2.リリス=エスターク

ああ、ごめんなさい。まさか、サティがパッドだとは思わなかったのよ……そうよね、血筋的によく育ったなぁって気になっていたけど謎が解けたわ」

「うう……なんで、私は自分がパッドをしていることを親戚に説明しなければいけないんでしょうか……」

「その……サティさん、元気を出してください」



 俺は半泣きになっているサティさんの頭を撫でてながら慰める。確かに親族には絶対説明したくないな……

 男で言うエロ本を見つかったような感じだろうか。確かにしんどすぎる。



「それで……サティちゃん、その人ともしかしてお付き合いを……」

「え? それはその……」



 俺を見て、頬を真っ赤にしてもごもごするサティさん。その様子に俺も顔を真っ赤にする。なんだ、この、彼女の部屋に行ったら親に会ってしまいましたみたいな状況は…… 

 だけど、ここで曖昧な態度を取ったらこれまでと同じだ。今日の俺は阿修羅すら凌駕する存在だ!!



「はい、俺はできればサティさんと共に人生を歩みに行きたいと思っています!!」

「アルトさん!? いえ……その……ふつつかものですがよろしくお願いします」

「お付き合いどころか、プロポーズ!? ここはサティちゃんが欲しければ私を倒しなさい!! っていうべきかしら? ああ、でも異種族カップル尊い……」



 テンパったせいかまたプロポーズをしてしまった。でも、わりかし目の前のリリスさんからは好評なようで何よりだ。

 でも、この人最後に変な事を言っていなかったか?



「男っ気が無い上に友達もいないサティちゃんが最近人間と仲良くなったって、エルダースライムから聞いていたけど、ここまで仲良くなっているなんてね、感動だわ!! 力がありすぎて誰かと対等になれなかった少女が、ただの人間と結ばれるなんて王道だけど素敵ね!!」

「あの……サティさんところで、この人は……?」



 サティさんの親戚という事はわかったが、それ以外さっぱりわからない。何でここにいるのだろうか?



「ああ、すいません、先に紹介すべきでしたね。私の叔母であり……」

「元四天王のリリスよ。言葉で語ってもいいけど……あなたの場合はこちらの方がいいでしょう? 鑑定者さん。どこまで視れたか教えてね♪」



 それまでのおちゃらけた部分は一切消えて、まるで宝物でもみつけたかのように興味深々で、彼女は鑑定してみろとばかりに手を広げる。

 一体何だって言うんだこの人は……? 売り言葉に買い言葉ではないけれど、俺は鑑定する。



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名前:リリス=エスターク

職業:無職

戦闘能力:99999


スキル:闇魔術・死霊魔術・観察眼(カップリングを作成する際に使用)・知識の海(古今東西あらゆる種族の性癖を収めている)・変化魔術


オタク度:99999

備考:かつて四天王の一人として、勇者や聖女、オベロンと戦ったことがある。魔王城の書物全てが頭に入っており、圧倒的な知識量で様々な戦略を駆使して勇者たちを苦しめた。

 戦後は弟であるエスタークの和平主義に賛同。とあることがきっかけで『魔王♂X勇者♂』本と出会いその性癖が開花した。

 主に同性愛と異種族愛ものを好んでおり、年に二回王都で行われている即売会では得意の変化魔術を使い人間に化けて、壁サークルの女帝として君臨している。最近の推しカップルは『デスリッチXアグニ』のヘタレ攻め。ドラゴンスケルトン〇ックスにはまっている。


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「うわぁ……うわぁ……」

「どうしました? アルトさん、何か信じられないものでも見るような目で見て……」

「いや、世界は広いんだなって実感したとこです……」



 俺は見たくなかった鑑定結果につい、頭をかかえてしまった。いや、ドラゴンスケルトン〇

ックスってなんなんだよぉぉぉぉぉ!!



「私を知ってもらえたようね、これで私があなた達の敵ではないという事を知ってもらえたでしょう?」

「まあ、あなたの性癖的には俺とサティさんは歓迎すべきなんでしょうね……」

「ええ……でも、私は良くても、あなたとサティの事を認めない魔物はたくさんいるでしょうね……だから、あなたにお願いがあるわ。四天王選抜試験にでなさい。そこである程度の結果を出したら私の方でも応援してあげる。元四天王も認めたとなれば並みの魔物なら納得するはずよ」

「そんな!! 四天王選抜試験には強力な戦闘力を持っている魔物や人間がたくさん出てくるんですよ!! アルトさんの身に危険が……」



 リリスさんの言葉にサティさんが大声を上げた。だけど、彼女の話を聞いていて俺の気持ちは決まっていた。

 このままではサティさんに迷惑がかかる可能性があるのだ。だったら俺は……



「受けます。俺の覚悟を見せますよ。」

「ありがとう、そう言ってくれると思ったわ。それに今回の四天王選抜試験はいつもと違うの。だからサティちゃん、そんな世界の終りみたいな顔をしなくても大丈夫よ」



 リリスさんはにっこりと笑って紙を俺達に見せる。


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                   四天王選抜試験。

 人種は不問。

 参加条件は現四天王か、元四天王が許可をしたもののみ。

 

 これまでは武力を重視してきましたが、争いが減った今、それ以外の力も重要視することにしました。知力や、魔力、人脈でも構いません。

 四天王や元四天王に自分の実力をアピールをして、参加権をゲットしよう。なんと今回は特別ゲストで現勇者も参加します。先祖の恨みをここではらす!! なんて考えちゃだめですよ♪


 参加証はバザーの割引券、魔王様のブロマイド。



 何と今回は特別サービスで四天王の好きなタイプを紹介しますね。得意分野でアピールして推薦をゲットしちゃおう♪


 アグニ:戦闘能力に秀でた人材が好みです。ドラゴン族だとなおよし

 エルダースライム:総合的な力を見ます。ただし、一芸に特化した者でも魔王軍に必要だと思えば許可する可能性があります。鑑定が得意そうな人とか探してます。意味はわかりますよね?

 ウィンディーネ:魔王様を愛しているもの及び、とある歌を歌えば無条件で推薦します。ヒントはスライムです。

 リリス:四天王にふさわしいのは魔王や国への忠誠心です。参加者様だけでなく、見ている方も皆さんが楽しめるような試験を考えております。


 なお、今回は諸事情にてデスリッチからの推薦は認めません。

 

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 なにこれぇ? ウィンディーネとか絶対あの歌だし、エルダースライムは俺を指名してるし、ろくな条件じゃないんだけど!! てか、アリシアも来るのかよ!!



「うふふ、今回私は審査員として呼ばれているからアルト君に受験資格を与えることができるわ。本当はもう一人元四天王も呼ばれていたんだけど……ファングのやつは来なかったようね」



 リリスさんは少し残念そうに遠くを見て溜息をつく。まあ、これで四天王選抜試験にはでれることにはなった。

 だけど、サティさんが無茶苦茶心配そうに見ているんだけど、どんなことやるんだろうか?



「心配しないの。アルト君が心配なら私に名案があるからね……ほら、こうすれば……」

「え? でも、ありなんですか?」

「大丈夫よ、だって、ルール違反はしてないでしょ」



 俺をよそに二人は何やらゴニョニョと内緒話をして盛り上がる。なぜかサティさんは俺を見て、がんばるぞっとばかりに気合を入れていた。

 二人が何を考えているかわからないが、こうして、俺は四天王選抜試験にでることになったのだった。

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