7.四天王選抜試験

「ついに来たな……」



 人々がざわめく中俺は感慨深くつぶやいた。ここは四天王選抜試験の試験会場である。人間や魔物達が緊張していたり、興奮した様子で待機していた。

 参加者には何やら文字のかかれた紙を渡され、今は深呼吸をして平静を保つようにしている。



「そんなに緊張しないの。できる事はやったはずよ!! あなたの鑑定スキルは更に強化されたわ。今のあなたならブラッディクロスにも10回に1回は勝てるわ」

「まあ、できる事はやったし、家に帰って姿隠しのローブも持ってきた!! 二人とも特訓に付き合ってくれてありがとう」

「えへへ、アルト兄の力になれるなら何よりだよ。それに訓練にかこつけてイチャイチャもできたし……」



 確かにやたらとスキンシップが多かったな……その時の感触を思い出してつい、アリシアの胸元を見てしまう。くっそ、むちゃくちゃ意識しちゃうじゃねえかよ!!

 違う、あれは四天王選抜試験の訓練なのだ。決していやらしいイ気持ちではないし、アリシアいい匂いしたなとか、本当にでかいなとか思っていない。



「うふふ、流石オベロン様の本ね、アルトもアリシアをより意識してるじゃない」

「恋愛もあいつの本なのかよ……てか、結構参加者多いんだな……」

「そうだね、人間も結構いるし……それに試験って言うよりもお祭りみたい」


 

 外には屋台があったし、観客も無茶苦茶集まっていたんだよな……チケットも品切れらしいし、完全にお祭りである。



「四天王選抜試験って毎回こんなかんじなのか……?」

『そんなわけがないだろう。今回はエルダースライムの仕業だ。本来は厳粛なイベントをウィンディーネのやつに命令して、フェスティバルのようにしたのだ。魔物と人間が一緒に騒ぎ競い合う事によってわだかまりを失くそうというわけだな』

「お久しぶりですね、アルトさん」

「お前らは……」



 まるでお助けキャラのように口を挟んできたのは、仮面武道会でするような仮面をつけたスケルトンと、色違いの仮面をつけた女の子だ。

 いや、これ、絶対デスリッチとジャンヌじゃん!! でも、名前言っていいのかな? アリシアとモナはジャンヌがデスリッチに恋をして『愛奴隷になります!!』とか言ってることを知らないんだよな……てか、こいつら変装する気あるのか? すぐばれるだろ……



「君達は何者かな? アルト兄の知り合い?」

『ふん、我は謎のスケルトン仮面0である。勇者とその仲間の魔術師よ、もしも戦う事になったら楽しみにしておけ。我は貴様より強いぞ』

「へえ、あなた、私たちの正体を知っているようね!! でも、舐めない事ね!! 私の名前はモナ=アンダーテイカー!! かつて魔王を倒したオベロン様の家系なんだから!!」



 キメ顔でセリフを吐くモナ。でも、目の前のがオベロンだよ。お前の尊敬している相手だよ。デスリッチも褒められてまんざらでもないのか照れている。

 そして、問題は……



「そして、私は謎のスケルトン仮面0様の愛奴隷ジャンヌです!! 聞いてください。アルトさん!! この仮面ペアルックですよ!! 私の夢が叶いましたぁぁぁぁ!! どこから見てもラブラブのご主人様と愛奴隷ですよね!!」

『いや、貴様がいっしょにつけてくれないなら襲いますとか脅迫したから仕方なくつけたんだろうが!!』

「「愛奴隷……?」」



 ジャンヌの言葉にモナとアリシアが何言ってんだみたいな感じでドン引いている。そりゃあ、そうだよ。奴隷とかは人間でももう禁止されているからな。

 というかジャンヌとか、名前そのままじゃねえかよぉぉぉぉ。少しは誤魔化す努力をしろよ。



「くっ、流石魔物だ。奴隷って言うのも信じられないのに、その奴隷があんなに嬉しそう何て……」

「世界は広いわね、アリシア……それにジャンヌって言う名前で奴隷だと、友人を思い出して、複雑な気持ちになるわね……」

「いや、あいつはどうみても聖女ジャンヌじゃん!! なんで気づかねえんだよ」



 思わずつっこみをいれると、アリシアが溜息を、モナが不満そうに頬を膨らました。



「アルト兄……ジャンヌは清楚系お嬢様みたいな心優しい女の子なんだよ。奴隷って呼ばれて喜ぶ変態なはずないでしょ」

「そうよ、アルト!! 私達の親友を侮辱するならあなたでもゆるさないわよ」

「ええーー?」

「うふふ……友人に間接的にディスられていますね……これはこれでたまりません……」



 なぜか説教をされてしまった。背後で嬉しそうに悶えているジャンヌは放っておくとしよう。親友なら正体に気づけよ……と思ったが、嫌な予感がした俺は鑑定スキルを使う。


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名前:幻影のマスク 

効果:つけたものの姿を誤魔化すマスク。不思議と見た子の無い相手に見える。


備考:かつて、勇者カーマインと魔術師オベロンが、聖女カレンに内緒で女性だけしか入れない街に入るときにしようしたものの発展タイプ。

 カーマインとオベロンいわく、女の子って男がいないとけっこうずぼらなんだな……とがっかりした様子との事。

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 この仮面そんな効果があったのかよ……だから、アリシア達は二人の正体に気づかないのか……でも、なんで俺は気づいたんだ?



『貴様も鑑定スキルの腕を上げたではないか。すこし楽しみになってきたな』



 俺の思考を読んだかのようにデスリッチが耳元で囁く。まさか、俺の鑑定スキルが進化しているのか? 詳しく聞こうとした俺だったが、会場内に響く声によってそれは叶わなかった。



『みなさまお集まりいただきありがとうございます。それではルール説明をさせていただきます。これからいくつかのグループに分かれ、四天王が出す試験を受けていただきます。上位何名かが次の試験に進むことができます。また、その際に上位ならば上位なほど点数が高く、最終的な評価は高くなりますので、頑張ってください。それでは紙をちゃんと握っていてくださいね。移動を開始します』



 そのアナウンスと共に体が不思議な浮遊感に襲われ、一瞬景色が暗転したかと思うと全然別の場所にいた。



 あの紙に魔術がこめられていたのか?



 あたりを見回すと洞窟の様だ。俺と同様の参加者が20人くらいいるが、アリシア達や、デスリッチとは別グループのようだ。

 とりあえずは彼らと戦わないで済みそうなので助かったかな……と思った俺だったが、それも次の言葉を聞くまでだった。



『それではここで二人組をつくってください」



 え? 知り合い何ていないんだけど!!

 

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