3.四天王選抜試験に行くことにした

「それでは受理をします。健闘を祈っていますよ、アルトさん」

「ああ……でも、サティさんの手前かっこつけたけど、俺が出て大丈夫かなぁ……それになんかズルをしている気がするんですよな。だって、本当は四天王の推薦をもらえるくらいの功績が必要なんでしょう?」



 あの後、何やらやることがあるというサティさん達と別れて、俺はエルダースライムの元へと来ていた。こいつさっきまで純潔派と戦っていたというのに元気そうだな。

 


「ご安心を、今回は戦いばかりではありませんからね。アルトさんにもチャンスはありますよ、それにあなたは魔王と勇者の戦いを止め、四天王の一人であるウィンディーネの暴走を阻止し、今回の純潔派との戦いでも活躍をしているんです。もっと自信を持ってください」

「そうはいっても鑑定していただけだしなぁ……」



 エルダースライムの言葉は正しいが、全部力で何とかしたわけじゃないんだよな。ホーリークロスさんといいみんな俺を過大評価しすぎではないだろうか?



「そんな事はありません、私達やサティ、それに勇者と対等に会話をし、突込みをいれる……そんな事ができるのはあなたくらいですからね」

「いやいや、俺は突込み役かよ……でも、あと三日で四天王選抜試験なんですね……こんな飛び入り参加みたいでな感じでもいいんでしょうか?」」

「いえ、今回の聖女の件がなくてもアルトさんには、四天王選抜試験には出てもらうようお願いをして、ここに招待をするつもりでしたよ。本当はスピーチ前で緊張したサティへのサプライズだったんですけどね」



 楽しそうに笑うエルダースライム。確かにサティさんムチャクチャ緊張してたし、内緒でパーティー前に俺が現れたらすごい驚いてくれそうだよな。そして、話の流れで俺を四天王選抜試験に出されるつもりだったんだろう。

 その役割はエルダースライムではなく、リリスさんが提案したわけだが……



「そういえばリリスさんってどんな人なんでしょうか? 元四天王って言うのは分かったんですが……」



 後はやばい性癖くらいしかわからない。ルシファーさんの血筋というのは納得だけど……あの人は風俗に命をかけ、リリスさんは、同人活動に命をかけているのだ。

 てか、二人とも魔物なのに人間の文化に染まりすぎじゃない?



「あの人は前魔王であるルシファー様の姉であり、元四天王ですよ。『戦場の魔術師』と呼ばれていたのですが……英雄譚にも載っているでしょう?」

「え? 四天王の一人でいつも仮面を被っている魔物ですよね? 確か10体の魔物で1000人の人間を倒した策略家で……勇者との戦いで、改心したっていう……」

「はい、実際は聖女を人質にして勇者たちを追い詰めていたのですが……聖女の自作していた魔術師X勇者本を読んでそっちの趣味に走って、人類共存派になってしまいました。あれさえなければ戦いはどうなっていたかわかりませんね……」

「は? 魔術師X勇者ってなに?」

「さあ、私もよくわからないんですよ。カップリングというものらしいんですが……二人とも男の方ですよね? 子供はできないと思うのですが……まあ、人間はそういう愛の形もあるということなのでしょう? 私より、アルトさんの方がくわしいのでは?」



 詳しいわけねえだろ!! とエルダースライムに突込みをいれつつ俺は聖女が腐女子だったということにちょっと衝撃を受けた。

 まじで勇者パーティーもまともなやついなくない?



「でも、元四天王なんですよね? 何でわざわざ今回呼んだんですか? サティさんの晴れ舞台を見させたかったとか?」

「それもありますが、旧魔王派の魔物もいるので、それを取りまとめるのに彼女の力を借りるようと招待したのです。今回の四天王選抜試験は新しい風を吹かせようとしていますからね。旧魔王派とも交流がある彼女も審査し、認めた存在ならば四天王になっても、旧魔族派も反対はしないでしょう」



 旧魔王派か……魔物も純潔派のように今の状況に反対している連中がいるっていうことだろう。だけど、一個気になったことがあった。



「でも、リリスさんって結果的に人間側についたんですよね? なのになんで、旧魔王派は言う事を聞くんですか?」

「簡単です。彼女もまた魔王の血を引いているのもありますし、当時の四天王で最悪と言われていましたからね……旧魔王派も敵に回したくないんでしょうよ。リリス様の厄介さはかつて戦った事があるデスリッチに話を聞いてみたらわかると思いますよ」



 不気味な笑みを浮かべるエルダースライムを見て俺は思わず冷や汗をかいた。さっき話した時はそんなこわくなかったけど、どんだけだったんだろうか……

 俺は深く考えないようにして、エルダースライムの部屋を出た。



「あと三日か……どうすっかな……何か特訓しなきゃだよな……」



 そんな事を思いながら街へと出るといきなり背後から目を塞がれた。しかも力がやばいし、何か柔らかいものが押し付けられる。

 この感触……俺はすぐに犯人がわかった。

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