに説教してもらおう。



『これからが本番ですわ!!』



 ウィンディーネの言葉と共にお湯が姿を変えて丸いボタンとなった。なんだこれ……? 他の参加者も俺達同様に困惑しているようだ。



『それでは、次は早押しクイズですわ!! ここからは失敗しても、失格にはなりませんが、最終的な点数に差が出ますのでがんばってくださいませ!! まずは一問目サティ様の大好物は何でしょうか?」

「鶏肉のから揚げと牛乳!! ウィンディーネ商会の発行の公式ファンブックに書いてあったぜ!!」

「はや!!」

『正解ですわ!!』



 すさまじい速さでケインのやつが答える。これがサティさんの好物なのか、いや、これって確か胸が大きくなる食べ物じゃ……



「何か言いたそうですね、アルトさん」

「いや、から揚げって美味しいですよね、俺も大好きですよ」



 とはいえ、これはこれでやばいな……獣人の身体能力は俺よりもはるかに高い。まともに戦って勝つにはどうすればいいだろうか?

 俺が悩んでいると目の前のウィンディーネがサティさんを見つめにやりと笑った気がした。



『今のは準備運動ですわ。それでは第二問ですわ。サティ様がの一の部下であり、親友であるウィンディーネの好きな所を答えよ』

「「え?」」



 おそらくファンブックにも書いてなかったのか、ケインたちも困惑する。いや、こんなの答えられねえよ!!

 俺がどうしようとしているとサティさんが大きくため息をついてボタンを押した。



「いつでもサティを一番に思っていてくれるところでしょうか?」

『正解、正解、大正解ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! サティ様の事を私はいつでも一番に思ってるのですわぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

「なんかグダグダになりそうだな……」



 無茶苦茶テンション高く叫ぶウィンディーネに俺とサティさんは頭をかかえる。待って、こんなクイズがこのまま延々と続くのだろうか?

 こいつ自分の欲に素直すぎない?



『それでは第三問ですわ。サティ様とウィンディーネが……え? 何ですの。エルダースライム様……? あ、はい、わかりました。それではサティ様の好きなタイプはなんでしょうか?」

「は?」



 ウィンディーネの言葉にサティさんが固まり、冷や汗をかきながら俺を見つめると顔を真っ赤にしてうつむく。



「はい、男らしくて、強いタイプです!! ファンブックに書いてありました」

『外れですわ、それはあくまで答えてもらえなかったので適当に書いた答えですの。ケイングループ一回休みですわぁぁぁ!!』

「ふっざけんなよぉぉぉぉぉ!!」



 ケインがあまりの事に怒鳴りながら抗議をするがウィンディーネは相手をしない。そして、ウィンディーネの視線は悔しそうに俺を睨んでいて……

 さっさと答えろとばかりに目で訴えてくる。



「その……一芸に秀でて、サティさんの秘密も含めて全てを受け入れるような男ですかね……」

『ちっ、正解ですわぁぁぁぁ。一回戦はアルトチームの優勝ですわ!! お幸せに!!』



 悔しそうなウィンディーネの叫び声と共に第一回戦が幕を閉じた。このままのノリでいくのか……? そんな事を思っているとサティさんと目が合った。



「えへへ、アルトさんは私の全てを受け入れてくれるんですね」



 まあ、可愛いサティさんが見れたからいいか。そして、再び紙が光り俺達を次の会場に導くのだった。

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