6.二人組
赤い髪の少女と、アリシアが睨みあう、人と魔物の争いは禁じられているし、アリシアは招待されている身だ。赤い髪の少女も迂闊な事はしないと思いたいが……
万が一手を出す前に何とかしないと……俺が止めに入る前に黒髪の無表情な少女が口を開く。
「申し訳ありません、アリシア様。私は彼女の親友兼通訳のギーヴルといいます。彼女は本当は『さすが勇者様です。四天王選抜試験に出るのに、余裕があってすごいです!! 私なんて鍛錬をしないと不安なのに……』と言いたかったんです。ねえ、サラマンド様?」
「いや、そうはならないでしょ……今のは完全に私に喧嘩を売ってたじゃない?」
「違うわ。私は別に喧嘩を売っていたわけじゃないの。勘違いしないでね!!」
ツンデレみたいな事を言う赤髪の少女はギーヴルの言葉に思いっきり頷いている。アリシアが『めんどくさそうだけど、ぶっ倒したらだめかな?』と目線で聞いてきたので鑑定する。これで少しは相手の出方もわかるだろ。
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名前:サラマンド=スターロード
職業:魔王軍四天王の側近
戦闘能力:8500
スキル:獄炎のブレス・威圧感(中)・人化魔術
コミュ症度:9999
備考:四天王アグニの娘であり、魔王軍の一員。能力的には発展途上であるが、勤務を真面目に行っているため、他の竜族たちからも評判はいい。
ただし、コミュ症なので勘違いされやすいのと、昔読んだ漫画のツンデレが人間の女の子のしゃべり方と勘違いしていることもあり、色々と面倒な事になっている。コミュ障ながら一生懸命しゃべろうとする姿は周りの魔物からは微笑ましいなぁと甘やかされている。
脆弱な体でありながら、魔王を倒した人間を尊敬しており、現勇者にもアイドルのような気持を抱いている。勇者グッズを勝手にバザーに出されてから父とは険悪である。最近の悩みは父から加齢臭がするのに抱き着こうとしてくること、先にお風呂に入られる事。
尻尾に弱点にある逆鱗で触られると力が抜ける上に色々と大変な事になる。
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名前:ギーヴル=デッドライン(旧性:エンドフレイム)
職業:サラマンドの部下兼幼馴染
戦闘能力:60
スキル:騎乗、火のブレス、サラマンドの通訳・人化魔術
趣味:サラマンドをからかう事。
備考:普段は魔物を載せてドラゴンライダーの乗り物として拠点の警備をしている。サラマンドの幼馴染で、コミュな彼女の事を面白いなと思いながら心配していつも一緒にいる。
別に四天王には興味ないし、自分では無理だと思っているが、アグニに『娘の面倒を見てくれ』と土下座をされたため、参加することになった。元々サラマンドと参加するつもりだったし、たのしそうだからいいやと軽い気持ちで参加している。
最近の悩みは元父が、同じ職場な事……ちょっと気まずいけどおこずかいをくれるから邪険にもできない。
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こいつアグニの娘なのかよぉぉぉぉぉ!! しかも本当はドラゴンなのか……知能の高い魔物の中には人に化けるやつらもいると聞いたが本当とはな……
まあ、確かに街中を巨大なドラゴンが歩いていると人間はビビるだろうから彼らなりに気をつかってくれているのかもしれない。
「いや、マジで悪意無いみたいだ……二人ともドラゴンなのか……」
「はい、我々竜族など体が大きい魔物は魔王城にいるときは人に化けているんです。アグニ様のような昔気質の方は違いますが……」
俺の呟きにギーヴルが説明してくれる。確かに体が大きいと色々不便そうだもんな。
「ちなみに、この赤髪の子は、マジでアリシアに憧れているぞ」
「そうなの……? アルト兄が言うなら本当なんだろうけど……サインいる? なんちゃって……」
「しかたないからもらってあげるわ!! 保存用と布教用と、観賞用の三枚で我慢してあげる!! 私の名前はサラマンドよ!! 宛名はサラマンドちゃんでお願いするわ!!」
アリシアの軽口にサラマンドが満面の笑みを浮かべながら、自分の鱗をベリベリとはがして差し出してきた。目はむっちゃキラキラしているし、本当にファンなんだな……
ノリノリなサラマンドにちょっと引いているアリシアが助けを求める目で見つめてきたが、俺は鱗を指さしながらうなづいた。ここまでしてくれたんだ。サインくらい書いてやってもいいと思う。
「それで……わざわざ声をかけてきた理由は何なんだ? アリシアの事が気になってつい……とか?」
「そんなわけないでしょう? 対戦相手の情報をほとんど知らないあなた達が可哀想だから教えてあげようと思ったのよ!!」
どや顔で胸を張るサラマンドを見た後、ギーヴルに視線を送ると彼女は頷いた。
「サラマンド様は、父であるアグニ様などからいろいろと参加者になどについて聞いているのですが……アリシア様が対戦相手の事を知らないのは不利だと思ったので、ご報告をしたいなと思って声をかけたのです。要注意なのはサラマンドラ様に……謎のスケルトン仮面0と、その愛奴隷ジャンヌ、闇の精霊剣士シェイド、スライムキンググラトニー、そして、人間ですがホーリークロスという男が優勝候補です。対戦するときは気を付けてくださいね」
「私が言いたかったのにぃぃぃぃぃ、ギーヴルのバカバカ!!」
ギーヴルが淡々と説明をすると、それを聞いたサラマンドラが悔しそうに泣きながら、彼女を叩く。そんな彼女にギーヴルが一瞬楽しそうににやっと笑ったのを俺は見逃さなかった。
いい趣味しているな、こいつ……
「ふん、別に悔しくなんてないんだからね!! それでは四天王選抜試験で会いましょう。ギーヴル行くわよ!!」
「はい、それではまたーーー」
サラマンドに引きずられているギーヴルを見送りながら思う。四天王選抜試験は一筋縄ではいかなそうである。四天王には劣るが、サラマンドの戦闘力はかなりのものだった……他の魔物達も同じくらいの戦闘力かそれ以上と考えたほうがいいだろう。あとは……なんか名前を聞いたことのあるやつらがいたな……
「ねえ、アルト兄……さっきの優勝候補の中にジャンヌとホーリークロスの名前もあったんだけど気のせいだよね?」
「ああ……似た名前の人がいたんじゃないかな?」
一から説明をするのもめんどくさいので適当に誤魔化す。なんかイヤな予感しかしないんだが!! 俺は四天王選抜試験を前にちょっとげんなりした気持ちになるのだった。てか、ジャンヌが魔物扱いされているんだけどいいんだろうか……
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